第13話




それからさらに数年の年月が過ぎた。

もう焦る気持ちはなくなった。

果実が実るとされる年はもうとっくに過ぎてる。

後は、ゆっくり探して行こう…

そう思うと、俺はどこか気持ちが軽くなった。




ちょうどその頃からだった。

地図に書き込まれた細かいメモ…疫病が流行し誰も住まなくなった町があるだの、崖崩れの跡があるだの…

そういったものに符合することが次から次にみつかった。

俺の胸は高鳴った。

長い間探し続けていた場所がようやくみつかるのではないかという予感に、俺は大声で叫びたくなる衝動をやっとの想いで押さえ込んだ。







そして…

俺は、ついにみつけたんだ…

この場所を…!




(さて、あと一踏ん張りだ。)




俺は森の中を注意深く見て歩いた。

だが、残念なことに目をひくものは何もなかった。

次の日も、またその明くる日も、俺は森の中を歩き回ったが何もみつからない。

やはり、そうだったか…

予想はしていたことだ。

ありもしない幻に、老人の一族や俺は振りまわされていただけなんだ。

そう思いながらも、俺はなかなか町を離れられないでいた。

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