第3話
*
(今は考えるのをやめよう…
あの実を見れば、この伝言が意味のあるものかどうかわかる筈だから…)
俺は、隣町の酒場で強い酒を何杯かあおり、ようやくそんな風に落ち着くことが出来た。
誰かが言っていた言葉を思い出す…
不安って奴は、正体のわからないものにこそ強く感じるものなのだ…と。
そうだ…この伝言は誰からのものかも、何のために送られたものなのかも、そして、書かれていることが真実か偽りなのかもわからないから俺は不安になっているだけだ。
それに、考えて答えの出るものでもない。
こんな時は余計なことは考えないに限る。
今は、俺がやるべきことだけを考えよう。
長い年月をかけて、ようやくゴールが見える距離までやって来たんだ。
ここで、それを不意にするようなことは出来ない。
(もう二十年を過ぎたんだな…)
そう思うと、苦い笑いが毀れた。
自分がこんなにも片意地な性格だなんて思ってもみなかった。
もうしばらくすれば、俺のこの長い旅も終わる。
旅が終わった時、俺はどうなっているだろう…
たとえようもない至福の時を感じるのか、それとも無駄にした二十余年の歳月に、俺は打ちのめされてしまうのか、それとも……
俺は、グラスの酒をあおった。
考えまいと思いながらも、知らず知らずに考えていたあの伝言のことを頭から追い払おうと、立て続けに酒をあおった…
(結末はすぐ傍にある…
焦ることはないさ…)
酔いがまわって来た俺は、紙切れを破り、灰皿の上に投げ捨てた。
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