第10話
「これ…どこの地図なんだい?」
老人はゆっくりと…時々止まっては息を整えながら長い話を俺に聞かせた。
その内容は、子供の俺にもとても信じられないものだった。
老人は、その地図を不老不死の木の地図だと言ったのだから。
老人の祖父が誰かから聞いた不老不死の木の話に憑りつかれ、人生の大半をその木を探すために使ったのだという。
その熱はその息子にも伝わり、そしてそのまた息子であるこの老人にも継承され、親子三代に渡って不老不死の木を探しているということだった。
長い年月の間に、その木に関する情報が少しずつ増えていき、ようやく希望が見えて来たがとうとう間に合わなかったと老人は寂しそうに話した。
「アラン、どうか不老不死の木をみつけておくれ。
そして、その果実を食べるんじゃ…
そうすることでおまえはこの世の王に…いや、神になれる…」
「じいちゃん、そんなこと…」
「どうか、頼む…!」
皺がれたか細い手が俺の手を握り締めた。
冷たく、力の感じられない手だったけど、老人にとってはあれが全力だったのだろうと思う。
俺は、戸惑いながらも頷いた。
これはきっとこの老人の最後の願いだ。
それを、馬鹿げていると言って断るのは良くないことだと俺は思ったんだ。
とにかく、素直に話を聞くことが老人の幸せなんだと考え、俺は老人の遺言代わりのその話に真剣に耳を傾けた。
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