第6章 万丈目 数正
6-1 夏休み
夏真っ盛りの夏休み。太陽が
救人部の五人(知紅、恋含む)と忍、いろり、倒也は早乙女家の所有する島に来ている。
「海ですーっ!」
「海だー!」
「うみー」
水着姿の愛、空、いろりの三人が
「無人島を買い取って、早乙女家の別荘に改造しましたから、わたくしたちと早乙女家の使用人以外は誰もいませんわ。周りを気にせず存分に楽しんで下さいまし」
「あたしは魚介類を
「わたくしも行ってきますわね! お兄様はどうなされますか?」
「いつも通り本を読みながら、ゆっくりしているよ」
倒也はすでに用意されていたビーチパラソルの下の椅子に歩いていく。そばにあるテーブル上にはトロピカルドリンクが置かれている。
恋は使用人が持ってきた装備一式を身に着けると、知紅同様海に飛び込んでいった。相吾は
「……俺もやってみたいけど、先に知紅と恋に狩り尽くされそうだな」
いろりが忍の手を引く。
「ほむらしのぶ」
「おう、何するいろり?」
「おしろつくる」
「おし、じゃあお前が入れるくらいにでかいやつ作るか!」
いろりと忍は砂の城を作りにいった。
「では相吾くん、空くん、透き通った綺麗な海ですし、まずは泳いで探検しに行きましょうっ!」
使用人からシュノーケルを受け取ると、三人は海に潜っていった。
倒也は読んでいた文庫本に栞を挟むと、テーブルの上に置いた。
「少し散歩に出てくるよ」
「かしこまりました。倒也坊ちゃん」
「ぼくはもう早乙女家の者じゃないから、倒也坊ちゃんはやめて欲しいな」
「失礼しました。
手渡された黒い日傘を開くと、倒也は林の中を進んでいった。
「おや?」
しばらく
「古い文字だね。〝ここに眠るのは――〟」
『貴様は……白虎か』
石碑から声が聞こえる。直接脳内へ語りかけられているような感覚だ。目を丸くして驚きつつも、何らかの過去異能だとあたりをつけて会話に応じる。
「いや、ぼくの家系は青龍だよ。ぼくに青龍の才能はないけどね」
『ならば合っている……青龍と白虎は……二つで一つ。貴様には……白虎のみ。我輩が……
「えっ?」
倒也の
「大量ですわね、お姉様っ!」
「あぁ。腹も減ってきたし、さっそく調理してもらうか」
様々な魚介類が詰め込まれた網を持つ二人は浜辺に上がると、遠方で泳いでいる愛たちに向けて手を振った。近くで砂のお城を作っていた忍といろりにも声をかける。
魚介類を受け取った使用人たちがてきぱきと作業をしていく中、恋は辺りをきょろきょろと見回した。
「お兄様の姿が見当たりませんわね」
「倒也坊ちゃんはただいま散歩に出かけております。しかし戻られるのが
「いえ、わたくしたちで探した方が早いと思いますわ」
「どうしたのですかっ?」
到着した愛、相吾、空に事情を説明すると、まだお城を作っている最中の忍といろりにも同じことを伝える。
「いろりならわかるんじゃねえか?」
忍が
「この日傘、お兄様のですわ」
「ここにいる」
「案内してもらってもよろしくて?」
「わかった」
恋が使用人に食事を後回しにしてもらうように伝えると、
「ここ」
そこには映像の通りに黒い日傘が落ちていた。恋はその日傘を拾い上げると、その下に隠れているものを見つける。
「石碑……? もしかして、この中にお兄様が――」
恋がその石碑に触れた瞬間。周囲の空間が
とっさにいろりを抱えて木の上に飛び移った知紅はしばらくその光景を眺めていたが、すぐさま気を取り直すと抱えているいろりに聞いた。
「おい、何だ今の。過去異能か? あいつらはどこに行った」
「過去異能じゃない。れいてきなちから。あのせきひがほゆうするれいかいにつれていかれた」
「霊界? あいつら死んだのか?」
「あっちでころされればしぬ」
「ちっ。あたしは行くが、いろりはどうする」
「まってる」
知紅は木から飛び降りるといろりを遠くに運ぶ。霊界についての説明を一通り聞き終えると、石碑に触れて霊界へと向かった。
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