第14話 NEET、早起きする
夜間に奇襲されるとか、そんなことはなかった。
俺は珍しく朝の七時辺りに起床して、無事に朝を迎えたというただそれだけの謎の達成感を胸に抱きながら久々の家族揃っての朝食を食べることとなった。
ネズミの死体は親父の手で撤去されており、昨日は漂ってきた血のにおいとかもなくなっている。すがすがしい朝の空気だ。即席のエチケット袋みたいなのに突っ込まれた何かが庭の隅に鎮座しているのは見なかったことにする。
そっと、無言で食事する家族の顔を盗み見る。
「…………」
親父はいつものような無表情で黙々と食事を口に運んでいる……ように見えるが、やや疲れているようだ。昨日、不安だったのかしきりに起き出して、庭の穴を確認しに行っていたのを俺は知っている。
妹は泣きはらしたのか、目元が赤い。まあ、隣の部屋からちょっとすすり泣く声聞こえたしな、ホラーみたいでめっちゃ怖かったけど。
やっぱり、みんな少なからず動揺してるよな……と、思いきや。お袋はいつも通りだった。どんな心臓してるんだよ。
俺はお袋に対して畏怖を覚えつつも食事を胃袋に収め、食器を片付け……とやっているうちに一時間が経過した。八時だ。
「つーか、学校と会社は? 寝坊?」
「そんなのお兄ちゃんじゃないんだからありえないでしょ」
「……家の危機だ。どっちも休むことにした」
「…………。そっすか」
妹の言葉にちょっとぐさりと来た。
昨日のネズミもこんな感覚だったのかな……と考えられる辺り、俺も精神の安寧を取り戻してきているようだ。お袋が案を提示した時は問題の先送りじゃねえのかと思いはしたが、従っていて正解だったようだ。
そんなことを考えながら、お袋が出したコーヒーを飲む。インスタントの奴だ、なんていうまでもなく、ウチにはインスタントのコーヒーしかない。いつもの味でほっとする。
「それじゃ、家族会議しましょうか」
そんな軽いノリで、お袋は家族会議の開幕を宣言した。
こんな緊迫した状況じゃなければ「どんどん、ぱふぱふ」なんて言って茶化したいところだったが、まあどう考えてもそんな雰囲気じゃないよな、今は。
お袋はテーブルにチラシの裏を置き、ボールペンを出す。
そして、会議が始まった。
「んーと、それじゃあ事実確認からね」
お袋はそう言いながら、チラシ裏に箇条書きでメモしていく。
※ ※ ※
・一昨日の地震で穴が出来て、その奥には洞窟がある
・かなり大きいけど、でこぼこがないので整備されてる(?)
・洞窟にはでっかいネズミがいる(他にもいる可能性アリ?)
・少なくとも、インターネットにそのネズミの情報はない
【ネズミ】
・突進で自滅してるから、あんまり知能はない(?)
・大きい。体長は一メートルちょい(個体差あるかも)
・ガラスの破片で身体が切れてたから、あんまり頑丈でもない(?)
・跳躍力はある。助走ナシで守の顔面に飛びかかれた
・結構好戦的
※ ※ ※
「――こんなところかな?」
そう言って、俺に確認を取るお袋。
それに首肯を返すとお袋は満足そうに頷いた。
「それじゃ、これからどうしようか」
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