番外編 ネクスト・ジェネレーション! 〜そして時代は流れゆく〜


 ――それが、15年前の出来事であり。


 未だ平和に至らぬこの世界を、「新世代ニュージェネレーション」のヒーロー達が今日も守り続けていた。


『さぁ、こちらは後楽園の東京ドームです! 今年もやって参りました、次代を担う若獅子達の祭典――全国高等学校ヒーロー競技大会!』


 そしてこの日は、次代のヒーロー達の技と力を競う祭典が催されている。その名も、「全国高等学校ヒーロー競技大会」。

 ヒーロー科を有する全ての高等学校から代表となるヒーローを選抜し、若人達が頂点を競う場なのだ。約15年前に学生のヒーロー・・・・・・・が登場するようになって以来、教育機関にはヒーロー養成課程が組み込まれることになっている。


「院長、始まりましたね。確か、お知り合いの御子息が参加されているとか」

「……えぇ。期待のルーキーですよ」


 その新時代に生きる、「後輩達」の姿を。沢山・・の子宝に恵まれている、城北大学付属病院の若き院長――橋野架は。

 共に患者のために戦う同志ドクター達と共に、テレビの向こう側から見守っていた。


「おっ、始まったなぁ。……おや、兵ちゃん。見ていかねぇのかい?」

「……さっき『上司』から、面倒な仕事を入れられちまってなぁ。帰りにまた寄るぜ、マスター」

「あいよ。気をつけて行ってきな」


 一方。薄暗い馴染みのバーで飲んでいた、ヴィラン対策室所属の特務捜査官――狗殿兵汰は。

 カウンターのテレビに映る「後輩達」を、肩越しに一瞥すると――長い付き合い・・・・・・の「上司」から命じられた仕事にため息をつきながら、老境のマスターに見送られ、店を後にする。

 そして、東京最強の「超人掃除屋ニュータント・スイーパー」と恐れられている彼は――今日も翡翠の重鎧を纏い、街に巣食う悪党を屠るのだ。


「竜斗、ほらほら! 赤星さんとこの龍海君、テレビ出てるよ!」

「パパー、こっちこっち!」

「はやくー!」

「……そうだね。でも皆、今は仕事中だから――」

「固いこと言わないの! ほらこっち座って、一緒に見よっ!」

「あ、あの〜……注文……」


 その頃、海外に渡った育ての親に代わり。

 小柄で活発な妻や沢山・・の子供達と、「喫茶アトリ」を営むアーヴィング・J・竜斗も。緑に囲まれたカフェから、「彼」の勇姿を見届けていた。

 ――彼ら家族の後ろでは、注文待ちの客が寂れた風に吹かれている。


「おっ、始まったわね。……勇呀! デーモンブリードのせがれが映ってるよ!」

「分かってるよ、ちょっと待ってな! ――オラァッ!」


 同時刻。ベテランヒーローとして名を馳せる、炎馬勇呀も。

 街で悪事を働くヴィラン達を蹴散らしながら、相棒の「ラーカッサ」こと狩谷鋭美と共に、街頭ビジョンを見上げていた。

 かつて自身が使っていた「セイントカイダー」のスーツを栄響学園に返却した彼は、桜田製装甲マッスルスーツ第0号「PROTOプロト-KAIDERカイダー」を身に纏い。全身グレーの生裁重装ヘビーメイルズ――のような外観の無骨なヒーローとして、灰色の大剣を振るい続けている。


「空港長、そろそろ例の……」

「……あぁ、分かっている」


 羽田空港の新空港長に就任して間もない、桜田寛矢も。空の安全を担う重役として働く中で、「新世代」の誕生を感じていた。


 ――そして。


「……始まる頃か」


 今から約20年前。ヴィラン組織「吸血夜会きゅうけつやかい」によって滅ぼされた、とある村の跡地であるという、人里離れた山奥で。無数に並ぶ地蔵の前に立つ1人の男が、静かに掌を合わせていた。

 数多くの徽章を胸に付け、筋骨逞しい肉体を制服の下に隠す、その男――陸上自衛隊一等陸佐・不破鐡平は。瞼を開き、森の隙間から差し込む光と、青空を仰ぐ。


 競技大会を見守っている、歴代の先人ヒューマン・ヒーロー達と同様に――その貌は、年齢を感じさせない程の若々しさを保っていた。


「……また来年、ここに来る。じゃあな、皆」


 祈りなら、もう終わっている。ならば、いつまでもここに留まるわけにはいかない。


 それ故に彼は、名残惜しげに地蔵達を見下ろしながらも――踵を返して、この辺境から立ち去って行く。

 そろそろ東京ドームでは、ヒーロー競技大会が始まっているはず。国の平和を預かる自衛官として、彼らの活躍を見逃すことはできないのだ。


「……さて。『彼』だけは、一目見ておかなくてはな」


 かつて自分を救った先達レジェンド――デーモンブリード。その後継者たる、次代の皇子が現れたというのだから。





























-To be continued Dragon Breed-

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