モキュメンタリーは「偽物」を意味するmock(モック)と「実録」を意味するdocumentary(ドキュメンタリー)を組み合わせた造語ですが、この作品はモック部分のクオリティが半端ないです。
「念力電話」という微妙にダサいネーミングの、数十年前の小学生たちの間で流行った不思議な遊び。それは本当に心霊現象を引き起こしたのか、誰が始めたのか、徹頭徹尾分からないまま。
しかし、それを語る筆致はとことん端正で、フィールドワークの調査書を読んでいるような気にさせられます。この「させられる」部分が半端なくて、カクヨムだからフィクションなんだろうなあと思うんですが、個人サイトでこんなの公開されたらちょっと信じちゃいますよ!
その上で、最後にフィクションですと断りを入れるのに誠実さを感じました。この作者、ただ者でない……アカデミックな背景をお持ちか、でなければ文体模写の技術があるのでしょう。
わりと短い作品なので「よく出来た存在しない調査報告書」を読みたい方にはうってつけです。猫も杓子もモキュメンタリー時代ですが、裾野が広がるとこのような光る作品が出て来るので、やはり間口が広がるのは良いものですね~。