第18話

それからしばらくして、俺は町を離れた。

ふらりと立ち寄った賑やかな町で仕事をみつけ、三年程そこに住んだ。

もう探すものはなくなったというのに、身についた放浪癖がなかなか抜けず、俺はそれからまた別の町に移った。

そこで、ある女と知り合った俺は、その女の押しの強さに負け、一緒に暮らすようになった。

気がつけば、俺はもう四十にもなっていた。

いつの間にか、腰を落ち着けるには遅すぎる程の年になっていたのだ。

俺は実際の年よりは少し若く見えるようだったが、今から子供が出来たとしたら、その子が大人になる頃には俺はけっこうな老人になっている。

そう考えると、急に焦りを感じた。

俺はなんとくだらないことに時間を費やしてしまったのだろうと、深い後悔に押し潰されそうになった。

しかし、どれほど後悔した所で時間は取り戻せない。

俺は、その女と正式に結婚し、残された人生を悔いのないように生きようと心に誓った。


一年後には子供を授かった。

妻に似た可愛らしい女の子で、俺は満ち足りた毎日を過ごしていた。

その子の誕生により、妻との関係もさらに良いものとなった。


ところが、それから約十年後、そんな俺達家族の関係に歪みが出始めた。

妻が俺に浮気の疑惑を持ち始めたのだ。

もちろん、俺はそんなことはしていなかった。

妻は俺より十も年下で、結婚した当時はそのことをうらやましがられたものだが、その頃の俺達は同年代に見られることが多くなっていた。

確かに、俺は誰からも若く見えると言われていたが、それを妻は他に女がいるせいだと勘ぐったのだ。

痛くもない腹を探られるのは不快だったが、俺はその気持ちを押さえ、元の良い関係に修復しようと努力した。

しかし、それからさらに十年程が過ぎた頃、今度は周りの人間から好奇の目で見られることが多くなった。

子供は成人し、俺は六十を過ぎていた。

なのに、俺は二十年前に想像した老人の自分とはまるで違う…

二十年前の容姿と少しも変わらなかったのだ。

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