クールでインテリな闇仕事請負人である主人公の今回の仕事は、陽気な生首を保管し、日々指定されるミッションをこなしつつ三十日後に港へ届けること……
舞台はどこかの町。何の変哲もないように見えながら、どこまでもつきまとう陰鬱で陰惨な気配。
おそらくは怪異に対して独特の嗅覚があってこれまでに困難を乗り切ってきたであろう主人公。そしてなにか事情があって生首にされた玉舎(たまや)と名告る青年(の生首)。
指定されるミッションさなかに起こる&起こりそうになる怪異の兆候を捉えるのに機敏で、きわどいところで逃げのびる。
この起こる&起こりそうになる怪異、実際に起こる怪異は当然のことながら、兆候といえどなかなか怖い。
当たり前の光景のなかに不意に差し挟まれる違和感。
無視しようと思えばできないことはないけれども、よく考えると奇妙な事物。
このあたりの描写は職人芸です。
そして忍び寄るさまざまな怪異をやり過ごし、撃退して辿り着いた「港」は……
青春と友情の不思議な開放感。後味が良い作品です。