蛮勇ジェネレーションズFINALE

防衛装騎兵ハバキリ

第1話 平成最後のカクヨムヒーロー











 ――「平成」を越えた先に待つ、「新時代」を生きる全てのカクヨムヒーローに。


 この物語を、捧ぐ。











 ◇


 「超人計画ニュートラルプロジェクト」。


 人間の手で超人ニュータントに屈せぬ力を実現し、ニュートラルから人類の誇りを取り戻す。そのために日本政府が始めたこの計画は、既に6人もの戦士を世に送り出していた。


 ――神装刑事しんそうけいじジャスティス、神威了かむいりょう


 ――キュアセイダー2号にごう橋野架はしのかける


 ――キュアセイダー3号さんごう狗殿兵汰くてんへいた


 ――レイボーグ-GMジム、アーヴィング・Jジンドウ竜斗リュウト


 ――生裁戦甲せいさいせんこうセイントカイダー、炎馬勇呀ほむらばゆうが


 ――天翔緋甲てんしょうひこうラーベマン、桜田寛矢さくらだひろや


 そして、今。「7人目」となる男の物語が――動き出そうとしていた。


 キュアセイダーの白血弾。レイボーグの装甲強度。セイントカイダーの変形機構。そして、「ただの人間」の身体。

 それら全てを兼ね備えた、鋼の防人さきもり。「超人計画」が目指した「強き人類」の先駆けとなる、その男の名は――。


 ◇


「あの子が?」

「はい……きっと、もう限界なはずなんです!」


 校長室の入口から、そんな話し声が聞こえよがしなまでに俺の耳に入ってくる。

 そこの奥から俺のいる廊下まで響いて来るのは、落ち着いた大人の女性と、切迫した様子でいる「彼女」の声。


 誰が何の話をしているのかは、考えるまでもなかった。


「確かに、彼はここ最近疲労が堪っている感じではあったけど……まさか、そこまでだったとはね」

「これ以上、あの人に負担を掛けたくない! あの人を、助けたいんです! なのにっ……」


 やがて俺の聴覚が捉えたのは――彼女の涙ぐむ声だった。どうにかしたくても、どうにもならない。

 そんな彼女の理不尽な現状への嘆きが、沈痛な涙声となって俺の耳に突き刺さる。


「あの人はいつも笑って『大丈夫だ』とか『心配しないで』って言うばかりで……自分の体のことなんて、ちっとも考えなくて……!」

「彼のコンディションに悪影響があるのは見過ごせないわね。かと言って、彼の性格を考えたらぶっ倒れるまで仕事してそうだし……」

「な、なんとかならないんですか!?」


 今度は縋り付くような声。切実に、助けを求めているような声色だ。


「本来なら、体調のことを考えて休ませてあげたいところなんだけど、最近はこの近辺も物騒になってきてるらしいからね。休養を与えるどころか、実戦に遭遇する可能性もないとは言えないタイミングなのよ」

「そんな――! あんまりですっ! 鐡平てっぺい君が死んじゃいますっ!」


 耳栓が欲しくなるような悲鳴を上げて、彼女は必死に抗議する。

 そんなことを言ったところで、無駄なのはわかっているだろうに。


「……ええ、そうね。あんまりなのはわかってるし、このまま放っておくつもりもないわ。私が本人に話を付けてあげるから、あなたはしっかり自分の仕事に集中して」

「ホ、ホントですか? 校長先生!」

「任せなさい。これでも、私はセイントカイダーの元設計者兼管理者なのよ? 『現役』の管理に役立ちもしないで、校長ヅラしてられないわ」


 諭すような口調で、現校長の達城朝香は半泣きになっている彼女――駒門美鳥こまかどみどりを説得する。

 美鳥は校長先生の言葉を信じたのか、「はい!」と元気に答えていた。


 彼女の足音が耳に入る瞬間、俺は辺りを見渡して、校長室の入口から速やかに立ち去った。このまま突っ立っていては、彼女と鉢合わせしてしまう。

 そうなれば、余計に話がこじれてしまっていただろう。


 それにしても……ここまで美鳥の信頼を欠いているとは思わなかった。

 以前、パトロールから帰った後に、彼女に校舎の裏で仮眠を取っているところを見られたのが拙かったようだ。


 確かにハードスケジュールな点はあるかも知れないが、あそこまで心配されるようなことはない。

 心配性だな、あの娘は。


 ――それに。仮にそれくらい俺が疲弊してるのだとしても、助けを借りようとは思わないわけだが。


 この俺――生徒会書記・不破鐡平ふわてっぺいは。

 防衛省から対ヴィラン防衛機甲装置「ハバキリ」を預かる者として、強く在り続けなくてはならないのだから。

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