第11話

老人の話によると、不老不死の木は百年に一度、たった一つだけ実をつける。

それは、新月の夜に唐突に実り、明るくなった頃には萎んでなくなってしまうということだった。

暗闇にまるで鬼火のようなぼんやりとした明かりを放つ、鶏のたまごを一回り小さくした程度の果実なのだと言う。

それ自体、なんとも胡散臭い話だが、老人は何の疑いもなく信じ切っている様子だ。


地図の場所もだいたいの見当が着き、なんとかみつけられるかと思った矢先、体調を崩したのだと老人は瞳を潤ませた。




「じいちゃん、あんまり喋ると疲れるだろ?

後は明日にしたらどうだい?」




老人は俺の言葉に小さく首を振り、なおも不老不死の果実の話を続けた。

今度、果実が実るのは、予想ではあと十五年程先のことだと。

この老人の年齢では元気だったとしてもあと十五年も生きられるはずがない。

それなのに、この老人は不老不死の木を探すつもりだったのか…

俺には、どう理解したら良いのかわからない感情だった。

その後も老人は木の実について遅くまで話し続け…






そして、次の朝…

老人がベッドの中で冷たくなっているのを神父が発見した。



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