第3話 キツネ仮面の和服男
「よし!とりあえず、あのドデケェ中心の王宮を目指すか!」
ナキは王都の中心にそびえたつ主王宮を見つめ、気合を入れるように荷物を握る右の拳と左のてのひらを打ち合わせた。
――と、その瞬間。
ビュオォーンと強い街風が門外へと吹き抜ける。
「な、なんだぁ!!」
ナキの顔を覆いつくすように、へばりつく1枚の紙。
ナキは両手で紙を顔から引き離す。
「うーん」
しばし傾げる首……。
と、ナキは何かを思い出したかのように目を見開くと、同時に自然と紙を握る手に力を込めた。
そして、間を空ける暇もなく手から手荷物を擦り落とす。
――ドサッ。
「どういうことだよ。元第3王女シャルルが暗殺ってよ……」
ナキは紙に大きく写る「元第3王女シャルル」の微笑んでいる顔を見つめた。
「この顔……シャルルって、あの、小せぇ頃に遊んだシャルルのことだよな」
――タッタッタッタッ!!
第3王宮の中心街があるであろう方向から聞こえてくる天帝警備兵の声と連なる足音。
「暗殺犯を見つけたぞぉ!!皆どけろ!どけろ!」
ナキの方へと走り迫る、赤い線模様の入ったキツネの仮面を着けた和服の男。
「待ちやがれ!!キツネ野郎!」
……そして、そのキツネ仮面の和服男は風のようにナキの真横をただ通り過ぎていった。
「……暗殺犯?」
キツネ仮面の和服男の方へと振り向くナキ。
しかし、目で捉えるのもわずか…
その後、ものすごいスピードでキツネ仮面の和服男は身軽くジャンプをし、建物の上部へと消えていった。
キツネ仮面の和服男に向かって銃弾を建物の上部へと放つ天帝警備兵たち。
鳴りやむ銃声。
「なんでっ……シャルルが……」
ナキはフッと視線を下へと落とすが、すぐに拳を強く握りしめ急いだ様子でキツネ仮面の和服男の後を追いかけた。
(この国はどうなってるんだ)
******************************
とある建物の屋上。
頭の上で手を組んだキツネ仮面の和服男を囲むように、天帝警備兵5人が銃を構え待機している。
「ジーク看守長。拘束完了いたしました」
天帝兵と和服男の向かいには、背が高く、天帝国の軍『天帝会』の上層階級の人間が身につけるとされている白く豪華なコートを羽織った男が立っていた。異様なオーラを放つその男の名は『ジーク』。天帝国第3王宮看守長。
片目には眼帯。耳にはピアス。鋭い目と人相の悪い顔。余裕を感じさせるように上がった口角。白黒のツートンカラーにツンツンとした髪。いやらしく染めた頬のような色彩のサディズムな皮服。
ジーク看守長は腰に巻いた赤紫色のムチのグリップを握り、先端に鋭利な刃物がついている長いムチを何度も床に叩きつけた。
地とムチ先の刃がぶつかり合い挑発するように鳴り響く高い金属音。
「暗殺者さんよ。もう鬼ごっこはいいだろぉ~。俺様は鬼役が飽きたぜぇ~」
何も言わないキツネ仮面の和服男。
「お前が最近コソコソと天帝会を探っていたこともわかってんだぁ。理由もなぁ~」
キツネ仮面の和服男は背中にある1本のカラ傘の持ち手を瞬時に握る。
「さて、俺様と大人しく来てもらおうかぁ~」
ジーク看守長がそう言い、舌をペロリと出し口角を少し上げた。
――と、その瞬間。
仮面の和服男は地を力強く踏み込み……
囲む天帝兵の間を瞬時にすり抜けるとジーク看守長の元へと走り向かった。
が、しかし、それよりも早くジーク看守長が振るうムチの先端の刃がキツネ仮面の和服男の腹部まで一直線に向かう。
「俺様の方が早い、諦めろ。暗殺者さんよぉ~」
(は、はやすぎる……!)
「ここ、までなのかぁ」
キツネ仮面の和服男は、あっさりとした透き通った声でそう言った。
――と、その途端。
「おぉおお!まぁああ!えぇええ!かぁああアアアア!!!!!」
突如とキツネ仮面の和服男の真横に拳を振り上げるナキが現れる。
キツネの仮面男の頬に入る強烈な一撃。
――ドォオオオオオン!!
宙に舞うキツネの仮面と和服の男。
――グサリッ。
と同時に、ナキの体内に響く鈍く低い音。
「え?」
ナキは自身の胸のあたりを見た。
「え……」
ムチの刃先からにじみ出る赤黒い液体が、徐々にナキの胸部の布へと染み渡る。
「あれっ…………」
和服男に一撃を入れた勢いで体制を崩したナキはドサッと地へと倒れこみ……
そして、先ほどまでキツネの仮面を着けていた和服の男も同じように地面に倒れこんだ。
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