罪と謎を隔離する監獄で、「ぼく」は物語に耳を傾ける。

 異常犯罪者を収監する刑務所を舞台に、囚人と話すカウンセラーを主人公にしたオムニバス。登場人物たちは基本的におとなしく監獄で過ごしており、淡々とした様がかえってリアリティがある。
 この異常犯罪者の「異常さ」が本作の読みどころで、彼らはそれぞれ変わった能力を持っていたり、どういう原理か原因も分からない不可解な現象を引き起こす。それは異能と言うより、怪奇現象のそれに近い。
 現在、最新七話まで読みましたが、自分はパパラッチの話が特に好きです。彼女の能力自体も面白いのだけれど、その「弱点」とそれが引き起こした出来事が実にドラマチック。それぞれの話のアイデアだけで、もっと長い小説がいくつも書けてしまいそう。
 どの話も短くて読みやすく、それでいて詰め込まれた内容はぐっと刺激が効いているので、読む時間に対して大変おトク! 一応各話は時系列などのゆるやかなつながりがありますが、多分どこから読んでもあまり問題ないのではないかと思います。
 気になったタイトルから開いてみてください、きっとそこには、少し不思議な、そして人生の悲哀もこもった奇妙な世界が広がっているはずです。

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