第25話 NEET、ダンジョンにて装備点検
運動靴を持ってきて、縁側で履いて庭に降り立つ。
陽光を浴びながら、俺はこれから薄暗い穴蔵に突貫することになる自分を褒め称えたくなった。
だって、俺ニートだ。それにしちゃあ、頑張ってない?
でっかいネズミ殺して、四年のブランクあるのに吐き気こらえて外に出て、今こうやって何が待っているかもわからないダンジョンに突撃をかますのだ。ラノベみたいだ。主人公補正利き過ぎじゃあないだろうか。
「それに、どっち転んでも問題ねえしな……ふふふ、俺には諸葛孔明をも凌駕する知能があるかも知れない…………いや、ねえな」
そう、俺が死んでも死ななくても問題ない。
俺が死んだら、その死を使って警察召喚できるし、その上家から穀潰しが一人減る。死ななかったら、ニートが自宅警備員に昇格だ。どちらに転んでも問題のないポジティブな思考である。
「……ポジティブ? ポジティブ……うん、ポジティブポジティブ」
俺はポジティブだ。大丈夫だ。
そう考えでもしなけりゃ、やっていけるかこんなこと。
※ ※ ※ ※ ※
穴の中に降り立つ。暗がりに入ったのでランタン(電気式の奴だ)のスイッチを入れる。
ぼぅ、と限りなく火の明かりに近づけられた文明の光が洞窟内を照らし出した。
「…………」
――敵影はなし、と。
奇襲を警戒して、念のため鉈に手を掛けていたのだが、それはどうやら
「つーことは……出入り口も一つのままか」
なんかでっかい扉でも買って設置したら、上の方に侵攻しないように出来るんじゃないだろうか。それでも数に任せた大群が来たらやばいだろうから、定期的に様子を確認する必要はあるだろうが……試してみる価値はありそうだ。
というか、俺たちがダンジョンに侵攻されるのではなく、俺たちがダンジョンを侵攻する。と考えたら、愉快でたまらない。是非やりたい。今度頼もう。
「…………。そのために、生きて帰らねえとな」
やれやれ、また生きて帰る理由が増えちまった。
なんて、やれやれ系主人公の物まねでもして恐怖を紛らわせる。
「…………」
くだらないことやってないで、道具類が正常に作動するか確認しよう。
「えーっと、方位磁石」
使えない。なんか針がずっとぐるぐる回っている。
「……鉛筆と紙」
使える。試しに洞窟の地図でも作ってみるか。マッピングだ。
「ランタン……はさっき確認した。缶詰と缶切り」
使える。中身がいきなりなくなっている……なんて事はなかった。このダンジョンもそんなに理不尽ではないらしい。
使えなくなったものは地上に戻し、理由を書いたメモでも残すことにするか。
俺は三分程度で確認作業を終え、再びロープをよじ登って地上に帰還した。
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