第31話
俺は、ポケットから装置を取り出した。
そこに表示された数字を見て、すべてを理解し俺の心臓は速度を増した。
……そうだ、俺はきっと時を違えて打ちこんでいたんだ。
俺の目の前には、庭でのんびりと空を見上げる俺がいた。
これがどういう時なのかは覚えがない。
だが、俺がここにいるということは、まだ父さんは生きていて、この先に起きる不幸も知らずにのほほんと生きていた頃だということだけは間違いない。
なんということだ…
最後の最後でこんなミスを犯してしまうとは…
絶望的な気持ちになった。
しかし、ゆっくりと考えている時間はない。
きっともうディッキーの遺体はみつかり、この装置が作動している事もバレているはずだ。
すぐにも追っ手が来るだろう。
その前に、何か出来る事はないのか?
(……そうだ…!)
ここで俺が出来ること…
それは、俺があの俺を殺す事だ。
自分を…ましてやまだ少年の俺を殺すことには抵抗があったが、この装置ではもう違う時代への移動は出来ない。
つまり、老人と出会わせないようには出来ないのだから、俺が不老不死の果実を食べないことにするには、俺を殺すしかないんだ。
辛いことだが、俺の心は決まった。
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