★★★ Excellent!!!
一度入ったら出られない牢獄の如きセンスオブワンダーの引力 板野かも
(▼2017年当時のレビュー)
私がそのツイートを見かけたのは幸運な偶然だった。互いをフォローしあったばかりの、どんな作品を書く方なのかもまだ知らない作者が、何気なく「こんな作品を思いついた」と呟いていた内容。僅か100字余りの文面で綴られたそのとんでもない着想に、私の目は釘付けになった。
「何度も爆弾を自作して爆破事件を起こしてるけど、犠牲者の死体を繋ぎ合わせると必ず実際の数よりひとり分多く見つかるし、その死体は第一次世界大戦の軍服を着ていたり原人としか思えない骨格をしているって謎の爆弾魔の話」――。
こんな予告を見せられて、興味を惹かれない者がいるだろうか。
そして、ツイートから2ヶ月足らずで、そのアイデアは現実に作品となって我々の前に現れた。科学では説明のつかない不条理犯罪を起こした囚人達の記録を淡々と綴る、この凄まじい出来のSF短編集となって。
その時代にあるはずのない死体を生み出してしまう爆弾魔。一度も引き金を引かずして同級生を皆殺しにする男。舞台で殺した筈の者達から無罪の嘆願書を送られ続ける魔術師……。数々の不可思議な事件で収監された者達の記録を、本作の語り手であるカウンセラーはひたすら収集しては我々に提示してくる。
本作が凄いのは、読者にさんざん謎を提示した挙句、結局何一つ解明しないことだ。世の中は訳の分からない不条理に満ちているのだと言わんばかりに、囚人達が起…
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