中学2年生の男子、阿笠紫(あがさ むらさき)は、昼休みの教室で消しゴムを拾う。それも彼の名前が刻まれた――恋を成就させるおまじないを施された代物をだ。果たして彼は決意した。おまじないは誰かにバレた瞬間効力を失う。速やかに持ち主を特定し、彼女が紛失に気づかない内にこっそりこれを返すのだ!
なにを見ていただきたいかって、それはもう紫くんが発揮する妄想力込みの推理力ですよ。鋭いというか恐い! でも、「彼女ができるかもしれない!」を鼻先にぶらさげられた思春期男子はすごい力を発揮しますからね。ディフォルメされているはずなのにこの生々しさ、キャラクターとしての完成度の高さが本当に半端ありません。
そうして彼は目星をつけた“容疑者”へ当たっていくわけですが、「ときどき天才になる」と友人間で評判な紫くんのロジック、その冴えは推理物の醍醐味そのものと言えましょう。たとえ原動力が女子に告白されたい欲だとしても!
あなたもぜひ紫くんといっしょに推理してみてくださいねー!
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=高橋剛)