第2話 花火大会の続きはダウナーか気分から
「待ったかな?」
舞ちゃんはピンク色の浴衣を着てやってきた。ぶっちゃけ、浴衣は三割増しで可愛くなるというのは嘘である。普段の可愛い可愛いした格好の方が彼女は似合っていた。主人公はそんな事を想いながらも彼女に手を差し出した。
「めっちゃ人おるから、はぐれんようにね」
主人公わりとイケメンである。いう事だけはね!
手を繋ぐという事に躊躇している男女がいたら、躊躇せずににぎってしまおう。お互い二人で遊んでる時点でそれなりにその相手の事が嫌いなわけがない。むしろ好きだから二人で遊んでいるのだ。まぁ騙されたと思って握ってほしい。そうすれば進展すると思うよ。
「舞ちゃん何か食べたい物ある?」
「えっと、わたあめ」
まぁこの舞ちゃん、あざとい女の子だった。しかし、主人公は可愛いと思いつつも舞ちゃんのペースには乗らない男でもあった。恐らく根本的に主人公合は理的主義者であり、可愛いは正義と信者にはなれないからだろうと思う。
結果として誰かを好きになっても付き合うに至らないとかも、究極自分が一番好きだからなのかもしれないが、さすがに自分の事でも理解できない部分は沢山ある。
「ねぇ、少し寒い」
舞ちゃんが甘えてくるので、花火を見れるところを探そうかと焼きそばを一つと飲み物をコンビニで買って座れそうな場所を探した。そこに腰かけると舞ちゃんは主人公の背を背もたれに座る。
ようは抱きしめてくれという事なのだろう。それに主人公は女の子にまともに触れた事もなかったが、抱きしめてみた。
ぶっちゃけね。
柔らかくて、凄くいい匂いがしましたとも、舞ちゃんの肩に頭を乗せると顔が触れるくらいの距離で二人して花火を眺めていた。
ドーンと上がってパーンと散る花火は中々に見事だった。そしてお互いの心音が激しくなるのもまたお互いを意識していた。
「……くん」
舞ちゃんが顔を主人公に向けるので、主人公は舞ちゃんの唇に自然と唇を重ねた。そして抱きしめている力を少しだけ強める。
顔を真っ赤にしている舞ちゃんの代わりに主人公は舞ちゃんに言ってみた。
「付き合ってみる?」
「……ええっ、分かんない」
この女、本当にあざいとのである。今にして思うと、主人公という攻略対象にこのセリフを言わせる為だけに今まで装っていたのではなかろうかとそう主人公は思っている。
しかし、このまだ中学生だった舞ちゃんと主人公の縁は中々長い事続く事になるのをこの時に生まれて初めての告白が失敗した主人公にとっては知る由もなかった。
花火大会が終わり、主人公は放心した心持で舞ちゃんがテンション高く話しているのを聞き流しながら、帰路につく事になる。
彼女を駅まで送ったところまでは覚えているが本当にどっと疲れた。阪急電車で主人公の家は夙川で降りる方が早いのだが、西宮北口で降りる事にしたのを今でも覚えている。
とりあえずハンバーガーが食べたくなった。
きっと今ならキリンラガーの気分だったんだろう。とにかくお腹を一杯にしてみじめだったり恥ずかしかった自分の気持ちと向き合おうと思ったりしたんだろう。
西宮北口で今はもうないマクドナルドへ行く、これを言うと語弊になるが、今西宮北口でマクドナルドはアクタの中に入っている。
てりやきバーガーのセットとハンバーガーを二つ購入した主人公は歩いて少し遠い家まで帰ろうかなと思っていた。
「あれ? お兄さん?」
主人公が振り返るとそこには真世ちゃんと他の女の子が二名。こんな時に女の子とは女難の層でも出ているのかと思った主人公だったが、時計のある広場みたいな駅前のモニュメントに腰掛けて彼女達の話を聞く。
「今からゲームセンター行こうと思うんですけどお兄さんも来ますか?」
この時、確か時間は21時くらいだったと思う。タロフォフォは未成年の退室時間が決まっていたのだが、この今は無き西宮北口のゲームセンターはどちらかというとアウトロー向けであり、未成年が入り浸っていようがあまり気にしない店主や店員達で出来上がっていた。
もう今のご時世どこもかしこも禁煙禁煙の世の中だが、この頃は何処でも喫煙できるのが普通であり、この北口のゲーセンはとにかく煙たかった。
「マジか……俺は……」
いいやと思ったのだが、さすがに中学生、高校生の女子だけで行かせるにはあまり宜しくないかと主人公は付き合う事にした。
お目当てのギルティギアは奇跡的に空席だったので彼女達は席を確保する。女の子の不思議な修正として、誰かのプレイを見るというよりは対戦を初めてしまうのである。所謂ガチャプレイと言われるつたないプレイ。
これはひと昔前であればまぁなんとかなったかもしれないんだが、この頃から格闘ゲームというものはお金をつぎ込んでいる奴程強かった。
100パーセント勝てないと言っても過言ではない。もしかすると目隠しプレイでも勝てるかもしれない。
そんなクソプレイをぼーっと見ながらハンバーガーを齧っている主人公に黒髪で服装にもあまり興味がなさそうな女の子が主人公のところにやってくる。
「お兄さんもしましょ!」
この子はサヤちゃん(仮)、少しだけ他の女の子より格闘ゲームが上手な女の子というイメージが強かった。
「俺? うんいいよ」
ぶっちゃけ、主人公べらぼうに強かったんだ。この頃は友人の家で家庭用を深夜遅くまでやり込んでいたくらいにはハマっていた。
手加減をしてあげたりわざと負けてあげたりしながら、連勝をかさねて最終ラスボスを倒して見せると彼女達から黄色い声援を貰う事になる。
いやほんとに格闘ゲームが強いだけでこんなに女の子にちやほやされる時代はもう二度とこないと主人公は思っている。
ひとしきり遊ぶと日付が変わりそうになっている事に主人公はまぁまぁ焦る。よく考えれば主人公ですらまだ高校一年生、他は同い年と中学生。
まぁね。
主人公の家もそこそこ放任主義だったんだけど、この子らの親頭おかしいんじゃないかと、本気で今更ながら思うね。
息子より娘の方が夜は危険だと思うけどねぇ。
真世ちゃんは神戸住なので、終電で家に帰るという、その為主人公は中学生二人を鳴尾浜の方の家まで送る事になった。
一人がサヤちゃん、もう一人が由美ちゃん(仮)である。サヤちゃんは痩せ型で由美ちゃんは少しぽっちゃりしている感じだったように思える。
二人は仲良しらしく、色々中学のお話を聞いた。
この時間つぶし程度に聞き流していたお話が主人公にさらなる恋を運ぶとは思いもしなかった。
彼女達は演劇部に所属しているらしく、一人面倒見のよい先輩がいるらしい。全てらしいの話で聞いていたし、舞ちゃんは真世ちゃん達程この子達と主人公は仲良いわけでもなかったので多分この子達とはこれっきりだろうとか主人公は勝手に思っていた。
鳴尾浜付近と言えば、昔はライダーズバーがあったり、今は函館市場になっている場所あたりに電化製品のコジマとかがあったが、いかんせん何もなくてつまらない場所であった。そしてまぁまぁ寂しい場所でもある。
「お兄さんって真世ちゃんと付き合ってるんですか?」
この時は、何を中坊が言ってるんだよと思っていた。この数時間前に主人公はその中坊といちゃついてさらにフラれたわけなのだが……舞ちゃんは化粧をしたり女としての武器を十分に使っていたが、この当時の中学生の女の子の大半は化粧なんてしてはいなかった。そういう意味もあり主人公は二人を女のというよりは年下の子供と思って接していた。
「ううん、付き合ってないよ」
由美ちゃんの方が主人公に聞こえる声でヤサちゃんに「やったじゃん」とか言っているのを聞く主人公。まぁ小学校や中学校の頃の主人公であればドキドキしてそれでいてその子を意識していたかもしれない。
主人公は高校生、少々の事では動じなくなっていた。人間の慣れという物は恐ろしく、主人公は下手すると人間の一生のうちの恋を既にこの頃でクリアしていたのかもしれない。
というか舞ちゃんにフラれた事がまぁまぁショックだったのが大きかったのだろう。なんだか、食べた物が逆流しそうになりながら、二人の家の前までくると携帯の連絡先を交換して主人公も家に帰ろうとする。
「もう、恋愛はいいかなぁー」
とか夜空を見て、とぼとぼと臨港線沿いを歩いていたのを覚えている。家まで1時間くらいかかるので、帰って寝るのは深夜の二時かとかまぁまぁ鬱になっていた主人公の携帯電話が鳴る。
短い着信音はメールである事を知らせてくれるので死んだような目で主人公はそれを見る。
それはヤサちゃんからのメールだった。サヤちゃんはまぁまぁ薄着になった状態でへたくそな自撮りをした写真付きで主人公に送ってくれてありがとうメールを送ってきた。
まぁ今となってはリベンジポルノに使われかねないそれだが、主人公のハートをぶち抜くにはそれは十分な破壊力を秘めている。
「サヤちゃん可愛いな……」
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