第19話

ある時、誰かが言った。

アランは悪霊に憑りつかれているから、年をとらないんだと。

そんな馬鹿げた話、誰も信じる者はいないと思っていたが、そうではなかった。

その噂は瞬く間に町中に広がった。

何か恐ろしいことの起きる予感に、俺は妻と娘を連れて町を出た。

だが、その道中で俺は妻に訊ねられた。




「あなたは本当に悪魔なのか?」と。




妻の怯えたような目を見た時、もう一緒にはいられないと思った。

俺はそうではないと答えたが、妻と娘は俺と別れ妻の両親の元へ向かった。




俺は少し前から薄々感じてはいた。

俺が少しもふけない理由が何であるのかを…




そうだ…

それは、あの不老不死の果実に他ならない。

きっと、老人は間違えていたのだ。

果実の出現する年を…

やはり、俺が食べたあの実は不老不死の果実だったのだと俺はその時確信した。



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