愛の賛歌
第14話 新たな刺客
第3王宮地下2階、薄暗いトンネル。
壁に均一に張り巡らされた灯。
――タッタッタッタ……。
ナキ、シャルル、雨月の3人は走り、トンネルの最奥まで駆け抜ける。
トンネルの奥に現れる土壁。
「行き止まりじゃねぇか!」
ナキは土壁に両手をつける。
「そう簡単にはいかないか」
雨月がつぶやく。
シャルルが土壁づたいに片手の平をあてながら歩いてる。
「シャルル、何してんだ?」
「あった」
土壁から少し飛び出た土の突起。
シャルルは、土の突起をつかみ下へと引っ張った。
――ガッシャン。
――ゴゴゴッゴゴゴゴッゴ。
両サイドにひらける土壁の扉。
その奥から現れる巨大な品のある螺旋階段。
雰囲気はロイヤルブルー。
薄暗い螺旋階段はずーっと上へと繋がっている。
シャルルは天を見ながら口を開く。
「この螺旋階段を登れば、出口へと繋がる1階のフロアへ行けるわ」
「おぉ。やるな!シャルル!」
「私を誰だと思っているのよ。第3王宮第3王女シャルル様よ!(ドヤッ)」
シャルルは腰に手をあて、顎に指をそっとおき、上目遣いで自慢げに決めポーズを取った。
「すっげぇな~」
螺旋階段の上を見上げるナキと雨月。
「もうっ!」
シャルルは顔を赤らめる。
「えっ?」
ナキと雨月がシャルルを見る。
「何もない!」
「雨月、あいつ何で怒ってんだ?」
知らないと言わんばかりに、雨月は首を傾げた。
「さぁ、天帝会に気づかれる前に急ごう」
******************************
――タッタッタッタ。
ナキを先頭に螺旋階段を駆け上がる3人。
「もうすぐで、1階フロアよ」
「あぁ!」
――ガッシャン。
ナキは目の前に現れる1階フロアへと繋がる扉を開いた。
扉を開くと3人の目に入ったのは中央に広がる大きなフロア。
2階へと続く大きくそびえたつ中央階段。
中心に敷かれる赤い絨毯。まさに王宮内の様式を感じさせる。
しかし、どこか役所のような作りも感じさせる空間。
壁を沿うように「第3王宮・王都民課」や「生活安全課」など用件ごとの各種扉が存在している。
すぐさま、3人は状況を確認するために大きな中央階段脇に身を隠す。
――ザワザワザワッ。
まず3人の目に入ったのは、足行きを止める数十人の王都民であった。
外へと繋がる門の受付の前で立ち止まる中年男性。
扉の前に立つ天帝兵に話かける女性。
部屋の中央で立ち止まる親子。
椅子に座るご老人。
第3王宮に用があったであろう王都民の不安な面々。
一人の中年男性が扉の前の受付で槍を手に持つ天帝兵に訴えかける。
「どういうことだよ!ここから早く出せよ!仕事なんだよ俺わ!」
天帝兵は黙ったまま前を向き視線をずらさない。
「ママ~!早く帰ろうよ~」
幼き少女が母親の袖口を引っ張る。
何かを悟ったようにシャルルが口を開いた。
「外へと繋がる扉や窓が全て封鎖されている……。もう、天帝会に気づかれたんだわ」
焦るように3人の頬へと垂れる雫。
「この短時間で……」
雨月は静かにつぶやいた。
「くっそっ。シャルル!他に出口はないのかよ」
「1つだけ、あるにはあるわ。第3王宮の最上階からなら。でも……」
シャルルは、ゆっくりと首を横に振った。
「でも?」
「希望が薄いってことだろ。この第3王宮には、まだまだ天帝会の兵たちがいるはず。ここは天帝国の王都の中心だしジーク看守長レベルのやつがいつ現れてもおかしくはない。それに最上階にいくまでに大量の兵を集められたら、俺たちじゃ到底太刀打ちできない」
「んっじゃ、どうすんだよ!!」
「少しは、お前も考えろ!」
焦りから気が立つように、声を上げる2人。
「2人とも!しーーっ」
シャルルが人差し指を自身の口に当てる。
「うぅーん……」
ナキは、しゃがみ込み、頭に両手をおく。
「なにも、おもいつかねぇ……」
「やっぱり今はそれしかなさそうね。私達は進むしかない。何より早くしないと……」
「そうですね。できるだけ身を隠して行動しましょう」
「わかった」
ナキは頷く。
――キュィーン。ガッチャン。
1階フロアから2階へと繋がる中央階段を上った、すぐ先にある大きな扉が急に開く。
――ドォーーーーーーーーーーーーーン。
1階フロア内に降り注ぐ、重力で押し潰されるような空気。
足を止める王都民。
身の毛立つ3人は瞳孔を大きく開く。
「いやっ……」
シャルルは瞬時に屈み、体を小さくする。
2歩、3歩と引き下がるナキと雨月の足。
「なんなんだよ。これ」
額に流れる汗。
「これは……あからさまにむき出た……強烈な殺気だ」
そう雨月が小声で言った。
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