第28話 決心

 ロカの隣に立ち上がるナキ。


「おいっ、雷人間!もらっていくって、勝手に決めんなよ!オレはお前のとこになんていかねぇよ!」


 ロカは不思議そうな様子でナキを見る。


「おぉ?」


「オレはシャルルを助けて、今からあそこへ行くんだ!」


 ナキは主王宮を指さす。


「ハハ、おもしろいね。主王宮に行ってどうするの?」


 ニコニコしながら話すロカ。


「いろいろと確かめたいことがある」


「確かめたいこと?」


 頷くナキ。


「……うん。昔、オレの目の前で殺された家族、そして連れさらわれた家族のこと……」


******************************

 ナキの脳裏に浮かぶ、シヴァとホタルの別れ際。

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 雨月は何かを思いふけるようにナキの背中をじっと見つめる。


 バトーが笑いだす。


「ハッハハハ」

「身のほど知らずは言うことが違うなぁ。バカすぎて腹が痛いぜ。お前みたいな小僧が主王宮に行ったところで、誰も相手しねぇよ!俺たちも暇じゃないんだよ」


「いいじゃん。いいじゃん」


 そう言い、ナキを見るロカ。


「お前は笑わないのか」


「なぜ笑う。君を笑うってことはオレを笑うってことだ。それを知ってどうするかは知らないけど、誰かを思って必死にここまできたんだろ?」


「あぁ。だけど……」


「まぁ、オレも含め革命軍なんてそんなやつらの集まるところさ。だからオレは笑わないよ」


「革命軍?」


 ナキは、そう、ポロっと言葉を吐き出しロカをじっと見つめた。


「そうだよ」


 ロカはニヤリと口角を上げる。


「ちょっとは興味でたかい?」


 そしてロカはナキからバトーへと視線を戻し、先ほどのバトーと同じように笑い出した。


「ハッハハハ」

「身のほど知らずは言うことが違うなぁ。バカすぎて腹が痛いぜ。なぁ、バトーのおっちゃん」


「何の真似だ?」


 バトーの言葉をバカにしたように繰り返したロカを不思議そうにナキは見る。


――と、その途端。


 ロカは一瞬だけ冷徹な表情を見せ、口を開く。


「なんでも、なめていると痛い目見るよ。……こいつは必ず大きくなる」


 と、つかの間、ロカはすぐに笑みをこぼしナキの頭をポンポンと軽く2回叩いた。


(シヴァ?……)


 ナキはロカの顔を見るや、何か思い出した様子で瞳孔を揺らした。


「何か言った?紅髪君」


「……」


「ま、いいや」


 ロカはナキからバトーへ視線を逸らす。

   

「お前はそういうやつだったな、雷帝。話すだけ無駄だそうだ。さぁ、そろそろ、くだらないおしゃべりは終わりにしよう。そのバカもカラ傘野郎もお前も全員ここから逃げられると思うなよ」


 バトーの発する声が低いトーンで重く空気にのしかかる。

   

――しかし、次の瞬間。


 その重く緊迫した空気の中をナキの大声が貫いた。


「だから、どいつもこいつも勝手に決めてんじゃねぇよ!」


 ナキに視線を移すバトー。


「強者が弱者を決める、それが世の常だ。お前に決定権などさらさらない。さぁ、お前ら、第3王宮官長命令だ。ここにいるやつら全員を始末しろ。殺してもかまわない」


 バトーが、レオン、ジーク、大鎌を担ぐ仮面の者、マットへと一斉に命令を下す。


 ロカは前方の敵に意識を集中させるように視線を逸らさず、ナキに言う。


「まぁ、主王宮へ無事に行きたいならもっとやるべきことがある。今の君は何も知らないし、なにもできない……。もうわかっただろ?何かを守りたければ、まずは力をつけるんだ」


 自身の掌を見つめるナキ。


「ちから…」


「そう!だから、オレと一緒にきなよ」


――その瞬間。


 レオンが力強く地表を踏み込み、一歩前へと出た。


「オレに雷帝を殺らせろ」


 ヒビが入る大橋。

 と同時にその場所から一瞬にして姿を消すレオン。


「強くなれるのか?」


「うーん、それは君次第かな」


 レオンがロカの前に瞬時に現れる。

 そしてロカへ向かって拳を大きく振るう。


 目の前で起こる一瞬のできことにナキは目を見開く。


――ドォ―――ン。


 空気を突き抜ける衝撃音とともに、レオンの拳を握るロカ。


 即座にもう一方の空いた拳で2撃目をロカへと振るうレオン。


 再び、空気を揺らすように衝撃音が鳴り上がる。


――ドォ―――ン。


 ロカは攻撃されたレオンの拳を握る。


 そして、ロカはレオンの両拳を握り……

 レオンは握られ、お互いに力を押し合いながら2人は競り合った。


 ロカとレオンは口角を上げ、見つめ合う。

 そんな最中、ロカはナキへ話を続ける。


「まぁ、、、オレの部隊は革命軍の中での捜査部隊だし、君の探している答えが見つかるかもしれないよ?君にとっても、悪い話じゃないと思うけど!それに、君は今ここで野垂れ死ぬのかい」


「……オレは……」


 ふとレオンが口を開く。


「紅髪、シャルル元王女なら必ずオレが助けてやるから安心しろ。だから今度は力つけて、必ず取り返しに来い」


 2人の活き活きとした顔を見上げ拳を握るナキ。


「……必ず」


 レオンはナキの瞳を見て口角を少し上げる。

 と同時に口元を優しく緩めたロカが口を開いた。


「さぁ、それじゃあ行くよ」

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