第8話 修学旅行 中編 果たして彼女の気持ちは?
修学旅行二日目は長崎スタートであった。班で行動する事になっており、女子三人、男子三人で行動する事になる。女子三人の中、一人はちょっと可愛い女の子であり、主人公はほこほこしていた。
「まずは原爆資料館とその前の像で記念撮影みたいだね」
リーダシップを発揮する女子がそう言うので先生の点呼に合わせてそれに従う。有名な空に指を指している男の人の像の前でクラス写真を撮影した後は原爆資料館を見学する。これはあえてそのまま書こうと思うが、光景に対して苦手な人もいるので、閲覧拒否を生徒で決めてもいいんじゃないかと主人公は思う。
光景に泣いてしまう人や気分を悪くする生徒がまぁ大量に出た。確かに非常に大事な勉強だとは重々承知するが、それは今文字をこうして起こしている大人が言える事であり、まだ心を育てている最中の子供には酷なのではなかろうかと主人公は思う。
まぁ学校の先生という連中が社会を知らないので、これらが変わる事は百年後もないだろうとは思うけどね。
そこそこショッキングな物を見たところで長崎市内観光となるのだが、他の班はお通夜みたいになっていた。我が班はとりあえず記念館の中も全部見て回り、それなりに勉強をして普通のテンションで長崎観光をしていた。
「文明堂のカステラ買いにいこうよ!」
女子の一人がそういったのだが、うん、全くこれに関して否定する必要はないと主人公達男子も了承する。
カステラって一本1000円、2000円してたんですは! 西宮で買おうもんなら、大阪梅田に出て物産展でようやく800円、1500円とかだったんじゃないかな? そんな知識しかない主人公達が全力でビビった物。
カステラの切れ端100円。
「おいおいおい、あっちゃん! 俺は夢でも見てるのか? ありえない値段でカステラが売っているのだけれども?」
同じ班の男子にそれを聞くとあっちゃんも「いや、これヤバイやろ」とただただ一言そういうのである。袋にパンパンにつまって100円。普通にカステラ一本買うくらいの量が入っていた。
こんなもんこれ買ったらしまいやんけ、商売ならんやろ!
と思ったら、修学旅行生のみ購入可を表示しているところが、なんて良心的なお店なのだろうかと主人公達は感動の極みに打ちひしがれていた。
切れ端とちゃんとした商品のカステラとを購入して長崎の中華街のようなところで昼食を食べようじゃないかと移動する。
長崎といえば、やはり長崎ちゃんぽんであろう。
なのにあっちゃんは……
「味噌ラーメン」
この味噌ラーメン、恐らく長崎ちゃんぽんのお店で殆ど頼まれる事がなかったんじゃないかと思う。主人公は長崎ちゃんぽんが少しこの頃苦手だったので、皿そばを注文した。あと餃子と春巻きを頼む。
長崎ちゃんぽんを女子三人と男子一人、そして主人公が皿ソバ、これは瞬殺でテーブルに運ばれてきた。
がしかし、味噌ラーメンは一向にこない。我々が食べ切り、そしてあっちゃんの怒りがマックスに到達した時にそれは運ばれてくる。
修学旅行の昼食でみんなが食べているのに自分だけ食べられない怒りと悲しは殆どの人には理解できないだろう。
但し、主人公は分かるぞ。
バスで弁当を食べられなかったからな……まぁこれが原因であっちゃんは終始機嫌が悪く本当に空気の悪い観光になるところであった。
龍踊(じゃおどり)が奇跡的に行われており、それを体験できる的な奴であっちゃんは機嫌を直してくれた。
その時。
「あたるってガキだよね?」
中々可愛い女子である愛(仮)が主人公に同意を求めてきたので主人公は親友のあっちゃんを悪く言うわけでにもいかず。
「まぁ、飯がこなかったら腹も立つよ」
と返すと。
「君って結構大人だよね?」
と愛に意味深な事を言われる主人公はからさんのお姉さんを一瞬忘れ、愛ってホント可愛いよな? でもクラスで人気とかもないし、付き合ってるという話もないよなとイーグルアイを発動させていた。
「そんな事ないよ」
一度女子ってのはそう感じたらそういう考えになるようで、この謙虚な姿勢がやはり大人であると褒められたような気がする。
大浦天主堂やらあちこち見て回ったのだが、この長崎、異様に階段が多く異様に疲れる。集合時間まで愛達とカフェで珈琲なんかを飲みながら時間を潰した事を覚えている。
そしてバスで二日目に泊まるホテルに到着した時、兵庫県は西宮のまぁまぁアレな中学生たちはこぞって感嘆の声を上げる。
「うわっ! すげーホテル」
今まで修学旅行や学校の宿泊系イベントでは大部屋しか体験した事のなかった主人公達は個室を与えられる事に本気で興奮したのである。
二人一組で部屋をもらえる事になり、何故か班の男子ではない優君が主人公と同じ部屋になりたいと言うので主人公は優君と同室になった。
「優君は何故俺と同じ部屋を所望したのか?」
こんな古風な言い方をしたかは分からないが、結構当時の主人公は台詞っぽい言い回しをしていたんじゃなかったかなと思う。
わりと厨二病を患っていたので……
ダークフレイムマスター的な奴ではなく、なんとなく孤独感出してる俺カッコいいみたいな本気で痛い人だったような気がするが、人と話すのが好きだったので全力で孤独になる事もなく、ちょっと変わった良い人くらいのイメージだったように思える。
「いや、俺あたるもさねも嫌いだから」
この一言には衝撃を覚えた。喧嘩をするわけでもなく、単純に人の事を嫌いだと思える奴がこの世の中にいるのかと、まぁ主人公の頭の中はお花畑だったので尚凄い衝撃だったんじゃなかったかな?
そんな事言うなよ的な事を諭した主人公は、荷物を置いて備え付けのシャワーで体を清めると夕食に行こうと優君に話した。
少し主人公に説教をされて気分を害していた優君だったが、主人公の事は嫌いな部類ではなかったらしく快諾して彼もシャワーを浴びると私服に着替えてホテルの食事をするパーティー会場へと向かった。
今更ながらに思うが、主人公は人生でこんなに凄い飯を食ったのはこの中学生のシーホークホテルの食事と誰かの結婚式くらいだったんじゃないかなと思う。
修学旅行でコース料理なのだよ。
確か前菜がゼラチンで固められた何かカナッペ的な食べ物で、次が何等かのポタージュ、そしてさなか料理にポテト、最後が博多地鶏のクリームソース煮込み的な感じだった。
めちゃくちゃ美味かったのを覚えている。
主人公の実家は九州にあるので、なんと親戚の人がわざわざ修学旅行先のホテルまでやってきてお小遣いとにわか煎餅をくれた。お小遣いが5千円増えた事で主人公はこれキタ!
状態であった。
なんせ、からさんのお姉さんにお土産が買えるしね。とか思って食事が終わると、普通に自由時間&就寝という連絡がくる。
普段であれば、全生徒を体育座りさせてなんらかの説明をするのだが、高級ホテルでそれはさすがに恥ずかしいと頭の悪い教師陣も思ったのかもしれないがそれは正解だったと主人公は思う。
外の夜景は綺麗だし、さすがに高いホテルとなるとホテルの中で色々遊べる。ゲームセンターにも就寝までは行って良かったし、ラウンジ珈琲も飲める。お土産や、ラーメンを食べに行ってもいい。
主人公はお小遣いが増えたので、お土産コーナーを見てまわってた。お菓子系がいいか、何か小物系がいいかなど……すると愛が丁度通りかかる。
「お土産みてんの?」
「あーうん」
「私も見ていい?」
「うん、いいよ」
多分である。主人公は何度か彼女を作れたタイミングというものが人生においてかなりあったハズなのである。
それが多分この瞬間……
「珈琲でも飲む? 奢るよ」
少しお金に余裕があった主人公はそう言ってラウンジに愛を誘うと簡単なお話をした。
アイスコーヒーをカラカラと回して愛は主人公に好きな人はいるか? と聞かれたのでいるよと答え、それが学校にいない事を告げると珈琲を飲んで悲しそうな顔でこう言った。
もちろん主人公のこの頃の好きな人というのはからさんのお姉さんだったわけなんだが、もしからさんのお姉さんと、あの寄り道をしていなければと思うと未来は変わっていたのかもしれないと今更ながら後悔している主人公がいる。
「じゃあお休み」
まぁね……これ勿体なかったと思う。
部屋に戻ると優君は既に寝ており、この時の主人公は愛の様子が少しおかしかったかなと呑気な事を考えて、少しばかり当時の福岡ドームの見える福岡の夜景を見ながら眠くなるのを待った。この当時にもしスマホなんかがあったら、もう少しだけお互いの気持ちを知る事ができたのかもしれないが、後悔は先に立たないものだなと主人公はしみじみと思う。
誰かに声が届くなら、誰かを好きになった時はその気持ちを正直に明かしてほしいなと思う。失恋する事より、恋として始まらなかった事の方が尚悲しいものである。
ソースは主人公だ。
そして修学旅行は三部作最終章へと向かうのである。
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