第4章 更科 知紅
4-1 最強の武道家
彼女――
対面に座る
そんなかつての幻影が、あらわれてはすぐに消えた。
一人ぼっちの彼女は目を伏せると、赤い髪を揺らして再び窓の外を見つめる。
右手を外からの日差しにかざして透かすとぽつりと
「手が赤い」
その右手はまるで血に
◇◇◇
〝最強の武道家
彼女は一言二言、当たり
放課後の教室。愛と空が相吾の机に集まってくる。
「相吾くん、空くん、知紅さんを救人部に勧誘しに行きましょうっ!」
「いや、知紅の勧誘は無理だろ」
「二人とも更科知紅さんとは
「強くなることしか興味がねえ
「両親の仲がいいので会う機会は多かったですし、何度か
「最強の武道家の娘っていう特別な立場だし、気難しい方なのかな」
三人が更科知紅について話していると、教室内の生徒たちがざわめいた。視線を追ってみると、
「よぉ。久しぶりだな、愛」
「あれ? 知紅さんの方から来てくれたのですっ! お久しぶりですっ!」
「こいつらは友達か?」
「はいっ! こっちが
「……真壁相吾?」
知紅は相吾の顔と髪を見る。
「相吾じゃねぇか。何だよその髪」
「……染めたんだよ。不良だからな」
「ふぅん。……ま、才能ねぇ奴が無理に武道を続ける必要はねぇよ」
「ちなみに三人で『
「入らねぇよ。……つうか、依頼に来た」
「え……依頼ですかっ?」
「あたしの話を聞いてくれねぇか」
その姿は、二人が知る更科知紅とは別人のように感じた。昔と同じように微笑んだりはしていない。しかしそれは笑わない、というより笑えない、といった表情だ。
三人は顔を見合わせると、知紅を救人部室に案内した。
▼▼▼
知ってると思うが、あたしの親父、
生まれ持った才能に加え、学ぶのが更科流の武術だったから、更科の血が流れるあたしはみるみるうちに
高校に上がってからは、あたしに敵はいなくなった。同年代はもちろん、更科流道場にいる大人の
恨みを持たれなかったかって? 持たれなかったさ。なぜならあたしは更科知久の娘だからだ。
でもな。そんなあたしでも親父には勝てないんだ。いや勝てる勝てないの問題じゃない、〝見えない〟んだ。物理的にも概念的にもな。〝極真〟の全てを動体視力の向上に
戦う前から勝ち負けがわかってる。あたしは絶望した。このまま修行を続ければ、いずれ更科知久以外の全ての武道家に勝つだろう。世界で二番目に強い武道家になれるだろう。でも一番にはなれない。一番になりたい。親父を倒したい。
いつのまにか目的が、自分を成長させることから親父を倒すことになっていたあたしが手を出したのは――〝
▲▲▲
「殺気……ってまさか〝
「外道家……? って、何だったっけか」
「外道家というのは、道を踏み外した武道家を指す言葉。具体的に言うと〝殺気〟を使う武道家なんだ」
「普通の武道家とどう違うんだ」
「気には〝
「ああ」
「次に〝殺気〟。これを扱えるのは武術を極めた達人だけ。〝正気〟を全て使い切ると、一時的に武術を使えなくなる。気の
「……は?」
「もういいだろ。あとはあたしが話す」
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