第38話 革命軍が目指すもの
大部屋の中央にいるロカへヴィックが近づく。
「総隊長は少し休んでくれ。後はオレが説明する。それに総隊長も雨月君も傷の手当をしないとな」
「お気遣いありがとう、ヴィック。それじゃ頼むわ」
ロカはカウンターの近くの椅子に腰掛ける。
「リリィ、ロア!2人に手当てしてやれ」
ヴィックが声を上げる。
「へ~い」
リリィは返事をすると椅子から降り、トコトコと歩きカウンター奥の部屋へと救急箱をとりに向かった。
「雨月君もこっちに来て」
「なんか、すみません」
雨月はロアに呼ばれるとロカの隣へと座る。
カウンターに座るシドが雨月に向かって言う。
「もう隊の一人だろ。気にするな」
「はい」
そして、ヴィックが勢いよく口を開く。
「ナキ君、雨月君よく聞けよ!まず、ここは何度も言っているが革命軍支部である特殊捜査部だ。まず革命軍は知っているかな?」
「全然わからないっす!」
ナキは自信満々な様子で、まっすぐに答える。
続いて雨月が返答をした。
「天帝国と敵対関係にあり、世界で起こる数々の事件に関係している組織であることくらいは……」
近くのテーブルの椅子に座るナキとその隣にちょこんと座るコルト。
(ずっと思ってはいたけど、ナキは本当にこの世界のことを何も知らないんだな……)
雨月がふとナキを見る。
「うん。おおよそ雨月君の言った通りだな。まぁ簡単に言うと……はい!そこのコルト君わかるかな?」
「はい!革命軍は、新帝国を作る人たちが集まっているところです!」
「はい、ご名答。コルト君よくできました!」
ヴィックはコルトを見てとろけるような笑みをこぼす。
「はい!」
「まぁ、新帝国建設なんて大層に聞こえるかもしれないが、俺たちは本当にその実現を目指しているんだ。10年前に幕を閉じた戦争によってこの世界の全てが変わってからはな……。だから、今の天帝国が変わらない限り、俺たちは戦い続けることになるだろう」
(10年前に終わった、あの戦争……)
雨月は下を向き暗い表情になる。
「そして、ここで俺たちがやっていることは主に天帝国の特殊な情報の捜査と収集」
コルトがナキの横顔を不思議そうに見つめている。
ナキは凄い真剣な眼差しで唇を噛みしめながらヴィックを睨みつける。
「ナキ兄ちゃん大丈夫?」
「なめんなよ。……コルト、だっけ?」
うん。っと頷くもコルトはナキの顔を見ながら冷や汗を流した。
(ナキ兄ちゃんは何と闘ってるの…)
リリィとロアに手当されている雨月とロカ。
ヴィックは説明を続ける。
「だから、俺たち特殊捜査部隊は、通常の捜査部隊とは違って世界各地に情報網を張って、王都へ潜入捜査をしたり、天帝国に関わる世界の国々を巡ったりなどして、常に極秘裏に情報を集め、取扱っているんだ」
――プシュウ~。
ナキの頭から出る煙。
「父ちゃん!ナキ兄ちゃんが!」
ヴィックの言葉を理解できなかったナキは意識を失い、テーブルに顔を伏せた。
「ナキ兄ちゃん、ナキ兄ちゃん!」
コルトはナキの肩を揺らす。
それを見てヴィックは苦笑いをする。
(そんなに難しい話なんてしていないはずだがな……)
「まぁナキ君は、またコルトと一緒にオレの隊のリリィ先生の授業を受けるといい」
そう言うとヴィックは続けてメンバー1人1人の顔に視線を移し、紹介をし始める。
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