第22話 誰得学園カースト

 サイコパスは厄介です。

 もしかすると世界には誰にも迷惑をかけずにひっそり暮らすサイコパスもいるかもしれません。

 でも少なくともK田は人に迷惑をかけるためだけに生きています。

 S賀くんという電気科にしては知能高めなオークさんがいます。

 ある日なんの罪もないのにラーメンにボコボコにされました。

 ラーメンは頭の悪いオークさんの中でも赤羽の次くらいに頭が悪いです。

 そのせいでK田によってクラスに争いを起こす駒としていいように使われています。

 右に悪口を言ったものがいると聞けば拳を顔面に叩き込み、左に喧嘩を売ったものがいたと聞けば鉄パイプで半殺しにし、前方にガンをつけたものがいると聞けば馬乗りになって殴り続け、そして常に後方はがら空きです。

 ラーメンは相当の悪人のように思えますが、実は藤原とは仲が良かったりします。

 基本的に私は被害を及ばさなければ、それなりの敬意を持って接します。

 K室くんもTPOをわきまえない妄想にたまにイラッとしますが、なんだかんだと言って彼はクラスの人気者だと評価しています。

 ですのでラーメンにもそれなりの敬意を持ってます。

 向こうも最低限の例を持って接していることを敏感に察しています。

 彼らはそう言った空気を読むことに関しては超人的な性能を発揮します。。

 なぜならバカにされてるか、バカにされてないか、という社会的評価はオークさんの社会階級を表しています。

 舐める舐められないという言葉に置き換えてもいいかもしれません。

 この評価が下がるのはオーク社会では死に直結します。

 そのため彼らは誰も得しないスクールカーストを構築します。

 圧政を軸とした誰も幸せになれない社会体制です。

 なにせ喧嘩の強さしかランキングに反映しされません。

 一度の敗北によって最底辺まで地位が落ちることもある酷いシステムなのです。

 その中でラーメンは必死でした。

 もはや暴力を振るうことがお仕事になっていました。

 オークさんなのに喧嘩で必死だと!?

 実はオークさんは暴力が好きだと勘違いされてますが、必ずしもそうではありません。

 例えば藤原が一番わかりやすいでしょう。

 藤原は格闘技は大好きです。

 実力はゴミカスですがプレイヤーですので試合とかも普通にやります。

 武器格闘術で手の皮が剥がれたりとか、試合で肋骨を折ったりとか、肘を折られたりとか結構痛い目にもあってます。

 でも喧嘩は嫌いです。

 楽しくないのです。(だって自分の感情をコントロールできないなんて恐怖以外のなにものでもありませんよ)

 それと同じように殴りに来たときに股間を膨らませている一部のド変態を除き、ほとんどのオークさんも暴力に対してストレスを感じます。

 ラーメンも日々ストレスを感じていたに違いありません。

 敗北それ即ち社会的抹殺です。

 プレッシャーも相当なものだったでしょう。

 その心の隙間をK田に突かれてロボットのように操縦されていたのです。

 そして毎日のように犠牲者を見つけては拳を振るうのでした。

 K田は車裂きの刑とか釜ゆでの刑になればいいのに。


 K田の野望は面白半分に殴り合いをさせることです。

 知能の高いサイコパスなら自分の生活を豊かにするために他人を操りますが、正直言ってK田はアホです。

 一瞬の楽しみのために人を操ってました。

 でもリスクはありません。

 藤原でもわかるK田の異常性、それなのにオークさんたちは誰一人として気づきませんでした。

 なぜお前ら気づかない!!!

 なぜだー!!!


 さてそんな彼らですが、ある日とうとう事件が起こりました。

 ラーメンはいつものように喧嘩に精を出してました。


「てめえぶっ殺すぞゴラァッ!」


 K田の耳打ちにラーメンがブチ切れました。

 G田くんに向かっていきます。

 今のところは死人が出たことはありません。

 彼らの殺す発言の頻度から計算すると、すでに700人は死んでいる計算になります。


「オラァッ!」


 G田くんが蹴られました。

 ちょっとお薬が効きすぎて最近何を言っているか全くわからなくなった彼にラーメンをバカにする知性が残っているとは考えられません。

 でも防衛本能はあるようです。

 薬でストッパーが外れているG田くんがラーメンを突き飛ばしました。

 ラーメンが机まで突き飛ばされます。


 ……あれ?

 ラーメン弱くない?


「だぼがあああああああああああッ!」


 ラーメンがどこの方言だかわからない叫びを上げました。

 ラーメンはバットを取り出します。

 野球部でもないのに常備してます。


「オドレボケエ!」


 ※関東人です。


 ラーメンがバットを振りました。

 G田くんはひらりとバックステップで避けました。

 G田くんに当るはずのバットは加速され、隣にいたK平の後頭部にヒット!


 かっきーん!!! どっごーん!!!


 つんのめったK平が机に顔面をぶつけ動かなくなりました。

 ザマァッ……じゃなくて、まあかわいそう!


「だばああああああッ!!!」


 ラーメンがバットを振り回します。

 それを見てK田とW辺がゲラゲラ笑ってます。

 チェーザレ・ロンブローゾ先生が見たら「それ見たことか!」と言うに違いありません。



 ※チェーザレ・ロンブローゾ

 犯罪人類学(犯罪学)の父と呼ばれる。

 4000人近い受刑者の特徴を分類した結果、「一部のDQNって類人猿に近くね?」という誰もが心の奥底では思ってるけど誰も言わなかった説を堂々と主張した。

 現在では疑似科学とされているが、藤原はこの説はおおむね正しいと思う。(根拠なし)



 さてG田は焦りました。

 バットで殴られたら死ぬんじゃないかなと。

 G田は焦った顔でナイフを取り出しました。

 シャキーン!


「テメエ! ナイフなんてずるいぞ!!!」


 ……え?

 おかしくね?

 バットの方が凶悪な武器じゃね?

 バット持ってるやつがナイフを持ってるやつを説教ですと!

 ですがオークさんたちはどいつもこいつもおかしさに気づきません。

 「ナイフはヤベエよ。……ごくりっ」って顔をしてます。

 いやバットで殴っても死ぬから!


「おいお前、ナイフはやめろよ!」


 W辺が笑いながら言いました。

 え? ナイフだけ?


「お、おう」


 G田がナイフを捨てました。


「わかってくれて嬉しいぜ」


 ラーメンがG田にハグをしました。

 なぜかクラス中から拍手が巻き起こります。

 素晴らしい友情です……っておかしいだろがお前ら!!!

 え? なんで感動ストーリー?

 お前ら全員頭おかしいだろ。

 シャ○中がナイフ捨てただけじゃねえか!

 ちなみにK平は未だに倒れてます。

 そのまま死ねばいいのに……じゃなくて犠牲者出てるだろがー!!!


 異常な集団の中にいると時として自分が異常なのではないかと悩むときがあります。

 い、いやおかしいよね?

 今回はおかしいよね?

 私のツッコミがまともなんだよね?

 私は偏頭痛が治まりませんでした。

 結局、得をしたのはサイコパスK田だけです。


 サイコパスだけが得をする誰得支配体制、今日も絶賛圧政中……


 みんな死ねばいいのに♪

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る