第24話 NEET、新たな装備を手に入れる

 装備とかで重い身体を引きずりながら階下に降りると、家族はいなかった。


「…………」


 修理された窓から日光が差し込み、テーブルが照り返している。そこには冷めた朝食と一通の手紙、そしてあまり大きくない箱が置いてあった。

 食器はほとんど片付けられている。みんな、かなり早い時間帯に仕事や学校に行ったのだろう。


 薄情な家族だ、なんて思うことはない。俺がいつも通りの生活をしててほしいと、そう言ったからだ。

 俺が生き残ろうと残るまいと、家族にはこれから毎日同じ生活を送ってもらわなければならないのだ。家族(といっても両親だけ)には俺が午後四時までに帰らなければ死んだものと考えてほしい、ってことも伝えてある。


(……自分ではしご外してくの、マジで心臓に悪いな)


 なんて思いながら、俺は手紙を手に取った。封筒をびりびりと破り、中に入った便せんを手に取る。

 文字列が目に入ってきた。



『生きて帰ってきなさい 貴方の母と父より』



「…………」


 俺は無言で手紙を封筒に戻し、上の階の自室へと放り込んだ。

 それと同時に、やかんがピーッと鳴いてコーヒーが作れることを告げる。

 俺は再び階下に降り、沸騰したお湯を使ってインスタントのコーヒーを淹れ、一回息を整えてから、口に運んだ。


 久しぶりに淹れたコーヒーは少し塩辛いが、美味しかった。



 ※  ※  ※  ※  ※



 手紙を読んで目が疲れたのか、ちょっと汗が流れたが再起は早かった。朝食を口に運びながら、俺は今日の予定を思い出す。


 今日は、洞窟がどの程度の広さなのか。ネズミはどれくらいいるのか。ネズミの他に襲いかかってくる生物はいるのか――最後に、俺はこの洞窟で戦えるのか、というのを調べる予定だ。


 自分でも目的を詰め込みすぎじゃないか? もっと個々を突き詰めていった方が良いんじゃないか? なんて思ったりもしたが、どれを取るにせよ、最終的に「洞窟を歩き回る」ことで、そして「ネズミと遭遇して戦うこと」は確実だと思った。

 だから四つの目的を同時に果たそうと思ったのだ。


 食事を腹に詰め終えると(いつもより量が少なかった。多分、運動することを考えてだろう)、俺は箱の方を開けた。

 中には、腕時計と手紙が入っている。


『洞窟の中で異常を来さないか心配になったので、電波時計ではありません。説明書にも書いてありますが、定期的に竜頭を巻いてください』


「なるほど」


 かくして、俺は新しい装備を手に入れ、ダンジョンへと向かうことになった。


 それにしてもこの時計、高そうだ。壊したら怖い。

 だから、必ず――生きて帰ってくることにしよう。



 ※  ※  ※  ※  ※



 この24話投稿時点で、3000PVの突破を確認しました。

 というか、もう4000PV行きそうです。


 マジでありがとうございます。

 あともうちょいで完結(一区切り?)ですが、これを糧にこれからも頑張って行けそうです。



 追記:朝起きて投稿しようと思ったら4000PV行ってました。

 ありがとう。ありがとう……ありがとう。

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