第9話 エクストリーム三社祭海賊版

 夏が終わり、秋になりました。

 夏はどうだった?

 なにもありませんでしたよ?

 ひたすら普通科主催の夏期講習で嫌味を言われただけですが何か?

 他は中毒で一人死にかけただけです。

 なんの中毒?

 言わせんなよー。

 まだその時は合法だったらしいですよ?


 秋になると世間のいろいろなことが見えてきました。

 我々は食物連鎖の最下位にいることとか。


 お前らが最下位なわけねえだろ!


 多方面からツッコミが来そうです。

 でも考えてみてください。

 フィジカルエリートはスポーツ推薦でもっと名の通った学校に行きます。

 そこで3年間スポーツ漬けの生活をおくります。

 いじめなんてしている暇はありません。

 つまり工業科にいる時点で補欠組。

 勉強もできなければスポーツもゴミ。

 さらには性格も悪くコミュニケーション能力もない。

 遺伝子操作の失敗作みたいな劣等種が集まっているのです。

 もちろん藤原含めてです。


 なにが言いたいのか?


 それはとてつもなく酷い話なのです。


 数学教師が変わりました。

 ええっと……ラーメンというあだ名のアホと、XX部のKくんというクズの中のクズが喧嘩をしました。

 ラーメンがバタフライナイフを抜いて刺そうとしたのでKくんは大型のスパナで滅多打ちに。

 再起不能の寸前までラーメンはボコられました。

 それで、あちこち骨折したラーメンの親がXXの協会的なところに通報しました。

 警察?

 捕まったら困るのはラーメンの方ですよ?

 この学校にはまともな人間なんていませんからね。

 大会的なものに出られなくなる寸前になりましたが、上手に揉み消したそうです。

 揉み消すのにいくら使ったのかは考えたくありません。

 上級国民になっておこぼれにあやかりたいものです。


 それでXX部の顧問が更迭かなあっと思ったらまたもや斜め上の対応。

 学校は数学教師にすべての責任を被せました。

 そういうことやってるから底辺高校から抜け出せないんだと思います。


 そこで新しくやって来たのがオギー先生です。

 なんと我が底辺工業の卒業生にして東京工業大学出身です。

 超絶エリートですよ。

 よく似た名前のあそこじゃありませんよ。

 楽しい数学を期待してます!


「や、やあこんにちは」


 オギー先生が下を向きました。

 どうやらオギー先生は人と目を合わせらない人のようです。


「ぼ、ぼ、ぼくは……」


 ぼくは?


「……?」


 わからないんかい!!!


「授業をはじめます」


 オギー先生から発せられるのは圧倒的な弱者のオーラ。

 寂しいと死んじゃう系の生き物です。

 誰だ! こんな人をこのクラスの数学担当にしやがったの!


「うけけけけけ……」


 バカどもが騒がしくなってきました。

 連中がいじめられっ子のニオイを逃すはずがありません。


 がたん!


 音がしました。

 もうなにを考えているかわかる自分が嫌です。


「死ね!」


 バカが椅子をオギー先生に投げつけました。


「ぎゃん!」


 オギー先生にヒット!

 バカか! 停学になるぞ!

 い、いやなれ!

 今度こそお前ら全員学校にいられなくしてやる!!!


「くすんくすん」


 それはわざとらしい泣き声でした。

 一瞬マジでギャグかと思いました。

 それはオギー先生のガチ泣きだったのです。

 ……なんとなく東京工業大学出身のエリートなのにこんな無法地帯に来た理由がわかりましたよ。


「……」


 固まる私。

 ですがオーク軍団は沸きました。


「ヒャッハー!!!」


「ウケるー!!!」


「ゲラゲラゲラゲラ!」


 どうして人間はここまで醜くなれるのでしょうか。

 つうか死ね。

 マジで死ね。

 糖尿病にかかって足の先から腐っていけ!

 ロードローラーに踏まれてしまえ!



 そんなオギー先生ですが、次の授業にも青い顔でやってきました。

 いい根性です。

 やはり最難関大学を突破しただけあります。

 ですがそんなオギー先生に災難が降りかかるのです。

 普通に授業が始まりました。

 オギー先生の授業は非常に丁寧でわかりやすいのです。

 前は予備校の先生だったのかもしれません。

 そんなのどかな光景は一瞬で終わります。

 オギー先生が膝から崩れました。


「ひぐぅッ!」


 それは浣腸でした。

 両手を合わせて二本指で肛門を強襲するやつ。

 オギー先生は口を開けたまま悶絶。

 そのままバカがオギー先生を持ち上げます。

 浣腸をしたままで。

 がしり。

 両脇を体育会系のバカがつかみました。

 いやな予感がします。


「よし行くぞ!!!」


「わっしょい! わっしょい! わっしょい! わっしょい! わっしょい! わっしょい!」


 三人は浣腸をしたままオギー先生を揺さぶりました。

 まるで神輿のように。

 お前らの発想力に完敗だよ!


「わっしょい! わっしょい! わっしょい! わっしょい! わっしょい! わっしょい!」


 それはまるで企画もののAVのような最低の絵でした。


「おっし! お前ら足を持て!」


 かぱり。

 M字開脚。


「わっしょい! わっしょい! わっしょい! わっしょい! わっしょい! わっしょい!」


 オギー神輿を担いだままバカどもは踊りながら廊下に出て行きました。


「わっしょい! わっしょい! わっしょい! わっしょい! わっしょい! わっしょい!」


 どんどこどんどこ。


「おーっし! 記念撮影だ!」


「や、やめてー!」


 ぱしゃり。

 どんどこどんどこ。


「お、たってる」


 ぱしゃりぱしゃりぱしゃり。


「あいつら死ねばいいのに」


 思わず声に出してしまいました。

 偏頭痛が私の頭を締め付けます。


「今日はパーティだぜええええええええッ!!!」


「ぎゃはははははは!!!」


 他の学科のバカどもも合流。

 百鬼夜行が学校中を練り歩きました。


「コラー! お前らなにやってる!!!」


 遠くで怒鳴り声が聞こえました……


「わっしょい! わっしょい! わっしょい! わっしょい! わっしょい! わっしょい!」


 窓から声のした方を見ると百鬼夜行は中庭にまで出てました。


「オイコラお前らー!!!」


 先生の制止も虚しく彼らは学校の外へと消えていきました。


 翌日オギー先生は「性的暴行を受けた」と辞表を提出しました。

 停学者は出なかったのか?

 はははは……出ませんでした。

 うまく隠蔽しました。

 これは確実に新聞クラスの暴挙です。

 オギー先生の頬を札束で叩いたのか、それとも恫喝したのかは知りません。

 どちらにせよ薄汚いやり方です。

 こうしてオギー先生はわずか数日で我々の前から姿を消したのです。


 藤原ゴンザレスはバカどもの死をかなり本気で願っていますまる

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る