第5話 特別監獄(看守長のおもちゃ箱)
「うぅ…」
片目を開けるナキ。
どんよりとした空気。
薄暗いトンネルの壁に均一に張り巡らされた灯。
視界に映る遠くは漆黒に包まれている。
胴を中心にナキの体がリズムよく上下に弾む。
「今日は気分がいいなぁ~。俺様が俺様であることを感じる。この快感~」
ハッハッハ。
(この声は、さっきの眼帯やろうか。)
スリスリ。
ぺチンッ。ぺチンッ。
(尻に振動を感じる。)
スリスリ。
ぺチンッ。ぺチッ。
(あ、オレ担がれてんのか……)
ぺチンッ!!
「って、オレの尻を叩くのをやめろぉおおおお!!」
上下に弾むナキの体のリズムが止まる。
「おっ、起きたか。やっぱ回復早えなぁ~。首の骨がへし折れるほど本気で息の根を止めたんだけどなぁ~」
「離せ、離せよ!!変態野郎!」
「ほらよぉ~」
――ドサッ。
ナキは、地面に乱暴に叩きつけられ、芋虫のような体制へとなる。
――ガシャン。ガシャン。
「クソッ」
ナキの手には手錠がはめられている。
「お前ら、着いたぜ。俺様の特別監獄になぁ~!!」
うずくまるナキは、看守長と奥に見えるもう1人の足元に視線を移した。
(さっきの和服男もいるのか)
シャルル元第3王女の暗殺犯として拘束された和服男。
ナキと同じく手錠をし、驚いた様子で前方を見つめ、近くに突っ立っている。
「なんだよこれ……」
そして、その和服男の言葉に反応するようにナキも立ち上がり振り返った。
「なっ」
目を見開くナキ。
そこには、巨人でも入りそうなくらい巨大な赤い鉄の2枚扉がそびえ立ち……さらには鉄扉の両端には扉以上の大きさのあるピエロの人形が座っていた。
薄気味悪い顔で2人の囚人を出迎えるピエロの人形。
「いいねぇ~。お前らのその顔。たまんねぇわぁ~」
ハッハッハ。
ジーク看守長はてのひらを顔に覆い、首を上げ高らかに笑った。
「おい!眼帯野郎!お前頭おかしいだろ!」
「あぁ、おかしいよ。それがどうしたぁ?」
ジーク看守長はナキを見て、不敵な笑みで返答をした。
和服男は赤い鉄扉の上部に書かれたプレートに視線を移す。
「いい趣味してるな『看守長のおもちゃ箱』ってネーミングセンス」
「だろ?!俺様のネーミングセンスはイカシテルんだぜぇ~」
(褒めてねぇよ……)
和服男は飽きれた様子で額から汗を流し……。
「この鉄扉の奥にはオモチャがあるのか?!!」
(馬鹿かこいつわぁ……)
続いてナキへも飽きれた様子で視線を移した。
「まぁ、行ってみてのお楽しみだ」
「お~~い!開けろ!」
――ガシャン。
――ギギギギギギギギッ。
赤い2枚の鉄扉が大きな音をたて動き出す。
鉄扉の隙間より、少しずつ差し出す光。
――ガッシャン。
その鉄扉が完全に開くのは、あっという間のことだった。
鉄扉の中は光の眩しさで見えない。
「じゃあ、あとは頼んだぜぇ~」(ばぁ~さん)
そうジーク看守長が言った矢先、ナキと和服男は看守長に蹴り飛ばされ、鉄扉の中へと消えていった。
――キュイィイイイン。
――ガッシャン。
2枚の赤い鉄扉が閉まりきる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます