第36話 伝説のアビリティリング

 ロカが雨月の方へと手を広げる。


「そっちにいる傘を担ぐ男が雨月だ」


 雨月は入り口付近に突っ立つ。


(革命軍の特殊捜査部か……。オレはシャルル元王女暗殺の件で追われる身。それにここは捜査部隊。目的を果たすための条件としては悪くはない……)


 シドが雨月の身なりと頬の模様に視線を移す。


(カラカサ一族ねぇ……。まーた、総隊長は珍しいやつを……)


「まぁこの2人は見ての通り、いろいろと事情持ちで、それぞれ目的もあるんだけど、とにかく、まず強くなるためにここへやってきたと思ってくれ。そして、強くするためにここへ連れてきた。だからみんなも仲良くしてやってほしい」


 ロカはやわらかく微笑みながら言葉を吐く。


(紅髪の妙なリングに、カラカサ一族の保護か。天帝会に渡るとやっかいだからな。まぁ、でも総隊長が気に入ったから連れてきたが大半を占めていそうだけどな)


 シドはひっそり苦笑いする。


 ロカはナキと雨月に視線を移す。


「ナキ、雨月ここに入隊するで大丈夫かな」


 ナキと雨月は答える。


「あぁ!」

「はい」


 ナキと雨月を見る革命軍特殊捜査部隊のメンバーたち。


ロカ「うん!ようこそ、革命軍特殊捜査部へ、んじゃ、あらためましてよろしく!ナキ、雨月」

シド「よろしく~」

ヴィック「よろしくな」

リリィ「よろしくじゃ!」

コルト「よろしくお願いします!」

その他メンバー「よろしくぅ!!」

   

ナキ「よろしく頼む!」

雨月「よろしくお願いします」


 ロアは雨月に小さく手を振った。


「雨月君よろしくね」


 そして、ナキの方を見るなり小さく舌を出す。


「べーーっ」


「あいつオレに冷たすぎるだろ……」

 

 ナキは拗ねるように地へと手をつけ、落ち込む。

   

「また嫌われてやんの!」


 からかうナキの近くにいるメンバーの1人(=アフロ男)。


「てめぇ!馬鹿にしたなっ!」


 ナキは、そのアフロ男にやつ当たるように威嚇し、羽交い絞めにする。

 

「ウゥ…ウ!!」


 アフロ男はギブアップと言わんばかりにナキの腕を何度も叩く。


(もう馴染んでやがる……)


 その様子を見ていたヴィックが苦笑いする。


 ロカが口を開く。


「そ、れ、で!隊長クラスは妙なリングの存在に勘づいているとは思うけど、ナキの首にはクラウンリングの1つCROWNRINGⅢクラウンリング・スリーが装着されているからね」


 場の空気が一気に変わる。

   

「はっ…クラウンリング……」

「うそ、だよな…」

「スリーって、あの……」


 ロカのその言葉で隊長クラスを除く、メンバーたちは目を点にし、口を開いた状態で凍りついたように固まる。

 

 と、同時に一瞬にして、大部屋が静まりかえる。 


(そりゃ、そうなるよな。オレも始め見たときはさずがに驚いたよ……)


 雨月も固唾を飲み、ナキの首元を改めて見た。


 シドがカウンターの上で石のように固まるリリィを見る。


「リリィ。お前気づいてなかったのか……」


 と、その言葉を聞いた瞬間、勢いよくブゥーーーっと口に含んだ酒をシドの顔へと吹きかけた。


「まままま。まじ、かぁ…」




************************************************


 メンバーたちは再びナキに注目する。


「だから、そのクラウンリングってなんなんだよ!」


 全員が声を揃えてナキに向け声を上げる。


「えぇぇぇぇ!!!」


 ロカが口を開く。


「首にはめられているブラックリングのことだよ」 


「これは、知らねぇ間に首にはめられていたんだよ!どうやってもとれねぇからずっとつけてるだけで……何かよくわかってねぇし。誰も教えてくれねぇし!」


 カウンター近くのヴィックが口を開く。


「クラウンリングは元々、旧天帝国第1、第2、第3王宮の王たちが残したと言われる伝説の皇力を宿した3つのアビリティリングなんだ」


 続けてアフロ男が口を開く。


「そのリング価値は、トトトトト『SSSトリプルエスレート』だぞ!」


 一同は驚きを隠せず、いまだに震えが止まらない。


「……世界に3つしかないリング。それにお前がつけているのはスリーだから、第3王が残した「超速再生」の皇力だぞ!」


 ナキは平然とした様子で話す。


「なんかよくわからねぇけど……これって、そんなにすげぇものだったのか」


 焦り続けるアフロ男が話し続ける。


「すげぇ、なんてどころじゃねぇよ!!ってか、お前、今までよく生き延びてこられたな。天帝会が血眼になって探してるっていうのによ……」

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