第30話 NEET、NEETを卒業する

 帰り道の道中。

 ネズミを引きずりながら、ふと思った。


「俺も、変わったな……」


 この何日かの中で、俺はどれだけ変化してきたのだろう。


 家族と話せなかったのが話せるように。

 運動しなかったのがやるように。

 朝起きなかったのが起きるように。

 外出なかったのが出るように。


 変化は挙げればきりがないだろう。

 変化の起点となったのはもちろんダンジョンだが、俺は絶対にこの穴蔵に感謝なぞ捧げない。心に決めている。


 これが世に聞く『激動の日々』っていう奴か?


 一度そう自覚したら、結構ハードなスケジュールだったという印象を抱く。疲れが三日越しくらいにやってくるのを感じ取る。どんだけ疲労持ち越してたんだ。いや、ひょっとしたら先ほどの戦闘の疲労だけかもしれないが。


 だが、まあ、悪い気分ではない。

 能動的に何かをして、その結果に溜まった疲労であることは間違いないからだ。


 今までのように惰性で息をして、味なんぞ二の次の食事――というより、食べ物を口に詰め込む作業――をして、やることもないからインターネットやらゲームやらに没頭して。

 その果てに、ただエネルギーを使い果たしたから寝る。なんて生活ではえられなかったものだ。


 なんつーか、疲労感なのだが不思議と心地良い。


「これが、働くということか……」


 つらいけど、良いな。なかなか。

 仕事の後味は酷いもんだが、それは必要なことだと自分の中で折り合いをつけるしかないだろう。


「…………あ、そういや俺もうニートじゃねえのか」


 俺、今業務中なんだ。

 自宅警備員なんて仕事だから、てっきりニートのままだと勘違いしていたが、一応就職しているのだ。俺は。給料がないだけで働いているのは間違いない。


「――感慨深いもんだな」


 気がついたら、ニートを辞めていた。なんて。

 普通は採用試験だとかあるが、そういうのを丸々全部すっ飛ばして就職したからか、ニートを辞めたという意識が低かったようだ。


 ――本当に、色々変わったもんだ。


 そんなことを考えていると、出口に辿り着く。

 久しぶりに見た太陽は、いつもより強く輝いているような気がした。





 おしまい



 ※  ※  ※  ※  ※



 はい、ニートがニートを卒業して自宅警備員(ガチ)になりました。


 これにて『NEET in DUNGEON!!』完結でございます。


 つたない展開、つたない文章ではありましたが、なかなか面白いものが書けたんじゃあないかなあ。なんて自信みたいなものも持っております。


 もちろん、自信を持てたのは日に日に増えていくPV数。フォロワー数。評価の星。応援コメントなどによる後押し――つまりはこの文章に目を通している皆様方のおかげです。

 本当に、ここまでおつきあいいただき、ありがとうございました。


 日は開くと思いますが、次回作を書くと思います。


 もし、またカクヨムで『堀木 雄三』の名前を見ることがありましたら「お、こいつまた書いてるんだな。成長しているかな?」なんて思いながら、作品ページを開いていただけると幸いです。


 それでは、好きな漫画家さんにならいまして――



 いつか、また、どこかで!

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NEET in DUNGEON!! 木彫りの熊 @foooooo

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