第2章 天枝 空
2-1 空の拳
数日後。朝の教室で、生徒たちは配られたプリントを
「部活か……」
相吾は
(俺は何やっても
◇◇◇
昼休みの教室。昼食を食べ終えた生徒たちはそれぞれ思い思いの時間を過ごしている。
この時間はいつも多くの友達を連れて校庭か体育館でドッジボール、バレーボール、バスケットボール、サッカー、ソフトボールといった多種多様な球技スポーツに
そして突然、立ち上がったと思いきや、金髪の不良の元へ駆けてきた。
「なければ作ればいいじゃないですかっ!」
ばんっ! と両手で机を叩いて相吾に訴えかけた。
「……部活をか?」
「この学校には人助けの部活がありませんっ! なので私たちで人助けの部活を作りましょうっ!」
愛は元気に
「人助けは部活にしなくてもよくねえか……?」
「人助けは一人でもできますが、一人ではできないことも多くあります! 先日のこともそうでした! だったら、
左手を腰に
「……まあ、お前となら悪くねえかもな」
「よーし、決まりなのですっ! まずは部員集めからですよー!」
おーっ! と二人で拳を振り上げたあと、愛が差し出した拳に相吾は拳を打ち合わせた。
◇◇◇
放課後の教室。
「一人も集まりませんでした……」
「わざわざ人助けの部活に入る物好きはいねえよ。……俺はお前がいるから入るけどな」
(まあ部活内容はともかく、俺みたいに愛がいるからって理由で入部するやつが0だとは思わなかったが)
自分が原因だとは
「せめてあと一人、部員が確保できれば『
しょんぼりと
「まだまだ申請の締め切り日は先ですっ! 諦めませんよ私はっ!」
少女は瞳に火を
◇◇◇
次の日の放課後。部活勧誘のポスターづくりのために、具体的な活動内容を決めてアピールしようと、学校近辺の探索を
人通りの多い表通りだけでなく、ゴミが放置されているような裏路地も二人は探索している。
「人助けだけでなく、こういったゴミ拾いも活動内容に含めるべきですねっ!」
いったん学校に戻って軍手とゴミ袋と掃除用具を借りてきた二人は、裏路地の清掃を
「まあ、掃除も人助けの一種だしな」
「今の音は何ですかね? 行ってみましょうっ!」
掃除用具とゴミの詰まった袋を
それは他校の生徒たちの
三人の少年たちは
「私の〈愛の拳〉と同じ……!?」
思わずそう言葉を
「確か、〝
「はい。私は過去と名前を重ね合わせて〈愛の拳〉と名付けました」
そう話している間も、拳を振るうことを止めない少年に愛は声をかけた。
「そこにいる人、もう喧嘩はやめて下さいっ! あの三人にはもう戦う意思がありませんよっ!」
話しかけられた少年は、振り向きざまに愛めがけて裏拳を放つ。
「うぅっ!?」
ぱぁん、と
「てめえ!!」
「っ!? 相吾くん
「がっ――」
今度は立て続けに二回、相吾の顔と胸付近で破裂音が鳴ると、両足が地から離れ、大きく吹き飛ばされた。
地を転がる相吾は膝をつくと、
(身体に加わった見えない圧力――)
「空気の拳か!」
少年は、その言葉を聞いて嬉しそうに拍手をした。
「ご
すでに、やられていた三人の少年たちはフェンスを乗り越えて逃げてしまったため、空に近づく必要性はなくなっていた。愛はそのままの距離で会話に
「……もしかして、過去異能が
「過去異能……過去から宿る異能……なるほどね。確かに僕でもそう
「あのっ!」
「ああ、ごめんごめん。聞いているよ。なにぶん、僕は考えることが大好きだからね。そうだよ、僕のこの〈空の拳〉は
同じく過去異能を持つ少女へと、空は微笑みながら提案をした。
「じゃあ、始めようか。喧嘩の続きを」
「喧嘩の続きって……それよりもっ! どうしてさっきの人達を攻撃し続けていたのですかっ! 喧嘩にしてもやりすぎなのですっ!」
「喧嘩というのは言葉の
「
「……ああ、わかった」
相吾は空と名乗った少年を見る。本当にただ知識を得るのが楽しくてしょうがない様子だ。過去異能力者でもない自分が出る
「とりあえず実験には付き合ってあげますけど……あなたのことが許せないので、本気で殴りにいきますからねっ!」
「うん、その方がいい実験になるからお願いするよ。じゃあ始めようか」
空は大きく拳を振りかぶると、愛の顔めがけて振るった。
「〈空の拳〉!」
「っ!」
ぱぁん、と再び
「〈愛の拳〉は近距離でしか使えないのかな? それなら、僕の
「ふふん、残念ですね。もう見切りましたよ。もう一度撃ってみて下さい」
そして次に放たれた〈空の拳〉を、愛は避けてみせた。
「空気の拳だから見えない所がやっかいですが、どうやら同じ速度を
そういって少女は
「……? なにをし――うあっ!?」
ぱぁん、と大きな破裂音と共に愛の
「大丈夫か?」
「はい……受け止めてくれてありがとうございますっ!」
「まったく。助けたら実験にならないじゃないか」
「何だと、てめえ……!!」
「それに愛ちゃん、でいいのかな。〝一度地面で跳ねさせた〟とはいえ、今の〈空の拳〉は、その前に撃った〈空の拳〉と威力は同じだ。初めに声をかけてきたときも、君の小さな身体が吹き飛ばされないのはおかしいと思ってたんだけど、やっぱりね」
「っ……!」
「〝
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