第20話
そのことをあらためて考えると、俺は怖しさに身体が震えた。
俺はこの先もずっと年はとらないのか?
そして、ずっと死なないのか?
確かに俺はこの二十年少しも老化していない。
容姿も体力も少しも…
しかし、この世に死なない人間等いるだろうか?
もしかしたら、他の人間に比べ、老化のスピードが著しく遅くなっただけではないだろうか?
どんなに遅くてもいつかは死ぬ筈だ…きっとそうなんだと俺は自分に言い聞かせた。
それからの俺は目立たないように息をひそめて暮らすようになった。
怪しまれないよう、十年以上は同じ場所には留まらないようにした。
他人と深く関わることも避けた。
何年…何十年が過ぎても、俺は少しも年を取らなかった。
四十手前のあの頃のままだ。
妻はもうこの世にはいないだろう。
いや、もしかしたら娘ももういないかもしれない。
それ程の時が流れても、俺だけは少しも変わらない…
老人は言った。
不老不死の果実を食べれば、この世の神になれると…
だが、実際には違った。
俺がなれたのは、神ではなく、誰からも怖がられ、忌み嫌われる悪魔だ。
良いことなんて一つもなかった。
心から愛せる相手どころか、気を許せる相手さえいない。
昔の俺を知る者に出会わないかと常に怯え、心の休まること等まるでなかった。
俺の精神はとことんまで疲れ果て、毎日ただひたすらに死を願った。
安らかな死を…
だが、その願いが叶えられることは気配すらもなかった。
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