囚人たちはかく語りき

本作には様々な囚人が登場する。一発の銃弾も放たずにクラスメイトに復讐を遂げた男、被写体が生まれた原因を念写できるカメラマン、運転するたびに犯罪者を轢き殺す警察官、殺人罪で収監されたのに被害者たちから無実の訴えが届く奇術師……。
科学的に説明できない事件を起こした犯罪者が収監された刑務所で、一人のカウンセラーは今日も囚人たちと対話を行っていく。

本作で紹介される数々の事件は異常なものばかりで、その原因は犯人である囚人たちですら把握できていない。だが、物語の主眼は事件の真相を解き明かすことではなく、その事件を引き起こした加害者たちの心境を描くことにある。
語り手であるカウンセラーが、自分の意志で罪を犯した者から、謎の現象に巻き込まれたある種の被害者と言える人物まで、犯罪を通して奇妙な世界に踏み混んだ人々の心情を掘り下げていく。

その客観的でストイックな語り口は事件の奇妙さをより引き立てており、とても読みやすい。まるで海外の短編SFドラマを見ているような味わいを楽しめる逸品だ。

(奇妙な事件の物語4選/文=柿崎 憲)

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