蛮痴羅よ永遠に
能登半島の西。
日本海沖を、セスナの残がいがただよっていた。
音芽さんが全身を弛緩させて寝そべっていた。
そして彼女の目の前では、魅夏先輩と俺が肩を寄せあっていた。
俺と魅夏先輩は寄り添って、イヤホン型骨伝導無線をいじっている。
パラシュートを幾重にも重ねて、その上に救護マットを敷いている。
そんなふわふわのなかに俺たちは身を沈めている。
抱き合っている――と言い換えてもいい。
「なあ誠也ァ。このイヤホン以外に無線端末はないのかよぅ?」
「うん。それ以外は全部ダメだった」
「つってもコレ、うんともすんとも言わないぞ?」
「音芽さんは、かわかせば直るって言ってたよ。ねえ音芽さん?」
「へっ? うっ、うん」
「ほんとかよ……」
俺たちは、穏やかな笑みをした。
魅夏先輩がぼんやりと空を見ながら言った。
「まあ、直らなかったら、このままずっとイチャイチャしてるだけだけどお」
俺たちは幸福感と達成感に包まれていた。
いつまでも微笑んでいた。
「なあ、誠也ァ?」
「うん?」
「あたし、『護ってやるとか古くさい』って言ったよな?」
「あっ、うん。強く言ってごめん」
「あれはウソだ」
「え?」
「あのな誠也」
ほんとは嬉しかった――と言って、魅夏先輩は、ぎゅっと抱きついてきた。
俺は頭の後ろで手を組んで、ぼんやり空を見ていた。
音芽さんの母性に満ちたため息がした。
俺たちは、しあわせにひたっていた。
で。
魅夏先輩が俺の胸にほっぺたをこすりつけていると、突然、骨伝導無線がノイズを発した。
俺たちが跳ね起きると、骨伝導無線は声を発した。
『あーあー、こちら海上保安庁。救難信号を受信しました。どなたか居ますか?』
俺と魅夏先輩、音芽さんは目と目を合わせた。
魅夏先輩はゴクリとツバをのみこんで、それからこう言った。
「あ? えーと、あたしは橘魅夏。で、あたしたちはっ」
『あたしたち? そこには何名か居るのですか? あなたたちは、そこで何をしているのですか?』
「あっ、えーっと」
『あなたたちはっ、あなたたちは、いったい何者なんですか?』
魅夏先輩は音芽さんを抱き寄せて、俺の胸に甘えるように顔をうずめると、それから自信に満ちてこう言った。
「
▽ ▽ ▽
続発する身勝手な条例に対抗するべく、少女は学校内に特殊機械化部隊を創設した。
その部隊はオトナの理不尽にあらがい、ついに条例をくつがえした。
それだけでなく世界の平和を守った。
祝福された未来を、彼女たちは自らの手でつかんだのである。
人は彼女たちを
熱い
■蛮痴羅 - PANCHIRA - END■
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