第31話 ぜんぜん楽しくない修学旅行 2
北海道に着きました。
北海道です。
とうとうオークを本州から出してしまいました。
アルマゲドンのはじまりです。
ゾンビ映画ならすでに1000人は死んでいるシチュエーションです。
そんな嫌なタイプの期待が集まる中、オークさんたちは空港に出るなりたばこを吸い始めました。
この糞虫どもめが。
常に誰もが面白くない選択肢を選びやがって!
私は歯ぎしりをしました。
「おう、吸うか?」
Sさんが私にたばこを差し出しました。
高校生なのに動作がごく自然です。
「いりません」
私はたばこのにおいが苦手です。
酒も飲めなくなりました。
なにこの健康的な生活!
十二指腸潰瘍の原因たるストレスさえなくなれば、これ以上ないほど健康体です。
「このマザァッファッカアアアアアアアアアアァッ!!!」
思わず北海道の大空に向かって叫びました。
「お前はファックとキルとガッデムを使わないと会話ができないのか?」
「できませんがなにか? ファッキンシット!」
こんな学校でどうやって穏やかにいろというのでしょう?
キリストでも助走をつけて飛び膝蹴りするレベルです。
神が面白半分にガブリエルを呼び出して焼き尽くすレベルなのです。
「うん、ごめん。俺が悪かった」
Sさんは可哀想な子を見るような目を向けて私の肩を叩きながらバスに乗り込みました。
さてここから記憶がぶっちぎれます。
どう思い出そうとしても時系列がごちゃごちゃなのです。
ストレスためすぎて記憶が飛び飛びになってしまったようです。
なのでここからは時系列が適当です。
えっと、オークさんがバスの車内でケツ花火とか、いつもの行動を取っていたと思います。
「殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ!」
マッドマックスの悪役のようにオークさんたちが騒ぎました。
実はこの辺から時系列がぶっちぎれてます。
途中O倉くんが殴られていたような気がしますがよく覚えていません。
気がつくと網走刑務所にいたと思います。
「うへへへへ。将来お前らの来るところだ。お前らは病院で死ねると思うなよ。刑務所の中で死ぬんだ」
担任が問題発言を連発してます。
でも完全同意です。
「ここでは『脱獄王』白鳥由栄が……」
「うへへへへ。お前ら脱獄のしかたを学んでおけよ。テメエらが捕まるときは重罪だからなあ」
担任は酒臭かったのでたぶん飲んでいたと思います。
本音がほとばしっています。
「白鳥由栄は味噌汁を鉄格子にかけてさび付かせて脱走しました」
「同室のやつを血祭りにあげてその血で鉄格子をさび付かせてしまえ! うへへへへ」
なぜか私たちは大人しくしてました。
担任のあまりの酒癖の悪さに逆に紳士になってしまったのです。
「オラァ! 藤原とK平! この場で殺し合え!」
「いや無理っす」
「いやぷー」
バカな大人は一刀両断です。
「なんだオラァッ! 殺すぞ!」
なぜか「無理っす」と言ってたK平がキレました。
なぜこうまで私に構うのでしょうか……?
今まで考えたことがありませんでした。
例えば……好きな子にイジワルしようとしてるとか?
おええええええええええええええッ!
うげえええええええええええええッ!
※虹色のモザイクでお送りしています。
心の中で反吐を吐いてた私は必死に言い返します。
「うるさいです。話しかけないでください」
「殺すぞテメエ……」
ここに新たな遺恨が生まれました。
そしてここでまた記憶がぶつ切れになります。
気がつくと宿にいました。
アホどもは土産物屋で毛ガニなどを買って喜んでいたと思います。
私たちはと言うと、子どもの頃北海道に住んでいたSさんが「土産物屋で蟹は買うな」と強硬に主張していたため、私たちは宿を抜け出して近くのスーパーマーケットに蟹を買いに行きました。
観光客向けの店より倍の量で半額くらいだったと思います。
グレードは多少劣ると思いますが、良いものの味なんてどうせ私たちにはわかりません。
違いがわかるほど舌が洗練されてないのです。
私はというと、ついでに鮭とばも大量に買い込みました。
好物なのです。
600円でかなりの量が入ってます。
今から考えると酒も飲めないのに乾き物を買う、これほど虚しいことはありません。
さてここからが酷い話です。
宿を追い出されました……
同室の連中に追い出されたのです。
なにをやって追い出されたのかが問題です。
全く覚えてません。
なんだっけ?
モザイク外しのキットを数人で組み立てて持ってきたけど、全然役に立たなかったから開発責任者の私が追い出されたんでしたっけ?
いやできねえのは知っているはずです。
できるはずねえよって私は言っていたはずです。
それとも、お金を払っても学生の部屋では映らないはずのエッチな放送を見られるようにする機械でしたっけ?
ゲーム機の中に基盤を収納したんですよねえ。
たしか失敗しました。
これもできねえボケ死ねって最初から言ってたと思います。
K平に言いがかりをつけられて宿の外に連れて行かれたんでしたっけ?
でも殴られた記憶はありません。
どれか忘れました。
とにかく寒かったのだけは覚えてます。
それでキレた私は建築科のオーガさんの部屋に泊めてもらって押し入れで寝ていたような記憶があります。
それで朝の点呼を当然無視して私以外の全員が怒られたと思います。
ザマァッ!
ですが、何日目か忘れましたがここで異変が起こりました。
下血です。
シャレにならないほど下血してケツ拭いて廊下に出たところで倒れたのです。
オークさんと旅行という人生祭だのストレスで、私の体がついに限界を超えてしまったのです。
げふッ!
そのまま病院送りになった私はやる気のない医者に風邪と判断されて風邪薬を飲んで……そう、二日目はバスの中で過ごしたんだ!
日がな一日意識が朦朧としてました。
だって血が足りません。
絞め技で落とされるときの緑色の縁のある黒い玉が見えまくってます。
なぜか光が眩しいです。
その有様だったので、ご飯も食べず肌がカサカサになっていたと思います。
それで気がついたら宿です。
たしか……なにやったっけ?
寝てたと思います。
複数の意味で血まみれで。
それで次に気がついたら最終日でした。
最終日も意識があるようなないような……げふッ!
最近終了した寝台列車で帰りました。
確か同室をオークさんに囲まれましたが、マジで死にかけていたのでオークさんですらも何も言いませんでした。
ガタンゴトン……ガタンゴトン……
気がついたら大宮駅。
そのまま学校へ行って解散。
京浜東北線で逆戻りっと……
あはははは。
ぜんぜん楽しくない。
ぜんぜん楽しくありませんでしたよ!!!
倒れただけ!!!
ほとんど気を失ってました!
何が風邪だ! 死ね! 死んでしまえ!!!
全員死んでしまえー!!!
……私の青春時代を返せ。
ちなみにこのあとすぐに十二指腸潰瘍と確定。
軽く死にかけて半年近く入院しました。
治療内容はとんでもなくグロいので省略します。
内臓でろんですので。
次回からは入院編です。
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