彷徨う彼女のゆく道はやがて
霧谷進
序章 一人歩きを止めたのは
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テストの順位が発表されるたびにその名前が掲載される。
中間、期末テストから大学受験を念頭に置いた模擬試験といったものまで。テストの結果が廊下の掲示板に張り出される。それらの順位はテストが行われた数だけ当然変わるのだが、彼女の名前は入学した当初から絶えず一位を独占し続けていた。学業を本意とする生徒の中で知らない者はいないだろう。
成績という点において、彼女は追いかける目標であり、越えられない壁でもあった。
関心の有無に関わらず彼女の顔は校内に知れ渡っている。
入学式の新入生代表の挨拶に始まり、表彰式などで壇上に立つ機会も多かった。幼い頃から稽古や習い事に専念し、体育祭の時には部活動に準じる者にも劣らない結果を示している。
文武双方に優れているものだから、学年を問わず彼女の名前は頻繁に話題となっていた。
男子生徒の間では、校内一の美少女であると認知されている。
新たに入学した一年生も、一学期の半ばには二年生の彼女の名を知っていた。落ち着きのない集会であっても、彼女が壇上に立つと雑音は消える。相貌や容姿もさることながら、その立ち振る舞いには隙がない。一挙手一投足から滲む品の良さが彼女の魅力を引き上げている。
後輩にとって、彼女ほど目立つ先輩は他にいなかった。
女子生徒の間では、近寄りがたい氷のような存在だと揶揄されていた。
勉学に優れ、スポーツに長け、男子からの人気も厚い。ただでさえ皆から羨まれているにも関わらず、彼女はそれを自慢することも謙遜することもなかった。常に淡々とした振る舞いを見せる。クラスメイトから何を言われても揺るがない態度は、好感よりも不信感を募らせた。
どの男子からの告白も断り続けたことが、彼女を遠ざける要因となった。
それは冬のある日。
学力テストの結果が明かされる日だった。
掲示板の前には我先にと訪れていた生徒が十数人。彼らは一様に戸惑いを感じていた。
誰もが疑っていなかった。
一位は不動のままであると。校内一の有名人の名前がそこにはあるのだと。
――しかし、彼女の名前はどこにも記載されていなかった。
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