第30話 ぜんぜん楽しくない修学旅行 1
病院と学校の往復を繰り返しているといつの間にか三年になりました。
あと一年我慢すれば終わりです。
クラスメイトの人生を終わらせてやりたいところですが、我慢さえすれば終わります。
……って我慢するクセが悪かったのです。
もう私の体は限界だったのです。
いえ限界を軽く超えて運用されていたのです。
「げぶッ!」
なんだと思いますか?
暴力?
ぜんぜん違います。
う○こです。
この頃になると排便がアレしてコレして激痛が『はうんッ!』でした。
私はあまりの痛みに思いました。
(痔かな……?)
はい。バカがいます。
がっつり下血です。
十二指腸潰瘍なのは知っているんですが、まだ認めようとしてません。
ドブを出してるような痛みが痔のはずがないのに。
明らかに腸です。
痔の痛みと十二指腸潰瘍の痛みの違いもわからないでやんの。
当時に戻れるものならぶん殴ってやりたいです。
このボケでさらに酷くしましたのです。
皆さんはボディーブローのような痛みを感じたらさっさと医者に行きましょうね。
死にますから。
サクッと死にますから。
人間って結構簡単に死にますからね!
藤原との約束ですよ。
さて三年です。
修学旅行です。
バカのバカによる猿の惑星イベントです。
もうね嫌な予感しかしません。
藤原はサボることにしました。
親にサボるって言わなきゃ。
「バカなの? 高校の修学旅行に行きたくないって信じられない」
親は常に非情です。
父親は宗教のことばかり考えているポンコツですが、母も常識に囚われすぎてます・
あんなゴミどもとの旅行の何が楽しいのでしょうか?
ただひたすら苦痛なのはわかりきってます。
さらに言えば体の具合が悪すぎてどんなイベントも辛いだけです。
でも本人以外の反応なんて常にそんなものです。
自分でなんとかするしかないのです。
例えば刑事事件を起こすとかです。
でもその当時はそこまでズルイ思考はありませんでした。
ホント、この愚図が!!!
◇
一日目です。
電気科は早くも花火をどこで手に入れるか相談中です。
室内でやるつもりです。
一方、情報技術科は死んだ魚の目をしてブツブツつぶやきながらどこでナイフを手に入れるか相談中です。
お外で殺るつもりじゃないかが心配です。
ナイフを持ち込んじゃ、めーっよ。
その点、上品な藤原はメリケンサックしか買う予定はありません。
メリケンサックは重厚な指全体ををカバーするやつが人気です。
小説とか漫画とかドラマでもそればかりです。
でも使うなら断然薄くて幅広の安いやつの方をオススメします。
そもそも拳で殴るときは拳頭で殴ります。
それなのにメリケンサックで拳頭をカバーしてる製品はあまりありません。
メリケンサックはなぜか指関節の下側をサポートしてるのです。
止まった的を殴るのには支障ありませんが、動いている人間を殴ると変な角度で殴ってしまい、メリケンサックのせいで指が変な方向に曲がります。
たいへん痛いです。
良い子は真似をしてはいけません。
圧倒的な握力があるか手が大きければまた別なのでしょうが……
つまり市販のメリケンサックは実用性はあまりありません。
その点、安い薄型のやつは親指側と小指側にメリケンサックの金属部分が大きくはみ出ています。
つまり薄型のメリケンサックはその部分で殴る道具なのです。
どこ狙ってもガードされても有効打ですよ。
(ちなみにこの頃はクボタンというもっと便利な武器がある事を知りませんでした。)
ってメリケンサックのことはどうでもいいのです。
とにかく生命的にも性的にも襲われないために自衛手段が必要なのです!
え? スタンガン?
実は藤原は冬休みに某区某所のビルの一室で中国の人たちと一緒にスタンガンの組み立てのバイトをしてました。
微妙なスペックの微妙な品です。
たまに不良品があって検品の時に漏電するんです。
でも少し痛くて筋肉がギュッと締まる程度です。
騙されちゃダメですよ。
9Vと言えど所詮は普通の乾電池。
アメリカの警察官が持ってるアレほどの威力はありません。
(あっちは死人が出たらしいです。)
オークさんを止めることはできないのです。
そういうわけで、今度は飛行機です。
行き先は北海道。
国内旅行です。
ちなみに普通科は海外です。
オーストラリアだっけ?
これには複雑な事情があります。
オークさんを外に出すわけにはいかないのです。
もし私たちを海外に出してしまったと仮定しましょう。
数年前に空港の売店で万引きをした学校がありましたね。
それが微笑ましいと思えるような殺傷事件を起こしていたに違いありません。
だってバカですもん。
舐めるとか舐められないしか人生の尺度がないんですもん。
ですのでオークさんは国内旅行。
人類である普通科はオーストラリアです。
……血の涙を流すほど恨んでませんから。
ホント、「マッドマックスに出てくるような車にひかれてしまえ!」とか思ってませんから!
まあ普通科も「ヒグマに食われて帰ってくるなこのクズ!」と思っているに違いありません。
こういうのはお互い様なのです。
私たちは飛行機に乗り込みました。
今のところ武器の持ち込みはありません。
飛行機が発進します。
ぐいん。
はて?
なんか高度が安定しません。
ぐいん。
なんか上下してます。
ぐごごごご。
はて……?
Sさんが青い顔をしてます。
「大丈夫ですか?」
一応聞きました。
「死にそう」
「ああああああああ。やはり鉄の塊が飛ぶわけないんだ」
K室くんがブツブツと言いました。
殴りますよ。
私が憤慨しているとSさんが私の手を握りました。
「そういう趣味はないんですが……」
「タスケテ」
どうやら上下する飛行機が怖いようです。
目が血走ってます。
後で知ったのですが乱気流的なもののせいだったようです。
とは言っても機内アナウンスがない程度のものです。
ぐらぐら揺れる程度です。
まったく肝が小さい!
私は平然としてました。
ですがオークさんたちはまるで小動物のようにガクガクブルブルしてます。
そんなに怖いのか?
「ぐはははは! お前らはいっそ落ちて死ねばいいのにな!」
担任が空気を読まずに言いました。
マジでぶん殴るぞ。
せっかく寝ようと思ったのに台無しです。
まあ、クラスメイトの緊張が伝わる伝わる。
W辺まで無口ですもの。
ほんとバカばっかり。
このとき飛行機落ちた方が幸せだったんじゃないかなあ。
複数の意味で。
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