第23話

その時のことを考えると、もう二度とあんな苦しい想いはいやだと思ったが、それでも俺はミシェルを失ったショックからなかなか立ち直れず、しばらく経った後、再び自殺を試みた。

今度は高い崖から飛び降りたのだ。


それは、ナイフで刺した時とは比べものにならない酷い苦しみだった。

身体のあちこちから流れ出すおびただしい血…おかしな方向にねじ曲がった足……

俺は崖下で子供のように泣き叫んだ。

助けてくれ!許してくれ!と、まるでうわ言のように…

だが、どれほど叫んでも助けてくれる者等いなかった。

ただ、泣き続け拷問のような苦しみに一人で耐えるしかなかったのだ。




やがて、十日程してようやく俺の肉体は元に戻った。

痛みもなくなり、何ヶ所か折れたであろう骨も傷も元の通りに戻っていた。




俺は、その時、絶対に死ねないということをあらためて実感した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る