Jail Fragment

作者 木古おうみ

371

134人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

完成度の非常に高いクライムミステリー連作短編集。
飄々とした「ぼく」と個性豊かな患者たち、そしてそれらがしでかした理不尽な犯罪群に魅了される作品です。
読後感が爽やかなクライムミステリーという稀有なカテゴリーも魅力の一つ。
ところで出版日はいつでしょうか? カクヨムオンリー?またまた、ご冗談を。

★★★ Excellent!!!

この小説、文庫があったら、自分の本棚に入れます。
収容所に隠された独特の世界観で、一気に読んでしまいました。
短編なのもとてもうれしいです。

本作は、法律でも心理でも解き明かせないミステリーですが、
解き明かすこと自体は、不要です。

収容された人々は、独特の社会性を保ち、多くは文化人的でした。

共通する謎、殺人と殺人に係る不可思議はもう終わった認識のようで、
カウンセリングが取り留めなく進み、表面的には何事も起こりません。
囚人たちの過去と性分と人間らしさと何かしらのこだわり(愛)を垣間見るだけですが、それでいてミステリーが真実を隠しつつ照らすため、複雑な魅力があります。

読後感は、独特な世界観にもかかわらず、さっぱりとした小気味よいです。
それでいて少しずつ関係しあう人々と共通する謎に、深い人間ドラマを感じました。あのあとどうなったんだろう、とか…わたしの想像力やそれでは及びつかないもっと深い世界観で、この世界を(登場人物たちには大変失礼で申し訳ないですが)もっと知りたいと思っています。

★★★ Excellent!!!

一つ何かが違ったら自分もこの囚人達のようだったかもしれない、と思わせられました。彼らの中には自覚がある者もいたけれども大多数は自分のしたことを完全に把握していない。そもそも人間のしでかせる範囲内なのかも怪しい。さらに言うならこれら全て正確な記録じゃない。
これは小説で作り物だとかそういうことは関係なしに、全部が全部嘘なのかもしれない。でも読む手は止められない。もっと早くに出会っていたかったです。
あと何気に先生は何者なのかがどんどん気になっていきます。最初は神経図太いなあこの人くらいにしか思っていなかったのに……どんどん不思議さが増していってとても好きです。ちょこちょこ出てくる898も囚人の中で一番(主観)人間味があって好きです

★★★ Excellent!!!

ゲームの動画などで閲覧した程度なので、SCPには詳しくないですが、興味はとてもあります。
こちらも読んでみましたが、囚人達の能力、他愛もない話に宿る彼らの思惑などから色々推測出来て、とても楽しめましたb 私も書いてみたいと思っていた奇妙で奇天烈な世界観がここに詰まっています!
続きも楽しみにしています。

★★★ Excellent!!!

1話につき1人、十人十色の特徴を持つ奇怪な囚人が登場する掌編集。SCPを意識されているということで、確かに似たような中毒性を感じます。

現実には、おそらくは有り得ない、しかし、世の中のどこかではこんな摩訶不思議な現象が起きているのかもしれない。今までの固定観念や常識の枠をぐにゃりと歪め、想像力を刺激してくれます。現象の展開例に膝を打つことも多く、作者様の発想力の凄さを感じます。

★★★ Excellent!!!

本作には様々な囚人が登場する。一発の銃弾も放たずにクラスメイトに復讐を遂げた男、被写体が生まれた原因を念写できるカメラマン、運転するたびに犯罪者を轢き殺す警察官、殺人罪で収監されたのに被害者たちから無実の訴えが届く奇術師……。
科学的に説明できない事件を起こした犯罪者が収監された刑務所で、一人のカウンセラーは今日も囚人たちと対話を行っていく。

本作で紹介される数々の事件は異常なものばかりで、その原因は犯人である囚人たちですら把握できていない。だが、物語の主眼は事件の真相を解き明かすことではなく、その事件を引き起こした加害者たちの心境を描くことにある。
語り手であるカウンセラーが、自分の意志で罪を犯した者から、謎の現象に巻き込まれたある種の被害者と言える人物まで、犯罪を通して奇妙な世界に踏み混んだ人々の心情を掘り下げていく。

その客観的でストイックな語り口は事件の奇妙さをより引き立てており、とても読みやすい。まるで海外の短編SFドラマを見ているような味わいを楽しめる逸品だ。

(奇妙な事件の物語4選/文=柿崎 憲)

★★★ Excellent!!!

これは囚人たちの正確な記録ではない。

カウンセラーである「ぼく」が淡々と読者の前に示すのは、
科学的には不可能な、しかしなぜか理屈の通った事件の数々。

社会から隔離された囚人たちは不思議に魅力的で人間臭く、
語り手の「ぼく」の透明感と相まって、読み口が心地よい。

2000字に満たないものもある掌編集。
また次のページにどんな囚人が現れるか、楽しみでならない。

★★★ Excellent!!!

狂言回しのカウンセラーこと『ぼく』から見た囚人たちの人間ドラマ。
一話完結型でストーリーも短くまとまっていて、よい心地の読後感を楽しむことができます。
個性豊かな囚人たちや、俯瞰的に物事を捉える『ぼく』。魅力的なキャラクターが多くて、シックなノリもあって面白いです!!
(漫画雑誌でいうところの、小学館のスピリッツやスペリオール的な印象があります)
是非、読んでみてください!
ハマるとじわじわきますw この面白さはwwwww

★★★ Excellent!!!

とても不思議だ。はっきり言って、意味不明。よく分からない。
そんな力を持った囚人たちとカウンセラーの話。

当方、SCPの知識は全くなく、本作のあらすじを読んで軽く調べてみた程度なので、このレビュー自体意味不明なことになっているかと自覚しているが、思わず書きたい欲に駆られました。

囚人は、罪を償うよりも、彼らが持つ力による被害を減らすために収容されている。
囚人が犯罪を犯す、ではなく、囚人がいると被害者が出る。加害者がだれか分からない場合も、被害者が誰なのか分からない場合もある。
とにかく隔離しておこう、という感じです。

その力の発現理由も、力そのものが何であるのかさっぱりで。不気味。
ただその力による結果、それが囚人の個性のようなものに紐付いているようで。
力によって引き起こされる現象も関連性がある。
力そのものが何なのか一切分からないのだが、あぁそうくるか!そういうことか、と。
引き起こされた現象に納得に近いことをするけど、結局のところ何もわからん状態。

多くの囚人らとカウンセラーの会話。
もう、取り敢えず読んでほしい。読めばわかる。
この世界観に、どっぷり引き込まれます。

★★★ Excellent!!!

とらえどころのない不気味さが、すごくいいです。
この世の歯車が少し狂ってしまったような、いわばエラーを隔離する施設。そこにいる人々の声が、一つ一つ拾い上げられます。
まずは一つめのエピソード「オーバーキル」だけでも読んでみて下さい。グッと来る方、けっこういらっしゃるのでは。

★★★ Excellent!!!

私がそのツイートを見かけたのは偶然だった。互いをフォローしあったばかりの、どんな作品を書く方なのかもまだ知らない作者が、何気なく「こんな作品を思いついた」と呟いていた内容。僅か100字余りの文面で綴られたそのとんでもない着想に、私の目は釘付けになった。
「何度も爆弾を自作して爆破事件を起こしてるけど、犠牲者の死体を繋ぎ合わせると必ず実際の数よりひとり分多く見つかるし、その死体は第一次世界大戦の軍服を着ていたり原人としか思えない骨格をしているって謎の爆弾魔の話」――。
こんな予告を見せられて、興味を惹かれない者がいるだろうか。

そして、ツイートから2ヶ月足らずで、そのアイデアは現実に作品となって我々の前に現れた。科学では説明のつかない不条理犯罪を起こした囚人達の記録を淡々と綴る、この凄まじい出来のSF短編集となって。

その時代にあるはずのない死体を生み出してしまう爆弾魔。一度も引き金を引かずして同級生を皆殺しにする男。舞台で殺した筈の者達から無罪の嘆願書を送られ続ける魔術師……。数々の不可思議な事件で収監された者達の記録を、本作の語り手であるカウンセラーはひたすら収集しては我々に提示してくる。
本作が凄いのは、読者にさんざん謎を提示した挙句、結局何一つ解明しないことだ。世の中は訳の分からない不条理に満ちているのだと言わんばかりに、囚人達が起こしたとされる事件の真相は全て放り投げられ、後にはゾクっとした不気味さだけが残る。
「こんなことがあるはずがない。だが現実に事件は起きている。理屈は誰にも分からない」――。囚人達が収監されているのは、犯した罪を立証されたためではなく、何も分からないがとにかく本人を閉じ込めておけば事件は止まるだろうという期待に基づいてのことに過ぎないのだ。もはやそれ自体が一種の不条理事件である。

「SFは理屈が通っていなければならない」などと述べる向… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

文章といい、世界観といいとても引き込まれます。
カウンセラーの「ぼく」自身が、様々な囚人たちと交流し、
彼らの思いや過去を知っていきます。
しかしながら、「ぼく」自身もどこか不思議な空気を漂わせているのです。
つかみどころがなく、異様で異質(もちろん良い意味で)な、
理由のわからない不気味さや不安感をそそられるとても面白い作品です。

★★★ Excellent!!!

不可解な、超常現象と言っても過言ではないような殺人事件を起こした囚人たちの記録。
断片的に語られる彼らの話を、分析する訳でも、解決する訳でもないカウンセラー。
その「正式ではない記録」に残されるのは、得体の知れない怪物というよりも、得体の知れない現象と共存している人間の姿です。

一話一話が短いオムニバス形式のお話ですが、どのエピソードも非常に興味深く、読み応えがあります。
淡々とした語り口ながらも時折さらりと冗談を交える主人公が、危ういバランスの中に生きる囚人たちを、ギリギリのところで正気に繫ぎ止めている楔の役割を果たしているように感じました。

一度入り込んだら抜け出せなくなりそうな、不可解な事件の「原因を隔離しておく場所」。あなたも彼の手を取って、少し覗いてみませんか。

★★★ Excellent!!!

 この物語は囚人達の物語だ。
 物語の中では様々な囚人が語られるものの、彼らは人の手では裁ききれぬ罪を抱えて監獄の中に閉じ込められている。
 存在しない被害者。途方もない善意と献身。立証し得ぬ手段。人智を超えた才覚。人間の為の法律では、これらの怪物的犯罪者を、本当の意味で裁くことはできないだろう。だからこそ、彼らのような怪物的犯罪者は今日もまた監獄の中に閉じ込められるしか無いのだ。そうするより他に、処理のしようが無いのだから。
 そう、この物語はいわばそんな怪物達を見学する為の監獄体験ツアーなのかもしれない。
 だけど気をつけて。
 この物語に魅入られる内に、貴方は檻の外へと出られなくなってしまうかもしれないから。

★★★ Excellent!!!

 異常犯罪者を収監する刑務所を舞台に、囚人と話すカウンセラーを主人公にしたオムニバス。登場人物たちは基本的におとなしく監獄で過ごしており、淡々とした様がかえってリアリティがある。
 この異常犯罪者の「異常さ」が本作の読みどころで、彼らはそれぞれ変わった能力を持っていたり、どういう原理か原因も分からない不可解な現象を引き起こす。それは異能と言うより、怪奇現象のそれに近い。
 現在、最新七話まで読みましたが、自分はパパラッチの話が特に好きです。彼女の能力自体も面白いのだけれど、その「弱点」とそれが引き起こした出来事が実にドラマチック。それぞれの話のアイデアだけで、もっと長い小説がいくつも書けてしまいそう。
 どの話も短くて読みやすく、それでいて詰め込まれた内容はぐっと刺激が効いているので、読む時間に対して大変おトク! 一応各話は時系列などのゆるやかなつながりがありますが、多分どこから読んでもあまり問題ないのではないかと思います。
 気になったタイトルから開いてみてください、きっとそこには、少し不思議な、そして人生の悲哀もこもった奇妙な世界が広がっているはずです。

★★★ Excellent!!!

 本作は「刑務所のカウンセラーと囚人の面談」という形で進む。基本的に登場人物は毎回、その話の主人公である囚人とカウンセラーだけだ。そして…この囚人達が毎回、どこかおかしい。ようするに「科学では解明できぬなにか」を秘めた存在なのだ。その上で、声を荒げて叫んだり、物騒な単語や罵詈雑言を喚き散らしたりはしない。ただ淡々と服役中である。そして、皆が残虐犯なのだが…その犯罪や行動の一部が、めくるめくミステリアスなのである。とてもウィットに富んだ、それでいて気持ちのいいもやもやかんばかり残してくれる短編連作…オススメです!