第21話 オークさんの日常
ぴんぽんぱんぽーん♪
試しに後半をオーク側の視点で書いてみたら今回はギャグが面白くなくなりました。鬱回かもしれないのでご注意ください。
藤原は朝から体調が優れませんでした。
そもそも一年ほど前から具合が悪いのですが、それでもその日は手術後のように最悪でした。
朝日はやたらと眩しくボディブローを食らった後のように重い痛みが臓物を締め付けていました。
縁が緑色に光る黒い水玉が見えました。
絞め技で落ちる瞬間に見えるアレです。
やべえ。
そう思った瞬間、私は倒れました。
症状自体はよくある貧血でした。
意思も失ったわけではありません。
でも全く動けません。
死ぬかも。
自分の心臓の音だけが聞こえてました。
それは今にも止まりそうな音でした。
その後、私は救急車嫌いの両親によってタクシーで病院に運ばれました。
ですが十二指腸潰瘍が発見されるにはまだまだ時間が必要でした。
いえ、病状が悪すぎて癌とかもっと凄い病気を疑われたのです。
結局、私は大学病院行きになりました。
だって10代が十二指腸潰瘍だなんて明らかにおかしいでしょ?
それも大学受験で受験ノイローゼとかじゃありません。
頭の悪そうな学校での暴力まみれの生活に疲れ果てたからです。
こうして私はどんどん手遅れになっていくのでした。
さて、二年の文化祭はお約束として普通科職員室に爆竹を投げ込みました。
もう装置なんて使いません。
騒ぎを大きくしても全力で隠蔽するのはわかっていますから。
もう気力がなかったのです。
普通に直接投げ込みました。
もはや義務感による犯行です。
毎年やったので普通科の教師たちの反応も面白くありませんでした。
ちなみにXX部のバザーはなくなりました。
逃げやがった!
これだけやりながら我々の「安全に暮らしたい」というささやかな願いが叶えられることはありませんでした。
なぜ世界は加害者にだけ寛容なのでしょう?
その証拠に我々が加害者側だった爆竹投げ込みにはなんのペナルティもありませんでした。
ただの犯罪者養成校じゃねえか!!!
※正確には犯罪者をギリギリのラインでカタギとして社会に出す学校です。
教育ってなに?
答え、暴力。
げしッ!(ドアを蹴る音)
この頃になると私まで暴力的になってました。
この学校で学んだことを死ぬほど後悔するようになるのは大学入学後です。
3年間の生活で私の常識はいつの間にか歪みまくっていたのです。
身も心もオークさんになっていたのです!
◇
今回はそんな精神的感染力の強いオークさんの生活にスポットを当ててみましょう。
オークさんは常にイラついています。
一日に何度も舌打ちをしています。
育ちの悪い小学生のような態度ですが本人はカッコイイつもりです。
さてなぜオークさんは常にイラついているのか?
それが問題です。
他人様を毎日殴りながらイライラしている。
まるで公害のような生き様です。
昔の偉い学者さんはそれを突き止めようとしました。
それが現在の犯罪学などの学問です。
犯罪学の触法少年、つまりオークさんですが彼らは自己評価が低いのです。
自分をダメなやつだと思っています。
これをラベリングと言います。
つまり案外自分を正しく捉えています。
だけど努力をするのがもっと嫌いなので非生産的な方法でイライラや不安を解消しようとします。
それが他者への不寛容と暴力です。
たまに勉強しかしてこなかったエリートにも見られるのが興味深いですね。
異常に狭い見識で自分の知らないものを排除しようとします。
頭が悪いからです。
そんな彼らの一日は舌打ちから始まります。
深夜まで遊んだせいや、不思議なお薬の影響で遅くに起床します。
そんな自分の生活に不安を覚えて舌打ちします。
シワだらけの制服に着替えるとカバンを手に持ちます。
中には教科書は入ってません。
『勉強は楽しくないからしない』と、のたまっていますが実際は小学校高学年から中学一年で授業が理解できなくなったのです。
アルファベットも漢字も読めません。
本もつまらないから読まないのではなく読めません。
こんなの高校に入れるなよ。いや本当に。
迷惑するのは真面目な子です。
用意が調うと自転車や徒歩で駅に向かいます。
ここで歩いている最中、楽しそうにしている全ての人間に怨嗟の舌打ちをします。
四六時中イライラしてます。
電車に揺られる間も舌打ちをします。
よくわからないけど自分は世界からのけ者にされている。
彼らは自分を変える努力をしません。
そのくせ頭の中は常に被害妄想でいっぱいです。
自分は常に誰かの被害者なのです。
さてフラストレーションをため込んだ後、思いっきり遅刻状態で学校に着きます。
ここには犠牲者がたくさんいます。
殴りたい放題です。
ストレス解消ターンなのです。
まずK室くんを見つけます。
K室くんは常に楽しそうです。
DQNは特に意味もなく殴ります。
ウザイとか言われながらも人気者のK室くんに嫉妬しているのですが自覚はありません。
K室くんを泣かせると、自分が王者になった気分になって上機嫌で席に着きます。
その行動こそ痛々しいのですが、それに気づくことは一生ありません。
席に着くと舌打ちをします。
今度は藤原が目に入ったのです。
オークさんは藤原を懲らしめてやろうと思いました。
藤原はオークさんの法に従いません。
それが気に入らなかったのです。
「おい藤原ぁ!」
そこまで言ったところで次に何を言うか忘れました。
藤原が悪いことをしていることは少ないのです。
「またですか?」
藤原は冷たいのです。
「てめえ!」
「お互い嫌な思いをするだけです。会話はやめましょう」
「テメエ!」
「私はあなたに興味はありません。干渉しないでください。それでも私の邪魔をするなら暴力以外の方法で追い詰めて潰します」
嘘です。
暴力も選択肢にあります。
「てめえ……なにイグアナぶってんだよ!」
言うことに困って意味不明なことを言い出しました。
これでも冗談のつもりです。
「意味がわかりません。時間の無駄なので話かけないでください」
冗談は友好的な関係を築きたいときにするものです。
すでに関係が破綻した状態での冗談は相手を怒らせるだけです。
こうしてオークさんは私にあしらわれてスゴスゴと席に戻っていきます。
途中、侮辱によって受けた精神的ダメージを緩和するためにK室くんを蹴飛ばします。
その後、授業が始まります。
半分もわかりません。
舌打ちを何度も繰り返します。
悔しいので全力で授業を妨害していると、あっと言う間に放課後になりました。
急に冷静になったオークさんはトボトボと家に帰ります。
ダメな自分に絶望しながら。
寂しくなった彼は携帯で仲間を呼びだし夜遊びを繰り返すのでした。
友達といれば考えないですむからです。
そしてさらに授業はわからなくなり、教室に居場所はなくなるのです。
残酷ですがこれが現実です。
私が授業参観で言った暴言はほとんどが的を射たものだったのです。
こうして誰も得しない状態でクラス全員の3年間がドブに捨てられたのです。
※なぜか自分で書いてて大ダメージを受けた件。
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