それは人の手で裁けぬ者達の物語

 この物語は囚人達の物語だ。
 物語の中では様々な囚人が語られるものの、彼らは人の手では裁ききれぬ罪を抱えて監獄の中に閉じ込められている。
 存在しない被害者。途方もない善意と献身。立証し得ぬ手段。人智を超えた才覚。人間の為の法律では、これらの怪物的犯罪者を、本当の意味で裁くことはできないだろう。だからこそ、彼らのような怪物的犯罪者は今日もまた監獄の中に閉じ込められるしか無いのだ。そうするより他に、処理のしようが無いのだから。
 そう、この物語はいわばそんな怪物達を見学する為の監獄体験ツアーなのかもしれない。
 だけど気をつけて。
 この物語に魅入られる内に、貴方は檻の外へと出られなくなってしまうかもしれないから。

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