第5話 合唱コンで六甲山でスキーコン
主人公はもっか中学二年生を満喫していた。中学二年生の頃の教室はある意味最高の時代だったと今は思える。
何故なら、男子も女子も全員仲良しクラスだったのである。今まで男子と女子はなにやら目には見えないATフィールドのような物で遮られていたように思えたが、いつでも話ができるという素敵空間であった。
さらに言うと、中学二年生の教室の女子は殆ど可愛かった。もう、それは最高であった。アイドル級の女の子が二名程いた事も記憶に鮮明に残っている。
さらに言えば、中学二年生のクラスでの一番の思い出は今まで何故か嫌われていたバレー部女子の一人との距離が縮まった事である。
もうそれは今まで汚い物を見るような目で見られていたのだ。というのも一年生の頃に盆踊りで友人が連れてきた彼女はバレー部だった。バレー部の友達をバスケットボール部の男子が振った事で主人公は完全なとばっちりを受ける事になったのである。
それはとても些細な事だった。彼女ひまり(仮)に糊を借りたのである。主人公の事を嫌いなひまりは他の人にも貸している中、いやいや主人公に貸してくれた。
主人公は使いすぎたのであろう。
「はぁー! 弁償してよ!」
という事で主人公はそれを受け取り、その日の放課後部活を休んで糊を買いに行く事になった。凄い巨大なサイズの糊で全然見つからないのである。
最初に主人公が行ったのは西ノ宮駅の前にある『フレンテ西宮』
生協のコープなわけだが、発展途上時代だった西宮にとっては学生が買い物に行く場所の一つであった。
「っ……ねぇ! これ何処で売ってるんだよ」
今となっては100円均一にいけばいくらでも文房具なんてものは買えるのだが、主人公が中学生の頃には100円均一のお店は存在しなかった。
というと嘘になるが、100円均一というのは店舗を持たずに不定期で仮店舗を使って展開されるような形式ばかりであった。
そういうわけで、文房具屋という今となっては都市伝説みたいな場所を探さねばならない。残念ながら『フレンテ西宮』には巨大なスティック糊PITは置いていなかった。
めっちゃくちゃ主人公の事を嫌うひまりに売ってませんでしたというと何を言われるか分からないと主人公は本来であれば電車で行くような地域まで自転車で足を延ばした。
「……もう無理だ」
主人公は尼崎のあたりまで自転車を走らせ、とある商店街にある小さな文房具屋で同じPITでも違うタイプの巨大なスティック糊を購入した。
これは間違いなくブチキレられるやつだろうと主人公は思って翌日の朝ひまりの席へと向かう。
「おい、ひまり。ごめん! お前の持ってる奴売ってなかったからこれで我慢してくれ」
いくらでも罵声を受けてやるわと思ったら、ひまりの奴はなんと目を潤ませて、主人公にこう言った。
「えぇ! 優しい」
おいおい、マジか? 主人公、一年以上謂れのない嫌われ方してて結構君の事がトラウマなんですけど……そんな感じ?
本当にこの時は女心というものは分からないと思ったものである。それからひまりは主人公に合う度に主人公の事を愛称、所謂ニックネームで呼び、スキンシップが激しくなる。
当然、男ならこう思うだらろう。
(こいつ、俺に惚れてる)
むしろそう思わない奴はホモか、相当に鬱をこじらせたやつか以外考えられない。主人公もひまりが抱き着いてきたりすると「やめろよー」
とか言っていたがスゲー嬉しかった。
女の子は柔らかくてまぁいい匂いがする。
この中学二年生の頃であるが、女子の可愛さと前述する仲良しクラスだった事、さらにはこのひまりとの確執もなくなり、主人公達は最強のクラスとして前進を始める。
中学ビックイベントの一つ。
『合唱コンクール』
これで最優秀になる事ができたらスキーに連れて行ってくれると担任の女の先生は言う。我々二年四組はみんなで力を合わせて放課後に昼休みにと練習を繰り返す。
当然、やる気を見せない不良かぶれのクラスメイトもいたが、男子全員でちゃんとやれよと言い彼も突っ張る事よりハブられる方が危険だと考えを改めた。
そして来る『合唱コンクール』当日、我々は見事に最優秀賞を獲得する事になる。そう、まさかのスキー日帰り旅行をクラスで行く事になるのだ。
それは冬休みの時だった。
勉強をしたいというがり勉君たちにも声をかけ、一緒に行こうとぜと主人公の人懐っこさが全開で奇跡のクラス全員参加が実現した。
場所は六甲山人口スキー場、あの阪神タイガースの六甲おろしという歌のあれである。ここで少し阪神タイガースについて説明をしておくが、あれは大阪の球団ではない、西宮のれっきとした球団である。
まぁ優勝しても西宮でパレードをしないので主人公は阪神タイガースが大嫌いであるが、まぁそれは今は関係はないか……
大型バスでみんなで六甲山へと向かう、実は主人公は車酔いをしやすいが、陸上部のお嬢様系女子、しのちゃんが主人公に「大丈夫? 酔い止め飲む?」と酔い止めと水をくれる。
ええっと、この水ですが、空いていたんです。という事はしのちゃんと主人公は間接キスしてたって事なんですかね? これに関してはもう確かめる余地もない。
主人公達は六甲山の人工スキー場へとたどり着く、実は主人公はスキーというウィンタースポーツをした事がなかった。
それを青田君というチャラ男系だけどフレンドリーな友達が教えてくれるという。実は彼は高校に上がり自殺する事になる。自殺理由は知らないけれど、確かお金が絡んでいた系だったのではなかったかなと思う。
主人公は彼と中学二年生の頃仲が良かった。その事を知った時は実に心が折れそうになったものである。
「おーい、ハノ字教えてやるよーい」
彼は教えるのが好きな男の子であった。それに勉強もできるそこそこイケメン、そして柔道部だったか?
彼の好きな女の子はクラスの女子にいた。少しふっくらとした可愛らしい女の子であった。主人公は青田君が好きな女の子だから好きになるまいと思ってたが、実は彼女からいくらかアプローチがあったのだ。
それはこのスキー日帰り旅行において語りたいと思う。六甲山人口スキー場の自動販売機は超絶ぼったくりであった。
まさかのコーラ200円とかで売ってやがる。
千円のコーラを買う方法的な営業の本がこの十年後くらいに人気が出るが、中学生で金のない主人公には200円のコーラはまさに1000円近い価値がある。それをクラスのみんなは余裕で買っているのが腹立たしい。
主人公の住む西宮は有名な芦屋の隣であり、ここと同じく山手に行けば行く程金持ちが多い。芦屋六麓荘とやりあえるかは分からないが甲陽園という金持ちの巣窟が存在し、芦屋でよくお目にかかるクソ高いパン屋、ローゲンマイヤーの店舗があったりするものだ。
主人公のクラスにも甲陽園連中、夙川のJR系列の連中だろうか? という金持ち軍団だらけで主人公の財布事情など知った事ではなかったのだろう。
「あれ食べよう!」
いや、金が!
「ちょっと休憩して珈琲でも飲もう」
あぁ、うん金が!
主人公は泣きながら冬休みにやりくりせねばならない金を使いまくっていた。インストラクターの優しいお兄さんの指導の下、主人公達はそこそこスキーを滑れるようになっていたが、主人公の本当の気持ちをここで語ろうと思う。
(つ、つまんねー! 雪の坂を滑ってるだけじゃねーか、なんだこれ? 何が面白いの? ねぇ教えて)
主人公は冷めやすい性格であった。運動神経は並み以上、反射神経はそこそこよく、持久力は小学生以下である。
まぁしかし、クラスのみんなといることは実は楽しくてしかたがなかった。自分がいかにガキっぽいのか、そして自分がいかに寂しがり屋であるのかという事。
こいつらとも次のクラス替えで別々になるんだなとか少しセンチな事を考えながら雪を滑っていると余裕で転ぶ事になる。
「うおっ! やべぇ死ぬ」
六甲山の人口スキー場で死ぬ奴は中々いないだろうが、主人公は中々のスピードの中やってしまったと思った。
ゴロゴロと転がりながら止まった先に青田君が全力で好きですアピールをしているめぐちゃん(仮)が主人公が転がった先で座っていた。
「およ? めぐさん、休憩すか?」
主人公は転がった状態でそういうのでめぐはクスクスと笑う。今思えば主人公はまさに主人公のような感じで彼女に話しかけたのであろう。
「うん、少し疲れちゃったから休憩」
うん、確かに笑うと可愛いな。スキーウェアからも分かる巨乳である。これは抱き心地がよさそうだとか一瞬で思った主人公は中学二年生、一番馬鹿な時期である。
「だったら、ちょうどお昼やしご飯食べへん?」
主人公は何でめぐさんを誘ったのかは……分からない。
本当に分からないのである。今までのパターン的には惚れてるという奴だが、青田君の好きな人なので手を出してはいけないみたいな友情があったのだろう。
そして、二年生後半に続く。
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