第25話 オークと萌え
オークさんたちが帰って来ました。
情報技術科のほぼ全員がミイラのようになっています。
十二指腸潰瘍を患ってる藤原より体調が悪そうです。
死相が出ています。
しかも誰も話をしません。
まるで嫌われてた親戚のお通夜のような雰囲気でした。
「ぎゃははははは!」
なぜかオークさんたちはテンションは上機嫌です。
おかしいくらいにテンションが高いのです。
ちなみにY岸くんは欠席です。
Sさんにボコボコにされたのが原因ではなく、ジョイスティック周りの病気が発覚しての欠席です。
※ジョイスティックに関しての詳細は黙秘させて頂きます。
それにしても不公平です。
なぜ真面目に生きてる我らが不当に追い詰められて、ただ欲望のままに生きているDQNが我が物顔で教室に君臨してるのでしょうか?
答え:世界の決断。
ファッキン!
どこかの国が核爆弾でも撃ち込まないかなあ。
まあ、でもいいでしょう。
Y岸はしばらくいません。
少なくとも殴られる以上のことはされません。
W辺は手段を選ばないで反撃してくる人間相手には自ら手を下すことはありません。
ラーメンはW辺の手下ではないし私は嫌われてないので安全です。
問題はK平です。
私個人が気にくわないのです。
私はラグが出たゲームのようにカクカクと動きました。
私は今でも思います。
殴っちまった方が楽だったんじゃね?
と。
世の中のほとんどの事象は力で解決できます。
というか強制力を伴う執行は国家が大なり小なり力を振るいます。
力の行使は人間の社会に必要なものです。
ですが我々は幼少の頃から暴力の行使を悪いことだとすり込まれています。
その辺の刷り込みができてないのがオークさん。
すり込まれているのが我々です。
幼少からすり込まれた価値観を超えるというのはなかなか難しいものです。
それに対して論理的な根拠がないとしてもです。
つまりなにが言いたいというと、私がそれまで持っていた価値観は全て間違っていたのです。
そもそも国家は最低限、我々の身を守る義務があるのです!
警察! 学校だからって介入しないとかおかしいだろが!!!
全員死ねー!!!
つまり……です。
我々は自衛しなければなりません。
そのためには我々の身と貞操を守らない法に従う必要などないのです!
ビバ暴力!!!
そう、暴力こそ神なのです。
暴力へ信仰を持てば全ては解決するのですヒャッハー!!!
と、藤原はマッドマックス的世界観に開眼し、間違った結論を出しました。
もちろんあとで手痛いしっぺ返しを食らいます。
「よし! お前ら花火すっぞ!」
誰かが叫びました。
はい?
私は自分が文化祭のときに普通科の職員室に爆竹を投げ込んだことを忘れて突っ込みました。
W辺が全裸になりました。
嫌な予感しかしないし、何やるかわかったからな!
おい!
やめろ!!!
「尻穴花火ー!!!」
しゅわーすぱぱぱぱん!
※上級国民の皆様へお願い。
室内で花火を尻穴に刺す人を高校に入れないでください。いやマジで。
◇
SさんとK室くん、それに私の三人で話してました。
男子の会話です。
たいてい猥談です。
ちなみに私がノーガードのオープンオタクなのでみんな安心してオタ話をしてます。
「おっぱいは大きい方がいいと思うんだ」
K室くんがテンプレのような発言をしました。
「俺はおっぱいよりラリアットの強さで決めたいな」
だからSさん。
貴方の基準は女子の好みの基準じゃないですからね!
おかしいでしょが!
私は渋い顔をしてました。
「なにその顔。じゃあお前はどうなんだよ!」
K室くんは珍しくおっぱいにこだわりを持っているようです。
しかたない。
語ってくれよう。
「例えばです。朝の電車でギターケース抱えた金髪ベリーショートなパンク系の女性がいたとします」
「ずいぶん具体的だな。キモいよお前……」
K室くんがドン引きしてます。
なにその顔。
「相変わらず派手なのが好きだな。ぶっちゃけキモい」
Sさん、貴方の理想のスタン・ハンセンみたいな女性よりはマシでしょ。
「背の低い男の子みたいな女性に薄い胸を発見したとき、一日幸せな気分になると思いませんか?」
私はニコリと慈愛の表情を浮かべました。
「うっわ……」
「キモ……」
二人はドン引きです。
お前らそのツラ忘れないからな。
覚えてろよ!
「まったく文句つけるやつが一番ド変態なんだよ! なあO倉」
K室くんがO倉を呼びます。
つかド変態って言ったなコラァッ!
「なあに?」
「お前はどんなおっぱいが好き」
最低の質問です。
「おっぱいがあるようなBBAは死ね」
みなさーん! 犯罪者がいますよー!!!
「そ、そう……」
K室くんの声が裏返ってます。
「そ、そうか……」
「藤原お前はわかるよな!!!」
「いえ全然」
キリッ!
「このクズども死ね!!! 死んでしまえ!!!」
なぜキレる。
「じゃあ、S賀は?」
初めて名前ができましたがS賀くんは電気科の人です。
性格が藤原並みに曲がっているため、DQNたちにたいへん嫌われてます。
「XX」
S賀くんは瞳孔開きっぱなしの目で言いました。
アニメキャラ入りましたー。
もうすでにおっぱいですらありません。
「じゃあK谷は?」
最後のオタクです。
「背中に入れ墨がなければなんでもいいや」
「……」
「……」
「……」
「……」
全員が黙りました。
人には触れてはいけない部分があるのです。
こんなこの世の果てに飛ばされた人間にはなにかあるものなのです。
藤原ですら原因と結果があるのです。
他の生徒にないはずがありません。
それにしてもこの人数がいながらツンデレという選択肢がありません。
ないのです。
これには理由があります。
ツンデレを愛でるのは非常に高尚な趣味です。
くっころ女騎士を愛でるくらい高尚な趣味です。
藤原のようにわびさび萌えを正しく理解できないオークさんには非常に敷居の高い趣味なのです。
茶道とか香道的な?
つまりツンデレを愛でるには萌えへの理解とエネルギーが必要です。
道を理解するだけの心の平穏が必要なのです。
ですが我々に残されたSAN値は残りわずか。
ツンデレに費やす精神力などなかったのです。
ひゃっほい!
つまりオークはどう誤魔化しても所詮はオークなのです。
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