第25話

「そんなに高いのか!

たった、それだけの伝言で!」


「いやならやめとくんだな。

それだって、みつかったら大変なことになる。

君はせいぜい数年を刑務所で過ごすことになるだけだろうが、僕は幼い頃から苦労してやっと手に入れたこの職を失う事になるんだよ。

僕だって、君のために無理していることを考えてくれよ。」


「す、すまない。

わかった…金はすぐに用意する。」




それは法外な値段だった。

その金を作るため、俺は初めて強盗を働いた。

傷を負わせた相手は、重症だったが死んではいないことを知り、俺はほっと胸を撫で下ろした。




俺は、ディッキーに金を手渡した。

送れる文字数のことや直接的な内容はだめだと何度も訂正させられて、ようやく短いメッセージが決まった。




『白と黒の果実は毒の実だ』




俺はそのメッセージに希望を託した。




なんせ遥か昔のこと…はっきりとした日にちを覚えていないことが心配だったので、万一のことを考え、木をみつける直前の森の中ではなく、少し手前の街道を指定した。

ディッキーはその街道の当時の様子を調べ、無事に俺にメッセージを渡したということだった。

もちろん、それが俺だということをディッキーは知るはずもないのだが…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る