第12話 気がついたら全員オークさん
前回、W辺が脱ぐお見苦しい描写があったことを謝罪いたします。
ちなみにあの脱ぎ芸は週に二度ほど不定期で突然開催される謎のイベントです……
実は記憶が曖昧なため、本当はボン○ョビではなくヴァン○イレンのジャン○かもしれません。
※当時でもすでに懐メロでした。なんで知ってたんだろう?
人間というのは不思議なものです。
それまで私は洋楽と言っても映画の主題歌的なものが大好きでした。
もともとワンコが出てくる系のゆるーい映画が大好きだったのですが、それも強大なストレスに晒されると変化します。
映画の主題歌はデスメタルに。
映画は人が死にまくるヒャッハーアクションや皆殺しホラーに。
精神汚染って怖いですね。
今回は精神汚染の話です。
K平はクズです。
これは情報技術科全員の共通認識です。
蹴られた人はほぼ全員。
体育館裏でタコ殴りにされた人も三分の一に及んでいます。
かと言って被害を教師に訴えようとも教師は華麗にスルーです。
さらに私など一度でも殴ったら全面戦争になるタイプの人間には遠くからセコイ攻撃を繰り出すだけです。
我々は着実にヘイトを溜めていました。
これでは誰かがナイフを出すのは時間の問題です。
我々は全員でK平を拉致してタコ殴りにするか、誰かがナイフを出すかの瀬戸際にいたのです。
※どちらにせよ殺人事件に発展します。
ですので、誰かがナイフを出すのを待ち望んでいました。
ちなみに大方の予想では私がナイフを出すと予想してたそうです。
残念でした! 私は鈍器派ですよー!
というわけで誰一人として自分で動こうとしてない状況が続きました。
あの日まで……
そう、あれは文化祭の一般入場日でした。
私はおもちゃ屋さんにいました。
とあるアイテムを購入していたのです。
くっふふー。
まずは腐れ普通科の先公……じゃなくて先生たちに正義の鉄槌を下すのです。 そのついでにK平もです。
まずXX部一堂からの贈り物を装って遠隔点火装置をつけた花火を職員室に送ります。
ちなみに開発は情報技術化全員でしました。
そして容赦なくファイア!!!
ヒャッハー!!!
ぱすぱすぱすぱすぱすぱすぱすぱすぱすぱすぱすぱすぱすぱすぱす。
音がしました。
陽動開始です。
私たちは目出し帽を被りました。
※文化祭の最中なので全員が私服です。
私たちはレイン○ーシックスの如き動きで隣のXX部の父母主催のバザーの扉を開けました。
フラググレネード……ではなくネズミ花火を放り込みます。
しゅるしゅるしゅるしゅるしゅるしゅるしゅるしゅるしゅるしゅるしゅるしゅる。
すぱぱん!
「きゃああああああああッ!」
部屋から悲鳴が上がりました。
結局、私たちは全員の停学と引き替えにK平を社会的に抹殺することを選びました。
耐えられなかったのです。
親や担任へ相談?
誰もオーク村の住民の言うことなどまともに扱ってくれません。
ですがこれだけの騒ぎを起こせば問題を表沙汰にするしかありません。
K平にいじめられたから報復した。
それで押し通せば良いのです。
私たちは停学になるでしょうが、K平はただじゃすみません。
最悪、ゴネまくってXX部が大会に出られないようにしてやればK平は居場所を失うはずなのです。
ゴミが!
私たちがいつまでも大人しくしてると思ったら大間違いだからな!!!
卑怯?
いくらでも言うが良い!!!
XX部はここまで我らを追い詰めたものを恨むが良い!!!
ふははははははは!!!
私は高笑いしました。
◇
「あー、全部揉み消したから」
担任が私に死刑判決を下しました。
ちなみに私は学級委員でもないのに代表者として呼ばれています。
「え?」
「夏に没収した花火を入れた箱を間違えてストーブの近くに設置したら加熱して爆発したことにしたから」
「え?」
XX部のバザーは?
ねえバザーは?
「その際、花火の一部が窓から飛んでいってバザー会場に入った」
おまッ!
物理的にあり得ねえだろ!
隣の部屋だぞ!
途中で曲がったのかよ!
だいたいストーブつけてるのになんで窓開けてるんだよ!
設定がガバガバすぎだろ!
「え?」
「ふふふ。差し違えようなんてできると思うな。やるなら死人でも出せ」
「それってナイフで刺せって意味ですか」
「おう、撲殺までなら揉み消してやるからな」
もちろん担任の言葉は半分は冗談でしょう。
「軽く拉致ってリンチしても目をつぶってやる。お前らにその度胸があるとは思えないけどな」という意味です。
完全に足下を見られてました。
さすがに我々もゴミ退治に人生をかける気はありません。
コストが高すぎるのです。
それに殺人はいけないことです。
もしするとしたら人生最大の決断でしょう。
そんな価値がゴミにあるとはどうしても思えないのです。
結局、私たちは報復をあきらめました。
そもそも私たちは最初から負けていたのです。
彼らはコストなど気にしません。
適当に殴ったら死んじゃったどうしよう。
これが彼らの実体です。
明日もなにも見てません。
そんな彼らにコスト計算をした時点で私たちの負けなのです。
私はため息をつきました。
結局、私たちの手にしたものは「ザマァッ!」という一時の胸のすく思いだけでした。
それだけでしかなかったのです。
ちなみに……数日後。
K平くんは腫れた顔面で学校に来ました。
同じ部でリンチにあったのです。
そりゃそうなるわな。
我々は納得しました。
でも彼は反省なんてしません。
反省や内省と言った精神活動は恐ろしく高度なものなのです。
人は反省ができるから成長ができるのです。
オークさんは常に誰かに被害を受けたとしか認識ができないのです。
彼らは常に誰かの被害者なのです。
「オラァ誰だ!!!」
私はそれを冷ややかな目で見てました。
K平が机を蹴りました。
「誰だコラァッ!」
私は黙りました。
ニヤニヤしながら。
ちなみに私が今回の蛮行を反省するのには四年の歳月を必要とします。
私もまた自分を被害者だと思っていたのです。
私は異常な状況に置かれすぎて、常識を失っていたのです。
つまりK平をバカにしている私も立派なオークだったのです。
そう、私はオークに精神感染してたのです。
オークさん達はクトゥルー世界の化け物と同じです。
気がついたら自分もインスマウスの化け物の一員なのです。
みなさんもお気をつけください。
いやマジで。
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