第34話 病院編 3 怒りのお茶の水

 さてXX区からお茶の水の病院に転院になりました。

 凄まじくグロい話なので細部はぼかしますが、簡単に説明すると一時良くなった体が抗生物質的なもののアレルギーが発生してフルスロットルで死に向かって暴走をはじめたという感じです。

 いっやー……軽く死にかけました。

 まさか生きながら腐る(物理)を体験することになろうとは……

 日に日に弱って行く貴重な経験ができました。

 ひゃっほい!


 人間というのは体に深刻なダメージを与えまくるとどうなるのでしょう?

 答え、壊れたまま元に戻らなくなります。

 いまだに体は弱いです。

 内臓もボロボロです。

 つい先日、2016年の4月にも入院しました。

 ストレスと飲酒であちこちの臓器を壊したままなのです。


 これが『我慢』の代償です。


 私たち、特に男子というものは感情を殺し泣き言を言わないことが未だに美徳とされてます。

 忍耐こそ至上だと言わんばかりです。

 ですので少しでも泣き言を言おうものなら『女々しい』と批判されるのです。

 根性が足りないとかいわゆる精神論です。

 実に狂った教育ですね。

 いえ確かに人間は忍耐強い方が結果を出すことができる確立が高まります。

 これは純然たる事実です。

 ですが、忍耐は心を蝕みます。

 永遠に強いるものではないのです。

 要するに忍耐は程度問題なのです。

 ところが私は限界を超えて我慢してしまった。

 世間の期待の通り、泣き言を言わないで二年半も我慢し続けた結果がコレですよ。

 これを見ている皆さんも我慢はなるべくしない方がいいですよ。

 我慢した結果がこれです。

 結果を見れば、私もSさんも体を壊し寿命も10年は削りました。

 (今ではSさんの方がより重篤です)

 薬に手を出したG田もかなり高い確率で死んでいると思います。


 たかだが底辺高校の卒業資格のために私はなんという高い代償を払ったのでしょう!

 一度壊した体は金で取り戻すことはできないのです。


 割に合わないとはまさにこのことです。

 学校がクソゲーだったらとっとと辞めちゃいましょう。

 体を壊すよりは大分マシですよ。

 体を壊しても人生には何の得もありません。

 せいぜいが拙い文章力でエッセイにまとめて投稿サイトに投稿する程度です。

 ハッキリと断言しますが、私はこの学校生活で人間的に成長しませんでしたし、将来のためになることを何一つ得ることもできませんでした。

 レベルアップしたこともありませんし、写真に残したいような思い出もありません。

 まさに私の十代後半はゴミでした。

 ただ多大なストレスを得て体を壊しただけです。

 

 人間は何のために生きているのか?


 それをもう一度真剣に考えるべきではないでしょうか。

 神とかじゃなくて、もっと地に足のついたかたちで。

 私たちは我慢をするために生きてるわけではないのです。

 もし『お前らのような底辺は一生なにも考えずに我慢だけしてろ』と言うなら、我々はこの世の法にも条理にも従う必要はありません。

 底辺層の安全を確保して飼い殺しにするのも支配者の器量だと思いますよ。


 なぜここが遺書みたいになっているのか?


 いやーだって当時死にそうでしたもん。

 死にそうな時って余計な事ばかり考えるわけです。

 『死ぬ瞬間』の著者であるキューブラー=ロスは死の受容のプロセスのモデルを定義しましたが、私は余計な事ばかり考えてました。

 普通は死に向かう人間は否認・怒り・抑鬱・受容と変化するらしいのですが、当時の私は最初から死を受け入れてました。

 その代わりに考えていたのは『どうせ死ぬんだったらK平ぶっ殺したい』とかです。

 私にあったのはあくまで攻撃でした。

 怒りと言えば怒りですが「なんで私が死ぬんだ!」ではなく「どうせ死ぬならもう日本の法律守らなくていいよね」でした。

 つまり……どう言い訳しようとも私もオークの仲間だったのです。



 私はある計画を進めていました。

 仮にコロンバイン大作戦と名付けましょう。


 ※コロンバイン

 アメリカ合衆国コロラド州ジェファーソン郡コロンバイン。

 1999年4月20日に郡立コロンバイン高校で二人の生徒が銃を乱射、13人が死亡した事件があった場所。


 って別に無差別に銃を乱射するわけではありません。

 とりあえず生きて卒業式を迎えられたら必ず発生するイベントに介入する予定です。

 卒業式ではありません。

 それは体育館裏でのリンチです。

 もうね。

 逆襲することにしたわ。

 このままだと長生きできないし法律なんてもう関係ねえ。

 無法者のテメエらを守ってたのはテメエらの嫌いな法律なんだよボケが!!!

 私は完全にブチ切れてました。


 さてさて具体的なプランです。

 Sさん情報によるとアホどもはラーメンをリンチするつもりです。

 ラーメンには借りも貸しもありません。

 ですがアホどもには貸しが大量にあります。

 アホどもは卒業式が終わり次第、ラーメンを殴りに行くはずです。

 つまり裏を返せば卒業式からリンチまでの間にヤツらに隙が生じることになるはずです。

 そこを襲撃し、各個撃破すればいいのです。

 とは言ってもこちらは病気入院中。

 運動を毎日やってる連中に腕力で勝てるはずがありません。

 ですのであと数ヶ月でプランを見直さなければなりません。

 目標が定まると私は俄然やる気が出てきました。

 まずは筋力をつけるのです!

 この頃はケトルベルやパワーバッグも手に入りません。


 ※ケトルベル

 玉に取っ手がついたようなロシア人考案のダンベル。全身運動ができる。


 ※パワーバッグ

 アメフトやラグビー、レスリングなどで使われるフィットネス器具。

 砂の入ったスポーツバッグ。

 アメリカのレスリングチームやアメフトの強豪校になるとブンブン振り回して使う。

 連中はステロイドも併用してるので体つきがおかしい。


 なので古典的トレーニングにすることにしました。

 みんな大好きチューブトレーニングです。

 ただし、いきなり大きいウェイトでやります。

 一番固いやつを二枚同時からはじめました。

 それだけだと不安があったので拳立て伏せにスクワットも追加します。

 心拍数を上げるのにもちょうど良さそうです。

 握力も必要です。

 C●Cを買いました。


 ※C●C

 握力マニアの握力マニアによる握力マニアのためのグリップ。130キロとかまである。


 計算上肉体改造には最低三ヶ月はかかりますが、それは大丈夫です。

 誰かさんたちのおかげで時間だけは有り余っているのです。


 この日から私はモリモリと元気になっていきました。

 今考えると短期的な目標と生きる理由が提示されたのです。

 そうなった人間は強いです。

 親すらも『死ぬかなあ』と思っていた私はどんどん元気になってきたのです。

 それは気力が肉体を上回った瞬間だと思います。

 そう、ある意味では私の生還にオークさんたちは貢献していたのです。

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