【Bonus・Parts】第一部~第二部までの概要②

◆第二部【ver.2】『麗しき薄命の美少女・澪(みお)』:42,980字/13,391分


視点は一人称で澪を中心にして進んでいる。病状の解説や手記を参考にし、当時の澪の想いが霊体(?)のような存在の澪(みお)から、語られていく。導入は、第一部の興造の過去語りからだが、澪が語り草となっている。


小学校三年生から始まる「こうちゃん(興造)」から大学生になり、そして過酷な闘病生活の十ヶ月の期間。澪の純粋で一途な興造に対する気持ちを描いた部でもあり、澪が鏑木工業大学に入学し、夢半ばに白血病に至り、闘病生活から死に至るまでの話が中心である。




※重要参考文献:


「俺、マジダメかもしれない…… 急性リンパ性白血病で逝った最愛の息子が残したもの」高野 由美子著(太陽出版)他。




~森城町~


有名な猫又の石碑や数多くの文豪「浅川 文生(あさがわ ふみお)」を輩出するこじんまりとした田舎町。歴史を重ねても、その変わらない風景を好む者も多く、隠居生活をする有名人も数多くいるようだ。近くに男子校があり、別の作品で度々出て来る。




~鏑木工業大学~


鏑木市にある大きな機械工学の大学。景観は赤いレンガ積みの校舎で、空調の良く効いた吹き抜けの建物やガラスのショウウインドウなど、デザイン性を重視した建築物である。現在でも改装が繰り返され、美観を損なわずにいる。




●虹ヶ崎 澪(にじがさき みお):享年22歳


登場時:9歳→享年22歳


小学校三年の時、森城町に引っ越してきて、鏑木市でその青春時代を過ごす。高校二年生で部活の先輩に襲われかけた。そんな中、満身創痍の興造に助けられ、交際が始まるも、大学になっても男性恐怖症が尾を引いていた。憧れの興造を追って鏑木工業大学に訪問し、「からくりの歴史」に触れ、入学を志願した。 


・愛称:みお


・所属大学・学部及び学科:鏑木工業大学・機械総合学部・からくり文化研究科


・性格:お姉さんで、友達が出来ない興造をいつも色んな所に連れ出していた。


・特徴:喜怒哀楽が激しい。


・体格:華奢。


・容姿:透き通るような白い肌をしており、紫外線を避ける為に、夏でも袖付きの服を着ている。


・髪型:長く透き通るような亜麻色の髪の毛を肩まで伸ばしている。


・血液型:O


・好きな食べ物:パスタ


・趣味:読書、映画鑑賞、博物館見学、動物と触れ合うこと、からくりや歴史ものが好き。




~澪の両親~


 澪の陰を追い続ける、興造を心配しながら結婚を進める心優しき澪の両親。彼の姿に心を痛めている。




●虹ヶ崎 晴輝(にじがさき はるき) ※澪の父親


 サラリーマンで部長職。なかなか忙しく、澪の看病に来られない。大事な決断の際には、いつも力を貸してくれた。四十代を迎えて未だに独身の興造を心配している。「娘がもう一人いれば、興造くんに紹介してやりたかった」と胸を痛めている。


 娘の気持ちを何よりも優先し「澪が興造と別れたい」と言った時に、苦しい気持ちを抱きながら、別れを切り出した。




●虹ヶ崎 紗霧(にじがさき さぎり) ※澪の母親


 当時パートをしており、澪の看病のために鏑木市の実家と森城町を行き来していた。娘想いの優しい母親だが、涙脆く感情に出やすい所がある。その為、澪よりも泣いてしまうことも度々あった。献身的な母親であり、病床にいる澪を興造と一緒に支え続けた。


 二十年後の現在は、興造を我が息子のように愛しているようだ。周囲の方々が団塊世代を迎え、孫が生まれた話をちらほら聞くと、とても心が痛い様子。






~鏑木市大学病院(がんセンター併設)~


◆担当医師


●桑畑 宣史(くわはた のぶふみ)


 澪の主治医。白髪交じりのお爺さんドクター。名医で小児医療の研究もしている。丁寧な物言いで、患者に寄り添ったケアをしてくれる。彼の診断履歴は、かなり丁寧である。歳に寄らず行動力もあるようだ。




~白血病治療と骨髄移植について~


 白血病治療で最も効果があるのは「骨髄移植」だと言われています。がん細胞を作り出してしまう造血細胞を一度放射線で破壊し、空になった細胞組織にドナーから頂いた、造血幹細胞を移植すると言う方法です。物語の中で、各所解説があると思います。科学治療は身体に対するリスクが高く、副作用の危険性がとても高いのです。




<以下 本文抜粋>


【ver.2】Parts:013「……私は、どうしたらいいの」


「……HLA(ヒト白血球抗原)が合わない?!それってどういうことですか?!」


「はい、私もとても残念だと思っています。採血結果を調べたのですが、ご両親といとこの方でしょうか。検査結果が一致しなかったんですよ。……しかし、多くの方もこうして悩まれて、ドナーを探す選択をしております……こんなことを言うのも、酷かも知れませんが、このようなパターンは虹ヶ崎さんだけではありませんよ」


 お母さんは込み上げる怒りと悔しさで胸がいっぱいだった。私もどうしたらいいか分からなかった。




**


 造血幹細胞移植では、血液型の他に、HLA型(ヒト白血球抗原)A座、B座、C座、DR座の四座(八抗原)を一致させることが重要だと言われているの。そして、HLA型は、両親からそれぞれ半分ずつ受け継ぐ為、兄弟姉妹の場合では、HAL型が完全に一致している確率が四分の一だと言われているの。多くの家族が、型が合わずに苦しんでいるらしく、そして、非血縁者間では数百から数万分の一らしい。この時に、私の両親はドナー探しの難しさを、改めて痛感していたの……。




【ver.2】Parts:014「弱くって、弱くって」より。


 桑畑先生の骨髄移植の説明文には、このように書かれていた。


 ――成人の急性リンパ性白血病(ALL)は、科学治療に関しては非常に良好なのですが、一度良くなっても、半数以上の患者様が再発する可能性を秘めています。発病時の白血球細胞数が多い場合は、特に再発の危険性が高いです。病気の治療で最も効果を発揮するのは、骨髄移植療法です。


 骨髄移植療法とは、全身放射線照射を四日間掛けて、六回に分けて行い、最終日に無菌室に入室し、メルファランと言う抗がん剤を通常の五倍量使用して、体内の骨髄を白血病細胞もろとも破壊します。骨髄が失われた患者様は造血細胞が失われている為、血液を作り出すことが出来ません。そこで、ドナー様から頂いた骨髄を、患者様に移植します――。




●滝口 英彦(たきぐち ひでひこ)名誉教授


 からくりの歴史を研究し続けるプロフェッショナル。理系工学の大学でありながら、文系の人にも分かりやすい授業を心掛けている。白髪交じりで、引退したら孫のおもちゃの修理をしつつ、ひっそりと余生を田舎で過ごしたいと思っているようだ。

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