5-5 お姉様
景色を
「どうだい。似合うかな、恋?」
「ええ。とってもよくお似合いですわっ!」
手を合わせて、恋は笑顔を咲かせる。もう二度と戻らないと思った景色が、そこにはあった。
「海が見えるね。
「もう! それはわたくしが先に言おうとしたのに! わたくしも、お兄様とまた一緒に過ごせて、とっても幸せですわっ! いえ、これからはもっともっと幸せになりましょうっ! 早乙女家を出た今、わたくしたちはいくらでも一緒にいられるのですから!」
「ううん。駄目だよ。恋は、早乙女家に戻るんだ」
「そんな……! お兄様のいない早乙女家になんて戻りたくありませんわっ!」
「あの扉を出せる女の子が、恋とぼくの部屋をつなぐ扉を設置してくれると言っていたよ。だから離れ離れにはならない。いつもと同じ時間に、紅茶とお菓子を用意して待っているよ。恋は、ぼくが誇れるような立派な妹になって帰って来てくれるんだろう?」
「お兄様……」
恋は
「そうですわよね……。でも今更、早乙女家に戻ってもお母様は許してくれるでしょうか……」
「大丈夫。お母様は恋のことを愛しているからね。きっと今も、家を飛び出した恋のことで心を痛めているよ」
「……わかりましたわ。でももう少しだけ。お兄様とのティータイムを続けてもよろしいですか?」
「まったく、恋は甘えん坊なんだから。でもそんな妹を持って、ぼくは世界で一番幸せな兄だよ」
「まあ、お兄様ったら。わたくしも、世界で一番幸せな妹ですわよっ!」
久しぶりに二人きりで過ごす安らかなティータイムの時間は、ゆるやかに流れていった。
◇◇◇
朝のホームルームの時間。
「早乙女恋と申します。わたくしがこの学校に転校してきたのはお姉様――更科知紅さんと結婚するためですわ!」
「「ぇえええええええーっ!?」」
生徒たちは声を
「……」
知紅は
「お姉様ー!」
休み時間を迎えた
「お姉様、わたくし転校して参りました! これで毎日一緒に過ごせますわねっ!」
「テメェ……兄貴が好きなんじゃなかったのかよ」
「お兄様は血の繋がった
「女同士はいいのかよ」
「ips細胞がありますし、最強の武道家の娘と結婚して子供をつくれるならと、お母様も納得してくださいましたわ。これで早乙女家も
「おいやめろふざけんなレズ女っ!! あたしにまとわりつくんじゃねぇっ!!」
「ああっ、どこに行かれるのですかお姉様っ!」
「あたしはテメェのお姉様じゃねぇええぇええええええ!!!!!」
知紅が全力疾走で廊下を駆け抜けると、恋も同じように全力疾走で駆けて行く。二階の窓から飛び降りて校庭に着地すると、恋も同じように着地する。二人はぐるぐると学校の周りで追いかけっこを始めた。
一年生の教室でそれを眺めている相吾が
「……愛は参加しなくていいのか?」
「私はあそこまで本気じゃないので……」
「そうか。安心した」
「安心っ?」
「何でもねえ」
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