第9話 修学旅行 後半 それが事実なのだ。

「受験用のお守り買おうぞ!」



 主人公はそう言って班のみんなに言ってみるとあっちゃんを覗く全員がそれに頷いた。この班あっちゃんと、一人の女子を覗き、みんな頭の良い連中ばかりだった。もう修学旅行の時には高校受験の事を考えていたのだろう。

 そう福岡といえば、太宰府天満宮である。ここにやってきて参拝と観光が最終日の最初のスタートであった。ここの梅が枝餅という焼きもちみたいな物はとても美味いのでオススメしたい。福岡物産展とかやってれば売っているのではないだろうか?


 朝の時間に太宰府天満宮の参拝を終えると修学旅行生を乗せたバスは当時の九州では最新の遊園地であるスペースワールドに行く事になる。

 スペースワールドと言えば去年2017年12月31日に閉園してしまったと聞く、とても面白おかしいポスターは大人になった主人公も大いに心が癒された。

 そして自分の見聞きした物や人が無くなってしまうというのはなんとも言葉にできないものである。この場を借りてありがとうスペースワールド、そして園内で喧嘩ばかりしてごめんなさい。


 はい、いきなりネタバレをしましたが、主人公達の中学は公立にしてはというか、公立故というかとんでもない悪い連中が多い学校であった。3割くらい悪い奴で構成されていたかもしれない。

 さらに言えば、主人公達も自らに危害を加えられるとその悪い方に裏返るような予備軍が3割程おり、4割くらいが一般市民だったんじゃないだろうか?

 そんな連中が遊園地にばらまくというのも学校の先生も少しは考えるべきではなかっただろうか? だいたい修学旅行シーズンは複数の学校が集まるものである。まぁその辺の不良共は意味不明に喧嘩を売りまくる売りまくる。


 日本全国県民性の違いはあれどドキュンはほぼ同じ行動をしてくれていたものだった。あちこちで不良共が喧嘩をしているスペースワールドの園内。

 逆にこいつはキャストなんじゃないだろうかと思えるその感じの中主人公は遊園地が好きすぎて一人で色々乗って回っていた。

 どちらかといえばそこまで広くない園内に沢山のアトラクションを置いているのがこのスペースワールドであった。

 お化け屋敷も中々気持ち悪くて当時ではリアリティのあるものだった。こういうと何だが、主人公は孤独を楽しむ事が出来るタイプであった。

 というとカッコいいが、多分自分の欲望に忠実だったんだろう。大体のアトラクションを堪能した主人公はフードコートへと向かう。


 フードコートは恐らくもう二度と復活はしてくれないだろう、いい加減な料理が出てくるフードコートなのである。

 堅かったり、しょっぱかったり、殆ど電子レンジで調理してそうなそんなフードコート、それの何がいいんだとか思うかもしれないが、それがいいのである。超が付くほどジャンクな感じがたまらない。



「あっ、優君やってるね!」



 一人千円分の金券を渡されていた。それで好きに園内で飲食してくれという事だったんだろう。優君は千円分全て使って豪遊していた。それに同じ学校も他校の生徒も若干ドン引きしていたのを覚えている。なんせテーブルにいろんな料理を広げてあの海賊の方のバイキングかという食事をしている光景なのだ。



「俺の横あいとるで、座る?」



 優君のその食事の仕方に引いた人々は関わりたくないとばかりに優君の座る席から離れたところに座っており、主人公はお昼時で座る事ができた。

 主人公はたこ焼きと焼きそばにコーラをつけてしめて500円くらいのセットであった。残りの金券は園内で売っているフロートでも買おうとおもっていたのだ。



「大体のアトラクション乗ったんちゃうん? この後どないするん? ここで飯でも食って時間つぶす?」



 優君はもうこのフードコートで修学旅行を終える気なのかと正直驚いたが、主人公はもう少しアトラクションを楽しんでお土産屋さんに行こうかなと思っていた。

 それを優君に告げると彼はきつねうどんを食べながら主人公にじゃあ新幹線でと一言。

 そうか……帰りは新幹線だった。

 バスよりなんぼかマシな事に主人公は少し安堵するとジェットコースターに乗ろうかと歩む。すると地方の中学生とウチの中学の連中が揉めている。


(知らん知らん、勝手に喧嘩しておくんなせぇ)


 主人公は自分が楽しいという事を邪魔される事に大きなストレスを抱えるタイプであった。だから、喧嘩の加勢をするつもりも止める気もない。

 しかしながらドキュンとう連中は人様に迷惑をかけるスキルに関しては天才的な才能を発揮するものである。

 この時、我が校の連中は劣勢を強いていたようだったらしく、調子にのったドキュンは主人公の元へやってきてこう言った。



「何みてんだよ?」



 いや、見てないなぁと思ったが主人公はもう既にこの時点大きなストレスを抱えていた。嗚呼コイツムカつくなと……



「俺ジェットコースター乗らなあかんからどけや!」

「調子に乗ってんなよ田舎者」



 そう、何故か地方の連中は田舎者という常套句を口にする。お前こそどこの田舎からやってきた方便しゃべっとんじゃとか思ったが、主人公は基本平和主義、無視してそいつをしたが、主人公が持っていたメロンソーダフロートを叩き落としてくれた。

 確か350円という主人公にとっては大金であった。

 まぁ金券を貰ったので実質タダみたいなものだが……

 この時の主人公は子供だった。というか中学三年生だ。目の前のドキュンの首を持つとそのまま地面に叩き落とし周辺の友人に止められるまでそのドキュンを殴り続けていた。


 ちなみにだが、これはこの当時の子供達が異様に頑丈なので怪我程度で済むのだが、今の人々はひ弱なので即死してしまう可能性があある故、絶対に真似しないように!

 主人公のその武勲は風のように広まり、先生には怒られるわ、双方のドキュン達からは稀有な目で見られるはまぁ迷惑な話であった。100円分程金券が残り勿体ない事をしたと思いながら主人公はお土産を見れなかった事を酷く後悔した。

 新幹線の中で皆スペースワールドで購入したであろうお土産の宇宙食を食べている。今でこそドン・キホーテとかで購入できるかもしれないが、当時は宇宙食と聞くだけでまぁまぁテンションが上がったものである。


 今思えばそういう名前のタダのお菓子だったのかもしれないが、当時の記憶を思い返すとみんなは乾燥したような固形の何かを食べていたように思える。

 ソフトクリームとかそんな名前が書いてあり、もう二度とこのスペースワールドのお土産を食べる事はできないわけで、謎のお土産のまま主人公の中で終わってしまうのだろう。

 そう、主人公はからさんのお姉さんへのお土産を忘れてはいなかった。

 明太子系のお菓子とお茶ののど飴を購入した。

 言わずと知れた明太子と九州はあの八女茶が有名なのである。それをなんとか新幹線乗り場で主人公は先生たちの目をかいくぐり購入したのである。

 新幹線の中でトランプをしたり、修学旅行の思い出話なんかをしていると新大阪へと到着してしまう。


 各々JRで西ノ宮へ帰るのだが、まだあの頃のJR西ノ宮駅にはマクドナルドがなかったのでフレンテ西宮の地下フードコートで軽食を取り友人達と別れる事になる。

 家に帰る前に主人公は公衆電話でからさんのお姉さんの携帯電話に連絡をした。お土産を渡したいのだと言うと彼女は快諾してくれた。

 心臓の音はドクドクと早まり、からさんのお姉さんように別の袋にしてもらった物を持ってバスロータリーのあたりで主人公はぼんやりと待っている。からさんのお姉さんはどうして主人公をこんなところで待っているように言ったのか分からなかったが、主人公は視覚的効果によってそれを知る。


 大きいとは言い難い単車に二人乗りでやってきた男女、恐らくあれはホンダのクラブマンだったんじゃないだろうか? 単気筒の良いバイクだ。

 フルフェイスヘルメットをかぶった女性、ヘルメットを取るとからさんのお姉さんの顔が現れた。



「お帰り、修学旅行楽しかった?」

「うん楽しかったですよ! あっ、これお土産です」



 そう言って中を見てからさんのお姉さんは大変喜んでくれた。遅れてバイクの運転手、アッシー君もヘルメットを脱ぐとスカした男が現れた。



「これ、私の彼氏。ここまで送ってくれたんだ」

「あぁ、そうなんだこんにちは!」



 頭を下げるとそのからさんのお姉さんの彼氏はとても丁寧にあいさつをしてくれたのだが、主人公からすればこの第三者の存在は修学旅行中全く予期せぬ登場であった。

 彼氏ってなんだったっけ? おでんとかにつけて食べる奴だっけ? それからしか? からさんのお姉さんだけに……

 とかこんな余裕を持ったすっとぼけ方は主人公にはできなかった。ただただ笑って二人を見送る事しかできない。

 それが主人公中学生の最後の青春だったのである。

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