夢のゆりかご~ドラマ編~

月影 夏樹

序章(一章) 日本からアメリカへの帰国

(第一幕 一章)登場人物・用語集・場所説明・アメリカと日本の違い 一覧

               序章(一章)


             『登場人物一覧』


高村たかむら 香澄かすみ……前作・本作の主人公で、ワシントン大学心理学科卒の二三歳。卒業後すぐに臨床心理士の職を目指す予定だったが、個人的な事情により一年ほど日本で自宅療養(親友のマーガレット・ローズと同居)している。だが恩師でもあるハリソン夫妻・親友のジェニファー・ブラウンらの説得により、再度ワシントン大学に戻ることを決意。GPAは三.八と高い数値を記録。

 真面目で勉強熱心な性格で、自宅療養中も勉強をおこたることはない。独学だが薬学を勉強していたことから、臨床心理士へ戻るための準備はいつでも出来ていた推測される。しかし小言癖は相変わらずで、そんな香澄の性格をマーガレットやジェニファーは心配している。趣味は柑橘系のコスメ品集め。


マーガレット・ローズ……香澄とジェニファーの親友で、ワシントン大学で音楽理論を学び終え、無事卒業する。二三歳。愛称はメグ、マギー。

 作中に登場するハリソン夫妻とは子どものころからの知り合いで、“叔父さん、叔母さん”と気さくに話しかけるほどの仲。ジェニファーとは数年前に知り合い、すぐに意気投合して親友となる。

 なお本作では物語冒頭のみの登場となり、『夢のゆりかご』(心理学ドラマ 第二章)シリーズではマーガレットは舞台稽古に励んでいるという設定なので、第二章以降は登場しない。


ジェニファー・ブラウン……香澄・マーガレットの親友。二二歳。ワシントン大学心理学科に在籍する四年生。卒業を数ヶ月後に控えており、進路も決まっている(フローラの助手)。GPAは三.五と香澄ほどではないが、彼女も高い数値を記録している。愛称はジェニー・ジェン。

 身長一五〇cm・小柄な体型・大人しい性格などといった特徴から、高校生に間違えられることもしばしば(香澄が高校生と間違えたほど)。だがまったく流される性格ではなく、自分の考えや意見はしっかり持ち伝えることが出来る。趣味は読書で、年間で数十冊を読むほど本が好き。

 本作『夢のゆりかご』(心理学ドラマ 第二章)シリーズでは、香澄のサポート役(準ヒロイン役)として登場。そのため前作『命の天秤』と比較すると、ジェニファーが活躍する場面も多い。 


ケビン・T・ハリソン……ワシントン大学で外国語(日本語と英語)を教えている教授。四五歳。気さくな性格で、生徒のみならず教職員からの評判も上々。特にワシントン大学に留学している日本人学生向けに、英語を教えることに力を入れている。

 既婚者で、妻は同じ大学に勤めるフローラ・S・ハリソン。香澄・マーガレット・ジェニファーから絶大の信頼を得る、数少ない人物。なお作中で呼び方を区別するために、香澄のことを“カスミ”と明記する。


フローラ・S・ハリソン……ワシントン大学で心理学を教えている教員。四四歳。現役臨床心理士としても活動しており、大学構内では心理カウンセラーの職にも就いている。また多数の著書も出版しており、ワシントン大学校外でも有名。既婚者で、夫はワシントン大学現教授のケビン・T・ハリソン。大の子供好き。

 しかし実際には子宝に恵まれなかったこともあり、養子として向かい入れたトーマスを本当の息子のように可愛がる。溺愛しているといっても良いほどの愛情を注いでいただけに、自分の目の前でトーマスが亡くなったことに、彼女の心に深い傷が残ってしまう。

 そのため現在同居している香澄・マーガレット・ジェニファーの3人を、本当の娘のように可愛がっている。


トーマス・サンフィールド……前作『命の天秤』のもう一人の主人公で、数年間香澄たちと同じ屋根の下で暮らしていた一一歳の少年。幼くして両親を亡くしたことにより、心に深い傷を負ってしまう。好きな食べ物はハムサンド。愛称はトム。

 前作で香澄たちが必死に心のケアを行うが、物語中盤(第二幕)~からトムの精神状態が次第に悪化する。元々は純粋無垢な少年だったが、両親を不慮の事故で亡くしてから、段々と心を病んでいき精神がむしばまれていく。その結果両親の面影を想う気持ちが強くなりすぎてしまい、物語終盤で香澄たちの目の前で自ら命を絶ってしまう。しかし死の間際で本当の気持ちを伝えることが出来たトムの顔は、実に穏やかだった。

 新作『夢のゆりかご~ドラマ編~』でしばしば語られる香澄たちの心の傷の原因は、トーマスの死が深く関係している。またフローラやトーマスの母親ソフィーいわく、“トムは天使のように可愛い”とのこと。

 なお作中ではトーマスの死因について、『極度の精神衰弱・心神喪失によって自分を見失ってしまい、幻想や妄想に取り憑つかれた』と香澄がカルテに記録を残している。


リース・サンフィールド……アメリカ有数の弁護士で、トーマスの父親。数年前の旅行中に、不慮の交通事故でトーマスを一人残して他界してしまう。四三歳。前作『命の天秤』第二幕における、重要人物の一人。


ソフィー・サンフィールド……アメリカの一流企業に務めるOLで、トーマスの母親。三九歳。語学に堪能な女性で、バイリンガル(一人で四つの言語を話すことが出来る人)として活躍していた。だが不慮の交通事故によって、トーマスを残し他界してしまう。

 リース以上に息子トーマスを可愛がっており、トーマスも母ソフィーの胸に抱かれる・頭を撫でてもらうのが大好きだった。前作『命の天秤』第二幕における、重要人物の一人。


              『用語補足説明』


心理学……人間の行動心理について学ぶ学問。心理職としてだけでなく、日常生活においても密接な関係にあることが特徴。


臨床心理士……(臨床)心理学に基づく知識や技術を用いて、クライアント(患者)の心の悩み事を解決する専門家。本作の舞台であるアメリカでは、臨床心理士になるためには、博士号を保有することが必須。


薬学……薬について学ぶ学問。薬剤師になるためには、大学の薬学部に通うことが必須となる。


               『場所説明』


ワシントン大学……アメリカワシントン州シアトルにあり、今作の舞台でもある大学。アメリカ国内でも高い知名度を持つ大学で、数多くの著名人が卒業している歴史を持つ。


ワシントン州……アメリカ西海岸最北部に位置する州。中心都市はシアトルで、一八八九年に四二番目の州としてアメリカに認められた。総人口は約六〇〇万人以上いると言われており、全米第一三位を記録している。

 なお香澄の母国日本と今作の舞台ワシントン州との間における時差は、約一六時間。日本時間の午前六時は、ワシントン州では午後一〇時となる。


シアトル……ワシントン州の中心都市で、太平洋岸北西部の最大規模の都市。世界都市としても知名度が高く、シアトル周辺の人口は五〇万人から六〇万人ほど。日本からシアトルまでの飛行時間は、約一〇時間。

 雨が多い街としても有名で、「Ever Green State」と呼ばれることもある。


シアトル・タコマ空港……ワシントン州 シアトルにある国際空港。日本をはじめ、色んな国へ行き来する際に、利用される国際空港。

 外国からシアトルへ観光や出張などで来国する際に、利用率の高い空港の一つ。


レイクビュー墓地……ワシントン州 シアトルにある墓地。ワシントン州だけでなく、オハイオ州にも同じ名前の墓地がある。

 本作では前作の主人公 トーマス・サンフィールドと彼の両親が眠る場所として、登場する。


           『日本とアメリカの違い』


一 日本では臨床心理士という職業について、心理カウンセラーの延長・薬を処方出来ない心理職というイメージが強い。

 一方でアメリカにおける臨床心理士は、日本以上に社会的地位の高い職業の一つ。心理学の博士号を取得することが必須で、これが保有しないで臨床心理士を名乗ると違法行為となり、法律で罰せられる。

 日本に比べて、アメリカでは臨床心理士の資格を得るには多くの時間を要する。日本では最短七年前後であるが、アメリカでは最短で一〇年(心理学の博士号を取得するための最短年数)ほどかかることが多い。さらにアメリカの州ごとに発行される有効な免許を取得する必要があるなど、日本以上に制約やルールが多い。

 だが多くの制約があることから、アメリカの臨床心理士は社会的地位が高い。平均年収も日本の臨床心理士より数倍以上で、州によっては薬の処方が認められている。

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